広上淳一/コロンバス響によるチャイコフスキーの交響曲第5番


チャイコフスキー 交響曲第5番、幻想序曲「ロメオとジュリエット」
 広上淳一/コロンバス交響楽団
 DENON 2008年ライヴ COGQ35
COGQ35
このCDは、昨年12月23日にすみだトリフォニーホールで広上淳一/新日本フィルのベートーヴェン「第9」演奏会を聴いた際、終演後ロビーで購入したものです。

このCDは広上淳一が2006年から音楽監督を務めた米コロンバス響との最初の録音となるもので、08年11月にリリースされたものですが、皮肉なことに同月、広上はコロンバス響のポストを任期半ばで辞任することになってしまったため、おそらくこのディスクが広上と同オケとの、最初にして最後の録音となる公算が極めて高くなりました。

その演奏ですが、このチャイコフスキーは私の印象では間違いなく名演だと思うんですが、ただこのCDは、どうも再生にかなり特殊な設定が必要なようで、そのためせっかくの名演なのに、その真価が伝わりにくいような状況になってしまっているような感じがします。

このCDは、ボリューム・レベルが極めて低めにとられていて、通常シンフォニーを聴くときの音量で聴くと、室内楽のようなこじんまりした感じに聞こえてしまうようです。したがってアンプのボリュームをかなり高く設定しなければならないのですが、その設定レベルというのが、普通だとスピーカーあるいはヘッドフォンの損傷の危険を伴いかねないほどの高さとなってしまっています。

ボリュームをその水準に設定して聴くと、この広上の演奏の名演性が良く伝わってきます。ただ、普通そこまでボリュームを上げて聴くことはないとも思われるため、こじんまりして迫力不足の演奏と感じる人も案外少なくないのではないかと危惧されるところですが、、、

ここでの広上の指揮は、すみだトリフォニーで聴いたベートーヴェンの第9の時とおおむね同様で一貫性があります。そのアプローチは基本的に正攻法で、アンサンブルの内声の埋没を出来る限り抑止し、全奏であろうと弱奏であろうと個々のパートの輪郭線を曖昧なくクッキリと描き切るというものです。楽章を問わず、アンサンブル内声部の充実感が素晴らしく、もちろん迫力も抜群で、大局的にどっしりとしたテンポ運びもその迫力を増幅させている感じがします。ここぞという時以外はテンポを速めない組み立てで、それだけにテンポを速めた時のインパクトもまた際立った感じがします。例えば交響曲第5番の終楽章の(3:55)で仕掛けられる思い切ったテンポ・シフト。

加えて印象的なのは、コロンバス響の響きの質の高さですね。聴いていて、良い意味で「アメリカのオケらしさ」が薄い感じがします。ケレン味のなく、引き締った硬質な音色は、むしろヨーロッパのオケの感じに近いような、、、残響をかなり抑えた録られ方なので、そういう印象が助長されるのかもしれないですが、とにかくアメリカのオケとしては珍しいほど深みのある音色だと思います。

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