K.ザンデルリンク/ベルリン響によるベートーヴェン「第9」の87年ライブ


ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」
 K.ザンデルリンク/ベルリン交響楽団
 ヴァイトブリック 1987年ライブ SSS0083-2

いよいよ師走ということで、今年リリースされた「第9」のCDの感想をひとつ。

これは旧東ドイツにおける民主共和国会館での演奏で、ベルリン市制750周年記念の祝賀演奏会のライブ録音とされています。

クルト・ザンデルリンクの「第9」としては、他にフィルハーモニア管とのスタジオ録音もあります(disky 1981年録音)が、それとこのベルリン響との演奏とは、同一の指揮者とは思えないほど印象が違っています。フィルハーモニア管との録音は全体に、品の良く晴朗な表情の演奏という趣きで、端正ではあるものの強烈な印象を残すという類の演奏ではありませんでした。それに対して、このベルリン響との演奏は、アンサンブルの表出力がフィルハーモニア管とのそれとは段違いの水準で、内容的にも稀代の名演ともいい得るものだと思います。

第1楽章からたっぷりとしたソノリティの肉厚から繰り出される濃密な音響的インパクトが素晴らしいですが、ここで印象的なのは金管の強い突出感で、古楽器アンサンブルのようなバランスにかなり近いくらいです。しかし弦の編成を絞っている風でもなければ音量を抑えている風でもなく、つまり金管のパワーがものすごいということのようです。

展開部以降の音楽の緊迫度もすこぶるつきで、(7:18)あたりの高弦のギリギリするような律動、再現部直前(8:48)あたりの金管の大胆な強奏! 再現部冒頭もすごい迫力ですが、ここはティンパニをかなり抑えているのがもったいないような気がします。もっと強く鳴らせば迫力もさらに伸びると思うので。逆に金管はあいかわらず絶好調もいいところで、(9:47)あたりでのトランペットなど、やり過ぎなくらいの猛烈な強奏ぶりです。

第2楽章は前楽章で抑えていたティンパニを冒頭から全解放し、素晴らしい強打ぶりが全編を鮮やかに満たしています。第3楽章は弦の表出する得もいわれぬ豊穣な響きが充溢し、それでいて音響的に余分な力みがほとんどなく、テンポは明らかに遅めなのに流れに鈍重さが感じられず、その晴々として格調高い佇まいに思わず傾聴させられます。

終楽章は冒頭のティンパニの激打ぶりが途方もなく、あまりに強烈過ぎて直後のトッティの方が霞んで聞こえてしまうほど。(3:09)からの歓喜主題の弱奏導入も音量がしっかり確保されていますし、以降もコーダまで、テンポの緩急対比こそ控えめながら、端然としたアーティキュレーションを崩さずに造型的な威容が高度に練られ、響きの有機的な膨らみも抜群ですね。すこぶる感動的な「第9」です。

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