フルトヴェングラーの「ニコライの第9」のデルタ・クラシックス復刻盤


ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」
 フルトヴェングラー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 デルタ・クラシックス 1952年ライヴ DCCA0054
DCCA0054
昨年の暮れにデルタ・クラシックスから復刻リリースされたフルトヴェングラーの「ニコライの第9」、すなわち1952年2月3日にウィーン・ムジークフェラインザールで行われた「オットー・ニコライ記念コンサート」のライヴ録音です。

ちなみに「ウィンザーの陽気な女房達」等で知られる作曲家のオットー・ニコライはウィーン・フィル創設時におけるウィーン宮廷歌劇場の指揮者でもあり、1842年にウィーン・フィルの最初のコンサートの指揮を務めるという歴史的功績を残しています。

この「ニコライの第9」はフルトヴェングラーの多くの「第9」の中でも音質的に極めて良好な状態にあるものとして知られているものですが、さらにフルトヴェングラーの復刻を多く手掛けているデルタ・クラシックスはリマスタリングに定評のあるレーベルですので、これは音質にかなり期待ができるのではないかと見込んで購入し、聴いてみました。

音質面に関しては、おおむね期待どおりという感じで、やはりソノリティの解像度が非常に高いと感じます。特に弦楽器の生々しい実在感が特筆的で、この点に限るならバイロイト第9のグランドスラム盤やミソス盤にも匹敵するようなクリアーな音響感で鳴り響いています。終楽章の(12:52)でマスターテープに拠る僅かな音飛びがありますが、全体的にはかなり良好なリマスタリングと感じました。

とはいえ、トッティでの音響的膨らみなどはやはりいまひとつで、強奏時においてソノリティが薄手になリ勝ちで、ことクライマックスでの迫力に関してはバイロイト盤に一歩も二歩も引けを取る印象は否めないところです。もっとも逆に言うと、いかなる強奏展開においてもハーモニーの混濁の度合いが大人しいため、バイロイト盤などではあいまいな細部の動きが比較的鮮明で、そういう点での迫力に関してはこの「ニコライの第9」ならではのものがあると感じます。

演奏内容自体はバイロイトの第9に比肩しうる素晴らしいものですが、バイロイトのそれよりもいくぶん客観指向性が高く、その意味でフルトヴェングラーの最晩年の様式に属するような特徴もかなり出ています。

フルトヴェングラーの主観的個性を極限まで叩きつけたようなバイロイトのライヴに対し、このニコライのライヴはその極限的な表情を根底としながらも、バイロイトの第9を理性により客観的に再構成したような趣きがあり、音質の良さを含めて、フルトヴェングラーのひとつの真骨頂が聴ける貴重な録音だと思います。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.