ドレスデン・シュターツカペレ来日公演(10/26 サントリーホール)の感想


2012-10-26b

クリスティアン・ティーレマン率いるドレスデン・シュターツカペレの来日公演、先日のNHKホールに続いてサントリーホールでの最終日を聴いた。

前半の演目はワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死。このコンビのワーグナーはNHKホールでのリエンツィ序曲にも感服させられたが、当夜のワーグナーはホールのアコースティックの利もあり、また格別だった。

冒頭からじっくりと攻めたスローテンポをベースに厳粛に紡ぎ出されるメロディの美しさは喩えようもないほどであり、このオーケストラ特有の馥郁たる響きは無垢の艶やかさとなってワーグナーの彼岸の楽調に絶妙に照応し、稀に見るほどの深みのある陰影を醸し出し、これには聴いていてグッと心揺さぶられる思いだった。

ティーレマンのワーグナーの実演というと一昨年ミュンヘン・フィルを率いて来日した際、同じホールで聴いたタンホイザー序曲が思い出される。今回のトリスタンとは反対に冒頭から快速テンポで突っ走る怒涛のようなアンサンブル展開に圧倒させられたが、それと引き比べても今回のドレスデン・シュターツカペレとのワーグナーは、このオーケストラの持つ響きの諧調、いわゆるドレスデン・サウンドの珠玉の含蓄もあり、ひときわ感動的だった。

後半はブルックナー交響曲第7番。先日のNHKホールでのブラームス同様、ここでもティーレマンは遅めのテンポをベースに積極的にテンポを動かし、独特ともいうべき起伏感を印象づける、ティーレマン一流のロマンティック・スタイルによるブルックナーが披歴された。第1楽章だけで24分、全体で74分という大演奏だったが、その大河的な音楽の流れが生み出す雄大なスケール感は驚嘆に値するものであり、それがオーケストラの芳醇な音響美と絶妙に相まって、このコンビだけが為し得るような至純のブルックナーとしてホールに立ち現われ、その崇高な音楽の佇まいには聴いていて深い感銘を禁じえなかった。

前述のように、先日のブラームス同様このブルックナーにおいてもティーレマンは自己のポリシーに従いアゴーギグの変化を闊達に組み込んだ表現を展開したので、そのブラームスで感じた芝居がかったような印象が正直ここでも全くないでもなかったが、むしろ曲想変化に伴うテンポの動きが音楽の瞬間瞬間に新たな生命を吹き込むかのような新鮮な趣きが素晴らしかったし、このテンポの動きゆえにブルックナーの交響曲が紛れもなくドイツ・ロマン派に属する作品であるという事実(この事実は日本では往々にして軽視されるが)を改めて強く印象づけられもした。こういう視点に立ったブルックナーは最近ほとんど耳にできなくなったし、その意味でも貴重な体験だった。

伝えられるところによるとティーレマンは自己の音楽表現に関する信念には妥協を許さない指揮者であり、それが一因でミュンヘン・フィルのポストを去ることになったとも言われている。ドレスデンでのポストがどの程度まで継続するか分からないが、今回の来日公演を聴いた限り、このコンビの前途に幸あることを願いたいと思う。また、来年のウィーン・フィル来日公演の指揮者はティーレマンが有力とのこと。こちらも今から楽しみだ。

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