カルロス・クライバー/ドレスデン国立管によるワーグナー・楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲


ワーグナー 楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲
 C・クライバー/ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
 グラモフォン 1980~82年 FOOG20056/9
FOOG200569
カルロス・クライバーのオペラ盤感想記シリーズの第3回です。

このクライバーの「トリスタンとイゾルデ」は、第3幕が圧巻だと思いますが、第1幕と第2幕が相対的に弱く、とくに第2幕はクライバーにしてはいまひとつという感じがします。

まず第3幕の印象ですが、冒頭の前奏曲の嘆きの動機といい、続く牧童による牧笛の旋律の悲痛さといい、物悲しいニュアンスがすこぶる際立ち、その管弦楽の絶妙なリズムと繊細な響きは聴いていて心魂打たれるような趣きを呈しています。

トリスタンのせん妄の場面、イゾルデとの再会への憧憬を歌う場面、運命を呪いながら意識を失う場面と続く一連のシーンではルネ・コロの歌唱が絶品で、これはもう劇的迫力にあふれた圧倒的な激唱なんですが、クライバーの管弦楽伴奏も俊敏に感情に反応した激しい起伏が素晴らしく、その相乗効果により表出される感興には計り知れないものがあります。

その後のイゾルデとの再会シーンも劇的感動が最大級に表現され、トリスタン絶命後の戦闘シーンにおける管弦楽の鋭い音響の冴え、そしてラスト「イゾルデ愛の死」の場面におけるプライスの、激情をはらみながらも清楚な歌唱とオケのしなやかなアンサンブルとにより奏でられる愛の旋律の美しさなど、いずれも筆舌に尽くしがたいほどです。

これに対して、第1幕は、第1幕第5場で愛の酒を飲みほすシーンの前後における管弦楽の雰囲気の激変といい、終幕近辺でのクライバーならではのダイナミックなオーケストラ・ドライブがもたらす充実した劇的高揚といい、やはり卓抜したものがあるとしても、第3幕ほどには振り切れた感じはなく、どこか音楽がもっと雄弁に語りかける余地を残しているような気がします。

第2幕も、指揮・管弦楽・歌手ともに非常に高いレベルにある演奏である点は疑いの無いところですが、クライバーのオペラ演奏としてみると音楽の訴求感が十全でない印象も否めず、このドレスデン・ルカ教会という、ある意味この第2幕の内容にかなり相応しくないロケーションが微妙に音楽のノリに影響しているのでは、というかなり穿った考えも聴いていてふと浮かんできてしまいます。

それはさすがに穿ち過ぎとしても、この「トリスタンとイゾルデ」はクライバーがその出来に必ずしも満足していなかったことは知られているところで、それはこの録音に3年も要していることからも伺えるところです。その不満足部分が具体的にどこかは伝えられていませんが、少なくとも私の印象では、第3幕はパーフェクトで、第1幕も高水準、しかし第2幕は、クライバーの才能からするともう少しできるような気が、、、というのが率直なところです。

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