アジア・フィルハーモニー管弦楽団の日本公演(8/2 サントリーホール)の感想


2012-8-2b

アジア・フィルハーモニー管弦楽団はチョン・ミョンフンの肝煎りで1997年に創設された、アジア諸国の演奏家を中心に構成される非常設型のオーケストラであり、2006年からは毎年夏の1週間ほどの短い期間に数公演のみを行うという形態での運営が続けられている。

、、というのがこのオーケストラの一般的な説明だが、これだけだと実態がいまいち分かりにくいので、今回の日本ツアーのプログラムに記載されているメンバー表の情報から、もう少し実態を細かく見てみると、全メンバーのうちソウル・フィルの楽員が全体の3分の一ほど、日本のオーケストラの楽団員も3分の一くらい、残りは欧米のオーケストラの楽団員、というのが大まかなバランスのようだ。

もっとも第1ヴァイオリン奏者のメンバー(今回のツアーには14人が参加している)に関しては、韓国3人(ソウル・フィル)、日本3人(N響、大阪交響楽団)、残り8人が欧米組というバランスで、その8人の所属オケを見るとフランス国立放送フィル、デトロイト響、サンフランシスコ響、ロンドン響、ベルリン・ドイツ響、ヒューストン響、ドレスデン・シュターツカペレ、ロスアンジェルス・フィルという按配であり、なかなかに壮観だ。またセカンド・ヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバスのトップは、それぞれサンフランシスコ響、コンセルトヘボウ管、ベルリン交響楽団の首席奏者が並んでいる。日本のオーケストラの楽団員は東京フィル、N響、新日本フィルあたりが目立つが、九州交響楽団や仙台フィルといった地方オケからも楽員が幅広く参加している。

今回ひさしぶりにアジア・フィルの公演を聴きに行った。このオーケストラを聴くのは2001年の東京公演(東京国際フォーラム、演目はベートーヴェンの「第9」)以来、実に11年ぶりになるのだが、聴いてみて驚いたのは前回の公演の時に耳にした演奏のイメージとは全くと言っていいほど違った感触の演奏が披歴されたことだった。

前半はシューベルト「未完成」だったが、この曲はたまたま先月ハーディング/新日本フィルの演奏会で耳にしたばかりだったが、このミョンフン/アジア・フィルが披歴した演奏も、その先月の演奏と同系統の感触であり、いうなら沈着なスタンスから丁寧にアンサンブルを紡いだ、ふっくらと柔らかい音を印象づける美しいシューベルトだったが、これはおそらく先月のハーディング/新日本フィルの行き方を更に一歩推し進めるとこうなる、というような練り切れた表現というべきものであり、聴き終えて実に深々とした余韻がもたらされた。

後半のベートーヴェン「英雄」は第1楽章冒頭から圧倒的なハイ・テンポでグングン突き進む行き方だったが、にもかかわらず一糸乱れぬアンサンブルからは何とも音立ちの良い響きが絶え間なく提供されてくるし、音響的な洗練味も前半のシューベルトに劣らず出色、加えてミョンフンは複数の渾身のフォルテッシモにおいてアクセルを思い切りよく踏み込み熾烈な音響の充溢を躊躇しないという強メリハリ型の表現をも具有するベートーヴェン像を披露、ことに第2楽章再現部のフーガではじっくりと攻めたスロー・テンポから深々としたアンサンブルの鳴動を引き出し感動的だったし、そこでは一昨年同じホールで聴いたプレートル/ウィーン・フィルのエロイカの残像が脳裏に蘇るほどだった。

それにつけても11年前に耳にした同じオーケストラのベートーヴェンとは随分と違っており、この点には率直に驚かされた。というのも、当時の同オケの演奏は確かに燃焼力の高いアンサンブルによるホットなベートーヴェンというイメージだったが、少なくともアンサンブルの響きの上質な美感、高度に洗練された音響的な美しさといったものは、それほどには感得できなかったからだ。

むろん東京国際フォーラムAホールとサントリーホールの音響環境の差は非常に大きいし、あるいは11年という年月に係るアンサンブルのブラッシュアップの度合いも大きいのかもしれない。しかし聴いていて強く思ったのは、音楽監督のミョンフンがフランス国立放送フィルのシェフを現在まで長らく務めていることが存外に大きなファクターになっているのではないかということであり、というのはミョンフン率いるフランス国立放送フィルの来日公演を以前に同じホールで聴いた時と近しい響きの感触が、時おり今回のアジア・フィルのアンサンブルから特に管パートを中心に感じられたからで、おそらくミョンフンのフランスでの長年のキャリアがアジア・フィルの演奏のコンディションに少なからず良質な影響を及ぼしているのではないだろうかと聴き終えて思った。

オケの編成は前述のように14型。正確には14-14-12-10-8という変則的なものだったが、おそらく16型にする予定がヴァイオリンに欠員が出て止むなくこうしたのだろう。

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