「ベイヌム&コンセルトヘボウ管弦楽団の芸術」


「ベイヌム&コンセルトヘボウ管弦楽団の芸術」
 ベイヌム/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
 アンダンテ 1941~56年ライヴ AN4060
AN4060
エドゥアルト・ヴァン・ベイヌムの指揮によるコンセルトヘボウ管弦楽団の演奏を収録したCD4枚組のアルバムです。このディスクも昨日掲載したジョージ・セルのザルツブルク・ライヴ集と同様、今年になって低価格で再リリースされたのを機に購入したものです。

いずれの演奏も概ねベイヌムのリアリストとしての怜悧な視線の感じられる演奏で、程度の差こそあれ、造型的な格調と内燃的な充実感を併せ持つ独自のスタイルが発現していて、音質を超えた良さが感じられます。

以下、CDごとに感想を記します。

CD1:ドビュッシー 「管弦楽のための映像」(48年)、交響組曲「春」(42年)、交響詩「海」(41年)
このCD1はドビュッシーの作品集としてまとまっています。いずれの演奏もキリッとしたハーモニーの結像感、造型ラインのキッチリした確立ぶりなどが印象的で、録音年代を考えると驚異的な水準と思われます。ちなみにドビュッシーの「管弦楽のための映像」の世界初録音(レコードリリースを前提とする録音)はアンセルメ/スイス・ロマンド管による1949年のデッカ録音とされていますが、このベイヌム/コンセルトヘボウの録音はその1年前。内容的にも、レコードリリースを前提としても問題ない完成度です。戦中録音の「春」と「海」は、さすがにノイズも多く、ドビュッシーだけに聞き苦しい場面も少なくないですが、それでもフレージングや音色の選択において慎重な吟味を感じさせる美演で、聴いていてスタジオ録音かとさえ思えてくるような音楽の締まり具合にも感心させられます。

CD2:①フランク 交響詩「プシシェ」よりプシシェの眠り、西風にさらわれるプシシェ、エロスの園、プシシェとエロス(41年) ②ラヴェル バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲(54年)③アンドリーセン 「苦痛の鏡」(52年、イルマ・コラッシ)④エッシャー 哀悼の音楽(50年頃)
フランクは41年録音にしては音質が上等で、全奏時の響きの肌荒れ具合が惜しいですが、同じ41年録音のドビュッシー「海」(CD1)よりは音響的にしっかりしています。それにしてもベイヌムの指揮はメンゲルベルクとは正反対という感じで、何がしかの対抗意識でもあるのかと勘繰りたくなるほど。ラヴェルの「ダフニスとクロエ」は音質が抜群に良く、聴いていて当時のコンセルトヘボウの管パートの音色の香気が匂いたってくるような美演。逆にエッシャーの「哀悼の音楽」は50年代の録音にしては音質が振るわず、41年のフランクの音質よりも下回る感じです。

CD3:ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲(58年、フランチェスカッティ)、ピアノ協奏曲第3番(52年、ソロモン)
この2つのベートーヴェンに関しては、ベイヌム&コンセルトヘボウのアンサンブルの充実感という点ではヴァイオリン協奏曲よりピアノ協奏曲の方がひとまわり上で、やはり52年あたりがこのコンビのひとつの全盛期だったことが伺われます。もっとも、ソロの魅力という点ではヴァイオリン協奏曲のフランチェスカッティが抜群です。ヴィヴラートをたっぷりかけて各メロディを遅めのテンポで歌い抜く独自のスタイルが、ベイヌムの形成する古典的均整のとれた造形の中で絶妙な表出力を発揮しています。

CD4:①J.S.バッハ ピアノ協奏曲第1番(47年、リパッティ)②モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第4番(56年、メニューイン)③シューベルト 「ロザムンデ」より間奏曲第3番、バレエ音楽第2番(40年)④シェーンベルク 管弦楽のための5つの小品(52年)
リパッティによるバッハのコンチェルトは、録音自体が貴重ですし、演奏としてもリッパティらしい古典的格調豊かなものですが、いかんせん音質がそうとうに悪いです。プライヴェート・レコーディングとされていますが(おそらくエア・チェックものでしょう)、ノイズが多い上にレンジが極端にナローで、音勢も弱いですね。メニューインによるモーツァルトのコンチェルトも56年録音にしてはいまひとつの音質ですが、メニューインのソロが実に爽やか。多少ボッテリした弾き回しですが、表情に屈託がなく、音楽の伸びやかな呼吸感が聴いていて心地よい演奏です。

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