ロンドン交響楽団来日公演の感想記


昨日のコンサートの感想です。

当夜のコンサートの白眉は後半のプロコフィエフ交響曲第5番の演奏で、これは圧倒的でした。

第1楽章の冒頭あたりの低弦モチーフをすこぶる強めに鳴らして堂々と始まり、楽章を通じてフレージングは常に重厚味を帯び、ハーモニーの厚みにおいても充実感が絶えず、16型の大編成オーケストラから展開されるその深々とした響きに端的に魅了されました。さらに展開部から再現部においてはアンサンブルの重低音の強烈な押しと、高音の苛烈な色合いとの劇的な交錯ぶりが素晴らしく、このあたりは聴いていて胸を大きく揺さぶられる思いでした。

第2楽章の充実感も相変わらず、特にティンパニの強烈なことときたらすこぶるつきで、先週聴いたラトル/ベルリン・フィルのそれを遙かに上回る激烈な強打ぶり。これは音楽の迫力にダイレクトに直結し、特に楽章コーダのクライマックスにおいてはホールを揺るがすような苛烈な響きが充溢し、聴いていて鳥肌が立ったくらいです。

第3楽章においては、その緩やかなテンポに関わらず指揮台のゲルギエフのアクションは前2楽章に劣らないくらいダイナミックなもので、指揮棒を持たないスタイルからオーケストラを大胆かつ繊細にコントロールし、その響きの推移と音色の変遷に対し実に複層的なパースペクティブを付帯させ、すこぶる内面的で深みのある表情をアンサンブルが切々と奏でていて傾聴させられました。

終楽章は、冒頭こそ割と気楽な感じで軽やかな足取りで始まるも次第に音楽に重みが増していき、ついには第1楽章のそれをも上回るほどの素晴らしい迫力をもって感動的に全曲を締めくくりました。特にコーダあたりの圧倒的な鳴りっぷりは、おそらくゲルギエフとロンドン響の、このプロコフィエフの交響曲全曲演奏会シリーズの最終局面において有終の美を飾らんというような、気力を尽くした演奏姿勢の端的な現れのように思われ、それが客席にまでジリジリと伝わってくるような迫真の響きでした。

それにしても聴いていて思ったのは、ロンドン交響楽団とはこんなにすごいオーケストラだったのかということで、特にそのバスの充実感には目を見張るものがありました。それがゆえに先週同じホールで聴いたラトル/ベルリン・フィルの演奏よりも今回のロンドン響との演奏の方がむしろドイツ的なバランスに近いと思えたほどです。

アンサンブル配置においても、向かって左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンと並べた変則対向配置で、さらにチェロの真後ろにコントラバスが配置されていました。プログラムの記載によるとこの編成はゲルギエフがプロコを振る際の常套とのことで、ハーモニーの最上声と最低声とをあえて隣接させることにより両者の緊密な連携を可能とすることが狙いとされているようです。このあたり、ゲルギエフのバス重視の音楽造りの例証とも言えそうで、読んでいて肯かされました。

前半に演奏されたプロコフィエフの第4交響曲(オリジナル版)の演奏に関しては、内容的には決して悪くないものでしたが、後半の第5交響曲での演奏の破格ぶりから振り返ると、印象的にはちょっと落ちる感が否めませんでした。そもそもリジナル版自体の魅力が改訂版ほどになく、特に終楽章のコーダなど、改訂版より音楽が少なからず遜色する感じが否めず、第5交響曲と比較しても作品としてのキャパシティが明らかに弱いと思いました。とはいえ、滅多に演奏されない曲なのは確かなので、貴重な体験にはなりました。

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