藤原歌劇団によるポンキエッリ「ラ・ジョコンダ」公演(2)


おととい(1月31日)の東京文化会館におけるポンキエッリ「ラ・ジョコンダ」公演の感想です。

ジョコンダ役エリザベート・マトス:
ポルトガル出身のドラマティック・ソプラノとのことです。かなりの実力派歌手であると感じました。序盤あたりは正直あまり強い印象は感じませんでしたが、第2幕の中盤でラウラの掲げるロザリオを見てからの表情の切り替えの鮮やかさが見事で、以後終幕まで、ジョコンダの内面で激しく逡巡する心理的葛藤に対する鮮やかな表現力に魅了されましたし、特に「自殺のみが自分に残された道」と歌う第4幕の自殺のアリアでの迫真の歌唱ぶりは聴いていてゾクゾクするほどでした。

エンツォ役チョン・イグン:
韓国出身のテノールです。おおむね好演で、第2幕の名アリア「空と海」をはじめとして、全体に高音域に対する力強い上昇感を伴う発声の伸びが素晴らしく、また発声様式におけるニュアンスの細かさや表情のリアリティといった面も秀逸で、少なくともそのあたりに関してはヴィオッティ盤のプラシド・ドミンゴよりも上を行くと感じました。

バルナバ役堀内康雄:
藤原歌劇団のプリモ・バリトンです。バルナバはある意味でこのオペラの最重要キャラクターとも言えそうですが、堀内康雄のバルナバは全体に歌唱上のインテリジェントな工夫が良く光っていたように思います。やみ雲に声量のヴォリュームに頼らず、強調すべき語感のイントネーションを綿密に吟味しながらの含蓄に富む歌い回しで、バルナバの残忍な性格を見事に描き出していたので、舞台全体がピリッと締まった感じになりました。

ラウラ役エレナ・カッシアン:
ルーマニア出身のメゾで、プログラムによると初来日は2000年スカラ座来日公演「リゴレット」のマッダレーナとあります。実は私はその「リゴレット」の公演をNHKホールで観ているんですが、正直あまり印象に残っていません。しかし今回のラウラはすこぶる名唱で、ことに発声の美しさという点ではジョコンダ役エリザベート・マトスを凌ぐほどのものがあり、それが役柄の清純な印象を強めるとともに、ラウラの「もうひとりのヒロイン」としての存在感をジョコンダとは異なる方向でこよなく印象づけていて好ましく思いました。

オーケストラの演奏:
菊池彦典の指揮、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏です。職人的ともいうような、かなり手堅い演奏で、もう少しアンサンブルに強いメリハリを与えてもという感もありましたが、全体に東京フィルから堅実に音楽の流れを組み立てつつ、停滞感のないスムーズな音楽の運びを導いていた点が良かったと思います。また、舞台とのキッチリした連携ぶりにも聴いていて感心させられました。

演出:
演出に関しては、このオペラを初めて観る私が言うのも何ですが、あまりにオーソドックス過ぎてちょっと物足りない気がしました。確かに、ストレートな演出だけに舞台と音楽にこよなく集中できるものでしたが、例えば昨年秋に新国立劇場で観た「トゥーランドット」の演出などは、ひねりにひねった仕掛けの面白さがありましたし、あれほどでなくとも、演出上もう少しひねった要素があっても良かったように思いました。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.