カプソンとP・ヤルヴィ/フランクフルト放送響によるドヴォルザークとハーバートのチェロ協奏曲


ドヴォルザーク チェロ協奏曲&ハーバート チェロ協奏曲第2番
 カプソン(vc) P・ヤルヴィ/フランクフルト放送交響楽団
 ヴァージン・クラシックス 2008年 5190352
5190352

近年進境著しいフランスの若手チェリスト、ゴーティエ・カプソンの新譜で、パーヴォ・ヤルヴィ/フランクフルト放送響をバックに迎えてのドヴォルザークとハーバートのチェロ協奏曲が収録されています。

聴いてみると、カプソンのチェロはドヴォルザーク、ハーバード両演ともに素晴らしく、そのしなやかなメロディ・ラインの流動感といい、洗練された甘美な音色の魅力といい、演奏技術の辣腕ぶりといい、いずれも卓抜的で感心させられるとともに、聴いていてかつてヨーヨー・マの同曲の録音を聴いた時に感じた印象に何となく近いものを感じました。

もっとも、ここで突然ヨーヨー・マを引き合いに出したのには、それなりに理由があり、本ディスクのドヴォルザークとハーバートのチェロ協奏曲のカップリングが、かつてヨーヨー・マがソニーからリリースしたCDでのカップリングと同一だからです。

SRCR1567
ドヴォルザーク チェロ協奏曲&ハーバート チェロ協奏曲第2番
 ヨーヨー・マ(vc) マズア/ニューヨーク・フィル
 ソニー・クラシカル 1995年 SRCR1567

上記のヨーヨー・マ盤はマとしては2度目のドヴォ・コンの録音ですが、このCDにカップリングされていたのがヴィクター・ハーバートのチェロ協奏曲第2番です。このハーバートの作品をアメリカで聴いたドヴォルザークが、それにインスパイアされ、自身の傑作たるチェロ協奏曲を産み出したことはあまりに有名で、ほとんどの解説書に書かれていることですが、実際にそのハーバートの曲を私が初めて聴いたのが、上記のヨーヨー・マ盤でした。

そういうこともあり、私はこのカプソン盤を聴く前から、ヨーヨー・マ盤での印象をある程度引き摺っていたようなところはあったと思います。ただ、それを割り引いたとしても、やはりここでのカプソンの奏でるチェロの雰囲気は、ヨーヨー・マのそれとかなり共通項があるような気が聴いていてしました。

最も類似性を感じるところは、カプソンがヨーヨー・マ同様、チェロ楽器本来の重々しいフレーズ感をおおむね抑制し、むしろヴァイオリンか何かのような軽妙かつ自由闊達な引き回しを披歴している点で、もちろんそれは並のアーティストに軽々しくできることではないですが、とにかく、カプソンのソロには、ヨーヨー・マ同様、聴いていて本当にチェロか?と思ってしまうような局面が多々あります。

とはいえ、類似性を感じるのはあくまでフレージングの性質の話で、演奏上の構成感はヨーヨー・マとはかなり違っています。テンポ感からして違いますし(速めのヨーヨー・マに対し、カプソンはやや遅めですね)、細かいフレージング様式にしても、ドヴォルザーク第1楽章(3:56)のチェロの入りでの、かなり即興感を加味した入り方、あるいは(6:18)からの第2テーマや(10:15)からのメイン・テーマの倍テンポ進行など、いずれもずいぶんヴィブラートをかけていて、そのぶんヨーヨー・マよりもロマンティックな情感が強く出ている印象を受けます。

また、パーヴォ・ヤルヴィ/フランクフルト放送響のバックも実に良く、少なくともヨーヨー・マ盤におけるマズア/ニューヨーク・フィルの凡庸な演奏とは比較にならない素晴らしさです。全体に過度のヴィブラートを抑制したアンサンブルから発せられる響きの鋭さ、パリッとした音色の冴え具合が抜群で、トッティでの弦のパンチ力といい、金管の色合いの強烈さといい聴いていて惚れぼれします。また、この様式だとヴィブラートを積極的に活用するカプソンのソロとのコントラストが引き立つため、そのピリッとしたロマンティズムには独特な陶酔感を喚起させられます。

以上、ハーバートの方も含め、このカプソンの新譜は同じカップリングのかつてのヨーヨー・マ盤にも比肩する名演で、オーケストラ演奏まで考慮するならそれをも凌駕するような演奏ではないかと感じました。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.