マリインスキー・オーケストラ来日公演(11/15 NHKホール)の感想


2012-11-15b

ワレリー・ゲルギエフ/マリインスキー・オーケストラの来日公演をNHKホールで。このコンビの実演を聴くのは昨年のマリインスキー・オペラ「トゥーランドット」以来だがオーケストラとしての来日公演を聴くのは前回の来日(2009年12月)以来3年ぶり。

最初の演目はメシアンの初期の作品「キリストの昇天」。これは管弦楽のための4つの交響的瞑想という副題の通りメシアン一流の瞑想的なハーモニーが時に静謐に時に凶暴に紡ぎ出されていく神秘的雰囲気に包まれた作品だが、ゲルギエフ/マリインスキーは持ち前の広範なダイナミックレンジと細部まで緻密なアンサンブル処理をもって作品の姿を隅々まで過不足なく描き出した。

その点では見事の一言だったものの、肝心のアンサンブルの響きの耳当たりが総じてゴツゴツした感触だったのでメシアンらしさが正直あまり感じられなかったし、ちょうど去年の今頃、同じホールで聴いたパリ管の来日公演で披歴されたメシアンは独特の柔らか味を帯びたアンサンブルの内省的な響きやハーモニーの深い奥行きに耳をそばだたせられたが、今回そういうものは残念ながら感じられなかった。

続いてギリシャ出身の名手レオニダス・カヴァコスをソロに迎えてシベリウスのヴァイオリン協奏曲。この曲を実演で聴くのは昨年のN響定期以来だが、その時のソリストに当初クレジットされていたのが実はカヴァコスその人で、ブロムシュテットとの顔合わせでシベコンを弾く予定だったのだが、公演直前で体調不良によりキャンセルとなり、その代役は竹澤恭子が務めていた。

カヴァコスはシベリウス国際コンクールに史上最年少で優勝した経歴の持ち主であり、おそらくシベコンは自家薬籠中の作品なのだろう。かなり緩急の幅を大きくとった雄弁な語り口、研ぎ澄まされたテクニック、ストラディバリウスの絢爛たる響きの特性をフルに活かしたような鮮やかな音色。その独自のシベリウスの世界には聴き終えて深い感銘を与えられた。アンコールのバッハにも痺れた。

後半はプロコフィエフの交響曲第5番。この曲を実演で聴くのは4年前のロンドン響の来日公演以来で、その時の指揮者もゲルギエフ。今回も第1ヴァイオリンとチェロを隣接させるゲルギエフ常套の配置だったが、編成は14-12-10-10-6というチェロを厚くした14型だった。

演奏自体の特徴としては前述のロンドン響との同曲の実演の際の印象と概ね重なるものだったが、今回のマリインスキーとの演奏ではチェロの厚みが効いたのか全体を通して重低音の押しの強いタフな感触のアンサンブルから展開される、強靭なハーモニーの表出力にただならないものがあり、その点では以前のロンドン響との実演を凌ぐものがあったと思うし、そのぶん音楽としてのワイルドな荒々しさが前面に押し出された印象を感じた。反面いささか洗練味には欠け、ロンドン響との実演での、とことんまで突き詰められたようなアンサンブルの完成度の高さや盤石の音響設計という点からすると全体的に一歩を譲るような印象も正直あった。しかし、このプロコの5番のワイルドな楽想の持ち味を絶妙に引き立たせるという観点では、今回のマリインスキーとの演奏の方が音楽の特性に合っていたような気もするし、その意味でロンドン響との実演とは一風違った面白さが聴いていて感じられた。

それにしても当夜のコンサートは時間的にも内容的にも盛り沢山だった。後半のプロコフィエフが始まったのが8時45分で、これは普通のコンサートなら終演の時刻。アンコールにワーグナー「ローエングリン」第1幕への前奏曲。終演は10時に近かった。

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