ブラレイによるシューベルトのピアノ・ソナタ第20番


シューベルト ピアノ・ソナタ第20番、3つの小品(D.946)
 ブラレイ(pf)
 キングレコード 1994年 KICC-684
KICC-684
これはおとといサントリーホールで購入したCDです。この演奏はフランク・ブラレイのデビュー盤で、もともとはハルモニア・ムンディからリリースされていた録音ですが、それは長らく廃盤で入手困難とされていたところ、昨年キングレコードから国内盤として再リリースされました。

フランク・ブラレイというと、2003年アルゲリッチ音楽祭での「アルゲリッチの代役」という超重責を見事に果たしたエピソードが有名なところですが、近年は日本でも最も人気のあるピアニストのひとりとされているようです。実際、昨年のラ・フォル・ジュルネ・ジャポン2008では、チケットがどうしても取れませんでした。おとといのサントリーのコンサートも、上岡人気との相乗もあり前売り完売、当日券もゼロという状態でした。

まずコンサートで聴いたモーツァルトの印象から書きますが、第1楽章冒頭から一貫的に粒の揃った澄んだ怜音が展開されていき、その音色自体の魅力には率直に感じ入るものがありましたが、ダイナミクスがかなり限定的に抑制されていて、強弱のメリハリに乏しく、最初のうち、少なくとも同楽章の中盤くらいまでは、聴いていて確かに綺麗だけどもずいぶん単調な演奏だなという印象を否めませんでした。

しかし、この限定的なダイナミクスの独自の魅力に気付き始めたのが同楽章後半あたりです。ブラレイのタッチはたとえ同じ音量の和音であってもフレーズごとに左右の高低のバランスを絶妙に切り替えることにより、表面的なメリハリを超えた内面的なニュアンスを巧みに湧出させ、結果的に強弱に頼らずにすこぶる雄弁な音のドラマを創出させていたことに気付かされました。第2楽章と終楽章も含め、その創造力というかインスピレーションの豊かさには聴いていて思わずため息が出るほどで、ことに終楽章の素晴らしさは、上岡の名伴奏もあり、ちょっと筆舌に尽くし難いものがありました。

以上のサントリーでのモーツァルトに対して、ブラレイのデビュー盤であるこのシューベルトの演奏では、そのモーツァルトと違って全体的にダイナミクスのメリハリがかなり強力に活用されています。しかしサントリーでのモーツァルトと共通するのは音楽の創造性に対するアーティストとしての豊かな才能の度合で、例えば第1楽章の(1:43)からの第2テーマでの深く沈みこむような翳りの色合い、このテーマが展開される(4:39)あたりの病的なまでに怜悧な強音展開、あるいは第2楽章の中間部(4:00)あたりに聴かれる悪魔的なまでの表出力など、いずれもある種常軌を逸した凄味を感じます。こういう傾向は3曲の小品の方も同様で、総じて型に嵌まらないアウトロー的な雰囲気を醸したような、シューベルトの素晴らしい独創的名演ですね。

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