NHK交響楽団の定期公演(9/22 NHKホール)の感想


前半はリャードフの「8つのロシア民謡」。これは個々の曲が1~2分程度で全体で15分という、小品指向の作曲家らしい小規模な管弦楽組曲であり、ロシアの素朴な農村生活を描いた画集とも評されている作品。

親しみ易いロシア民謡がメロディとして使われていることもあり、本来それなりにロシア臭の強い作品のはずだが、スラットキンはサクサクと軽快にフレーズを紡いで、あっさりとした味付けで小気味よい音の御馳走として聴かせた。なにしろ短い作品なので音楽が乗ってきたなと思ったところであっさり終わってしまったが、オケにとっては後半の大曲のウォーミングアップにちょうどいい長さかもしれない。

後半はショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」。スラットキンはタクトを片手に(前半のリャードフは空手だった)冒頭からアンサンブルを快調なテンポで走らせつつ、ザクザクと歯切れ良いフレーズの流れを刻み込み、一糸乱れぬ音楽の行進を展開したが、それが例の戦争のテーマの執拗な反復に基づくクレッシェンドの果てに、初演時には「破壊と死と滅亡の一途あるのみ」と評されたという、あの狂気のようなクライマックスを築きあげるあたりになると、文字通り壮大に織りあげられたスペクタクルな大音画をホールに現出せしめ、その猛烈な奔流に聴いていて圧倒され、酔いしれる思いだったし、それに付随するこのシーン独特の恐怖感、それが静まった後の世界が滅んだかのようなゾッとするような虚無感にも聴いていて胸打たれる思いだった。

スラットキンといえば稀代のオーケストラ・ビルダーという評価が確立されているが、N響とはこれまで何度も客演を重ねているだけあって、そのアンサンブル統率力は瞠目に値するものであり、それは先週のプレヴィンの指揮と同格、いやそれ以上ではないかとさえ思えるほどであった。というのも、ここでスラットキンが披歴したアプローチというのが独特であって、確信犯的に速めのテンポで一貫されており、なにしろ第1楽章は25分を切っていたし、全曲のタイムも約65分という短さだったが、これだけの速いペースでの一糸乱れぬアンサンブル展開となればオーケストラのポテンシャルの高さや指揮者の統率力がダイレクトに問われてくるだろうと思われるからだ。この点でN響は全く見事なものだったし、それを当り前のように成し遂げたスラットキンの統制力も驚嘆に値するものだった。

このスラットキンのテンポ設定は独特の尖鋭なイフェクトを音楽に与えているようにも思えた。とくに前述の第1楽章における戦争主題のクレッシェンドの場面など、容赦ないハイ・テンポで無慈悲なまでに畳み掛けられるテーマの反復強奏が音楽の切迫した調子を強めてゆくあたりなど聴いていて何か空恐ろしい感じがしたし、情緒的なはずの第3楽章のアダージョなどもテンポの速さゆえに音楽が追い立てられているような切迫した雰囲気が出ていたりして、聴いていてハッとさせられた。もっとも、このショスタコーヴィチの「レニングラード」 には速めのテンポより遅めのじっくりと攻めたテンポの方が相応しい面も正直それなりにあると思うし、聴き手によってはちょっと抵抗を覚える進め方だったかもしれない。

それにしても今回のN響のアンサンブルの鳴りっぷりは素晴らしかった。今年のN響の定期はノセダ、尾高忠明、アシュケナージ、プレヴィンと聴いてきたが、こと純粋な鳴りの良さという点では今回がベストだったと思う。この巨大ホールを制圧するほどの豪快な響きを久々に耳にして爽快な気分だった。

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