「バイロイトの第9」その5:オルフェオ盤(2)


ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」
 フルトヴェングラー/バイロイト祝祭管弦楽団
 オルフェオ 1951年ライブ C754081B

昨日の続きです。

まず第3楽章に関してですが、このバイエルン放送局音源ベースのオルフェオ盤は録音バランスがやや高弦よりに録られている感じがします。そのぶん低弦やティンパニといった重低音の迫力がEMI音源ベースの既出盤よりやや落ちるものの、ヴァイオリンなどの生彩という点ではEMI音源ベース盤をわずかに上回り、結果的にはこの楽章において高弦を中心に歌われる2つの主題の訴求力がかさ上げされた感じに聴こえるため、フレージングにひとまわり深みが増したような印象を受けます。

次に終楽章に関してですが、このオルフェオ盤の演奏においては、この「バイロイトの第9」のいくつかの決定的な特徴が消失してしまっているため、感銘の度合いとしても、これまで聴いてきたEMI音源ベースのバイロイト盤のそれに及ばないように思えてしまいます。

具体的に言うと、まず歓喜主題提示直前の長い「間」が、テープ編集のために消えています。あの神秘的なパウゼはこれまで「バイロイトの第9」の代名詞のようなものだったのですから、かなり違和感があります。

そして、「バイロイトの第9」のもうひとつの代名詞ともいうべき、コーダでの常軌を逸したアッチェレランドも、残念ながらオルフェオ盤の方には消失しているようです。これは双方を聞き比べてみれば明らかで、EMI音源ベースの既出盤の方がアッチェレランドがはるかに壮絶です。

上に挙げた2点のうち、前者はテープ編集上の問題ですが、後者は演奏上の問題で、このコーダ以外においても、全体にオルフェオ盤の方は既出のEMI音源盤より表現がひとまわり穏当な感じが拭えません。例えばオルフェオ盤終楽章(5:40)からの歓喜主題全奏なども、その直前での加速がEMI音源盤と比べるといかにも大人しく、インパクトが弱いですし、他の局面においても、テンポ変動のダイナミクスやフォルテッシモでの燃焼力といった点で、EMI音源ベース盤に遜色する場面が多い気がします。

こういう観点から、昨日書いたように、このオルフェオ盤の方の演奏は、ゲネプロではないかと感じました。もっとも、このオルフェオ盤の音質が、グランドスラムやオタケン、ミソスなみの水準だったら、また印象が変わってくるかもしれないですが。

以上のようなわけで、「正真正銘のバイロイト盤」というのはちょっとマユツバな気がするんですが、そうはいっても演奏自体の素晴らしさという点では、疑いなくフルトヴェングラーの「第9」の録音の中でも屈指の名演と思われますし、こういう録音が日の目を見たことの意義には計り知れないものがあると思います。

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