「バイロイトの第9」その2:グランドスラム盤


ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」
 フルトヴェングラー/バイロイト祝祭管弦楽団
 グランドスラム 1951年ライブ GS-2009
GS-2009
このグランドスラム盤はいわゆる「板起こし盤」で、レコーディング時のマスターテープではなく、LPレコードからの音録り方式に基づく復刻盤です。

この方式の場合、普通に考えるとマスターテープから直接音録りするよりも音質が劣るようにも思われるところですが、録音から半世紀もの年月が経過すると、老朽化の進んだマスターテープを再生するよりも、保存状態の極めて良好なLPレコードを再生する方が音質的に上回るという、一種の逆転現象が生じることがあるようで、それを復刻手段として積極的に利用するのが「板起こし」と呼ばれる方式です。このため、板起こし盤の音質の良否は必然的に、音録りに用いられるLPレコードの音質状態の良否が決め手とされます。

それでこのグランドスラム盤の音質についてですが、一言でいうと革命的で、これを始めて耳にしたとき、それまでのEMI盤とは比較を絶するくらいの音質の劇的な向上ぶりに震えがきたほどです。

第1楽章冒頭のフォルテからして、アンサンブルの驚くべき肉厚感に思わずのけぞるほどで、これが本当にあのEMI盤での線の細いアンサンブルと同一演奏かと疑いたくなるくらいのインパクトがあります。弦の響きが実に鮮明に色づいていて、トランペットも驚異的に響き渡り、聴いていて惚れぼれするほどです。

しかし、このグランドスラム盤の音質の最大の美点はむしろ、ハーモニーの中域を中心とするソノリティの密度的充実感、特にフォルテッシモでのズドンとくるようなパンチ力と強度感にあるように感じます。このため音楽の実在感が生々しい。この「バイロイトの第9」は、そもそも演奏自体が破格ですが、その破格ぶりをハイ・ヴォリューム再生により直截的に堪能できるという点で、ちょっとこたえられないものがあります。

別にグランドスラム・レーベルの復刻CDがすべて良いというつもりはない(例えば、本ブログの感想記で先日取り上げたフルトヴェングラー/ベルリン・フィルによるティタニア・パラストのブラ4などはあまりパッとしない音質でした)ですが、この「バイロイトの第9」に関しては復刻盤としてめざましい成果を示していると思います。

さらに2007年には、このグランドスラム盤の音質さえも凌ぐかというくらい超高音質な復刻盤であるオタケン盤およびミソス盤がリリースされました。

明日はそのうちのひとつ、オタケン盤を取り上げます。

コメント

 
こんにちは、興味深く拝読しております。
グランドスラムは、一聴すると迫力ある迫真の音ですが、原盤LPの音をかなりいじってそのようにしています。MYTHOSほどではないですが、常にアクセル全開のような音で、しかも強音弱音のピークが一定なので、ダイナミクスの忠実な再現とはなっていません。
オタケンはTKC-309でしょうか?これはTOCE-6510の丸ごとコピーのようです。
↓ が役立つと思います。
http://homepage1.nifty.com/classicalcd/FurtwanglerCD/Beethoven/sym9/19510729.htm
こんにちは。

> グランドスラムは、一聴すると迫力ある迫真の音ですが、
> 原盤LPの音をかなりいじってそのようにしています。

そのようですね。原盤に近いのはむしろTOCE-6510の方ですね。

> 常にアクセル全開のような音で、しかも強音弱音のピークが
> 一定なので、ダイナミクスの忠実な再現とはなっていません。

なるほど、確かにそういう感じはします。

ただ、私の場合、原盤の忠実な再現かどうかというより、もっと単純に、ハイ・ヴォリュームで鳴らした時の迫力如何で音質の良し悪しを計ってます。

ですので、やはりグランドスラム盤の音質に惹かれるんです。

> オタケンはTKC-309でしょうか?
> これはTOCE-6510の丸ごとコピーのようです。

TKC-309です。TOCE-6510と同様、「足音入り」です。これについては今日の感想記で書きます。

> ↓ が役立つと思います。

「バイロイトの第9」の各種CDに関しては、少なからぬサイトが独自の音質評価をなされていることは存じています。

本ブログ掲載の感想記における「バイロイトの第9」各CDの音質に関する感想は、あくまで私の主観的印象ですので、そういう風に感じる人もいるのか、くらいに捉えていただければと思います。

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