NHK交響楽団の定期公演(9/15 NHKホール)の感想


今月をもってN響の名誉客演指揮者に就任したプレヴィンは現在80歳を超える高齢ゆえか、杖を片手に、介添え人に支えられながらステージに登場。指揮台に置かれたた椅子に腰かけ、おもむろにタクトを振り降ろしマーラー交響曲第9番の指揮を開始した。

それは精緻に描かれた絵巻物を見るようなマーラーというべきか。客観視の極みのような演奏であり、個々のフレーズを情緒的に揺らしたり粘ったりということは一切せず、即物的なまでに淡々とアンサンブルを刻んでいき、その響きの色合いも実に朗々たるものであり、殊更に破滅色を打ち出すなどとは無縁な行き方。フォルテッシモでの異様なほどの透明感やピアニッシモでの虚無的な静寂の描き方など、いずれも管弦楽表現の達人たるプレヴィンの面目躍如たる佇まいであり、ことに終楽章はさながら大編成の管弦楽による精巧な室内楽という風情であり、その練れた音響の醸し出す透徹した美感は素晴らしい聴きものだったし、また全編を通してN響のアンサンブルを完全に掌握しつつ手足のように高精度でコントロールする手腕も、名誉客演指揮者の称号に相応しいものだった。

このようなプレヴィンの表現様式は確かに驚嘆に値する、希有の聴きものであったにしても個人的には聴いていて今ひとつ音楽の感動に浸り切れないもどかしさを最後まで拭えない面も正直あった。というのもプレヴィンのアプローチというのが作品の内部にのめり込むのでなく、あくまで外部から作品の姿を明快に照らし出すという方向性に基づく、ある程度まで突き放した解釈であるがゆえの醒めた感覚が局面によっては仇となり、マーラーの音楽から受けるはずの感銘の度合いを自分の中で決定的に伸び切らせるには至らなかったからだった。

しかし聴き手によってはこれぞ理想のマーラー像と感じても不思議でない、非凡な演奏内容だったのも事実。プレヴィンのマーラーの録音というのは聴いたことがなかったし、ことマーラーの9番に関しては過去にヨーロッパのオケの来日公演で突き抜けた実演を何度か体験しているので、この曲に関しては自分の中で割合ハードルが高くなっているから、ちょっと半信半疑でホールに出向いたのだが、やはり聴いておいて良かったと思う。必ずしも好みのスタイルではなかったが、ひとつの方向性を突き詰めた点で、文字通り傾聴させられたマーラーだった。

ところで、N響の定期公演では今まで無料のプログラム冊子「サブスクリプション」を手渡されていたが、今回は同オケの機関紙「フィルハーモニー」を手渡された。この冊子は基本的には有料(300円)だがコンサートに行くと無料で配布されることになったようで、今月からN響のホームページでも全文公開(PDF)されるようになっているし、どうやら事実上無料化されたようだ。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.