サンフランシスコ交響楽団の来日公演(11/20 東京文化会館)の感想


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サンフランシスコ交響楽団の来日公演を東京文化会館で。指揮者はマイケル・ティルソン・トーマス。このオケは来日頻度が低く、今回15年ぶりの来日なのだとか。

最初はジョン・アダムズの「ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシン」。1986年にティルソン・トーマス指揮ピッツバーグ響により世界初演された曲で、弦と打楽器の織り成す精密なリズムの波の上で金管楽器が痛快なファンファーレを繰り広げ大いに盛り上げる。これは4分程度の小曲であっという間に終わってしまったが、コンサート初っ端の景気付けには最適な曲のひとつかもしれない。サンフランシスコ響のブラスセクションは惚れぼれするほど爽快な音だった。

続いて中国出身の名手ユジャ・ワンをソリストに迎えてプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番。この演奏は実に素晴らしかった。ユジャ・ワンは世界屈指の超絶技巧ピアニストという名声に相応しい快刀乱麻のピアニズムを存分に披歴しつつ、このプロコフィエフ作品の難技巧性に起因する音楽の面白さを余すところなく音化したような趣きがあり、第1楽章と終楽章の終盤での壮大なクライマックスはもとより疾風怒濤の第2楽章や巨象のダンスのような第3楽章にいたるまで縦横無尽に駆け抜けるピアノ・ソロの運動感は聴いていて痛快無比であり、この作品をこれほど面白く聴けたのは録音実演を通して初めての体験だった。

このプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番は初演の際、そのあまりにも(当時は)独創的な楽想のため聴衆の拒否反応がすさまじかったというエピソードが伝えられているし、この曲の雰囲気には実際ある種の禍々しさ、刺々しさといったような性格のものが色濃い。だから普通この作品はそのような刺々しさや禍々しさを強調して弾かれることが多いと思うが、当夜のユジャ・ワンの演奏はそういった奇形性よりも作品自体のピアノ音楽としての純粋な面白さや爽快さを汲み取って、それを自身の磐石のテクニックにより音化し尽くすことに成功したというべきだろうか。この作品をこんなにスリリングに聴けたことは今まで無かった。

後半はラフマニノフの交響曲第2番。ここでのオケの響きの特性を端的に表すなら光彩陸離という言葉が最も相応しいように思う。なんといってもアンサンブルの響きの上質な美しさが素晴らしく、アメリカのオケに有り勝ちな派手でケバケバしい音響とは全く異なる感触。この感触はアメリカンというよりは、むしろロンドンあたりのオケのそれに近い特性があるのではとも思ったが、アンサンブルの明晰な色彩の分解能からくる絢爛たる音響美においてはアメリカらしい豪奢な響きの特性も確かに伺われ、そこにアメリカの地域性というべきものもしっかりと継承されていることに気付かされた。

ラフマニノフの2番を実演で聴いたのは昨年14年ぶりに来日したロシア国立交響楽団の演奏会以来だったが、その本場のラフマニノフよりも今回のMTT/サンフランシスコの演奏の方が個人的には一層の好感を持てた。ロシア国立響のラフマニノフにさすがに比類ないくらいの格調高さがあったが、やや格式ばったところがあったし、音響的にも地味だった。その点MTT/サンフランシスコのラフマニノフは過度に格式ばっていなかったし、何よりオーケストラの洗練を尽くした、文字通り耳の御馳走ともいうべき音響美が抜群だった。

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