下野竜也/読売日響のマーラー「復活」(9/1 東京芸術劇場コンサートホール)の感想


昨年の4月から改修工事を行っていた東京芸術劇場が改修を終え、装いを新たにオープンした。これまでの大ホールは「コンサートホール」という名称に変更された。

そのリニューアルオープン記念演奏会としてマーラー「復活」が下野/読売日響により演奏されるというので聴きに行ったが、ホールに到着すると建物の外観からして従来と大きく異なっていた。あの独特の長大なエスカレーター(あれは高所恐怖症の人などには結構きつかったと思うが)が踊り場を挟んだ2段式に変えられていた。ホールに入ってみると従来の大理石の壁面に木材が加わっていて、シックに落ち着いた雰囲気となっていた。真新しいシートの座り心地もいい。

下野竜也の指揮により披歴されたマーラーは正攻法というよりは王道風という趣きであり、安定感のある中庸なテンポをベースに粛然とアンサンブルの歩を進め、強弱や緩急の動きはマーラーの指示の範囲内でキメ細かく表現するが、それ以上のデフォルメは厳しく慎む、という按配。丁寧で精緻な表現ながらマーラーにしては全体的に起伏感が大人しく、確かに局所効果には乏しい演奏だったが、反面モチーフを緻密に積み上げていって大いなるカタルシスを築き上げるという大局的な構築力に関しては一級の迫力がみなぎり、その点では聴いていて感嘆を禁じえなかった。

下野のマーラーというと聴く前は正直あまりイメージが湧かなかったが、その折り目正しい正調のマーラーを聴いているうち、もしかすると下野の師匠筋の指揮者であり、大阪フィルの指揮研究員時代に薫陶を受けた朝比奈隆の影響からくる表現ではないかと考えた。マーラーの交響曲は「第2」から始まる、という見識の持ち主だった朝比奈は、マーラーの中ではこの「復活」をレパートリーとして特に重視したが、局所効果を狙わずに独自の大局感をもって構築的に音楽をまとめあげるその手法は朝比奈ゆずりの発想からくるものではなかったか。

リニューアルされたホールの新しいアコースティックの印象としては、残響度や解像度などは特に大きな変化は感じなかったが、従来よりも幾分か響きが上品化しているような感覚があった。ことに終盤の声楽のくだりでの天上の響きは、このホールでも以前はちょっと耳にした覚えがないくらい清らかな美しさだった。

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