NHK交響楽団の定期公演(6/16 NHKホール)の感想


①コダーイ ガランタ舞曲

プログラム前半をハンガリーで統一したいということから選ばれた演目だろうか。アシュケナージはアンサンブルを整然と無理なく鳴らし、ほどほどに盛り上げ、過不足なく、という風だった。この曲は以前に第一生命ホールでジャパン・シンフォニアの演奏で聴いたことがあるが、あの時はもっと室内楽的な奥行きの豊かさが感じられたが、それと比べると今回の演奏はホールのキャパの差ゆえかもしれないが、ちょっとスカスカした印象だった。

②バルトーク ピアノ協奏曲第2番

ピアニストはフランスの実力派、ジャン・エフラム・バヴゼ。このバルトークは随分と聴きごたえがあった。バヴゼのピアニズムは洗練された音色の訴求力が素晴らしい。弾力感に富んだ切れのあるタッチでバリバリ弾いているという風でありながら強引に弾き飛ばしている印象がなく、むしろ細やかなフレージングが不思議と訴えかけてくるあたりなど、独自の表出力に満ちていた。

第1楽章から流暢な指さばきで淀みなく推移するパッセージの鮮やかな色彩感が際立ち、フォルテッシモでも決して暴力的に弾かず、研ぎ澄まされた和音の洗練味が持続し、尖鋭なインパクトを叩きつける。第2楽章の印象主義風な弱音展開のあたりではドビュッシーの音楽のような透明にして寄る辺ない音色の美しさに惹き込まれたし、第3楽章の終盤などは正直もう少しピアノを打楽器的にガツンと打ちならしてもと思ったものの、最後まで統一性のある解釈でまとめあげ、この作品の持つ隠された色彩美を十分に堪能させられた。バックN響の金管奏者や打楽器奏者の名技も十分にものを言っていたし、終わってみれば実に刺激的で面白いバルトークだった。

③R・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」

16型編成だったがチェロ奏者が12人と少し多め。後で調べてみて分かったが、この曲は作曲家により16-16-14-12-12という編成が決められているらしい。

N響らしく手堅くソツのない演奏というべきか。本来こういう大編成の難曲はN響のようなポテンシャルの高いオケにはぴったりのはずだし、アシュケナージも大規模なオーケストレーションを整然と鳴らすことには長けている指揮者。要所要所での難しい金管ソロのフレーズなども難なくこなし、きちんと為すべきことを為し、適度に盛り上げ、適度に格調高く、適度に緻密で、適度に美しい。

その限りでは別に悪い演奏ではないと思うが、この曲には個人的に思い入れがほとんどないせいもあるかもしれないが、あまりに表情が普通すぎて今一つ面白味に欠ける演奏だったというのが率直なところで、これはというような凄味が最後まで伺われなかったのが残念だった。

一年ほど前にN響の定期でリヒャルトの「英雄の生涯」が取り上げられたのを聴いたときも今回と同じように空虚な気持ちでホールを後にしたことを覚えているし、その3日後にインバル/都響の演奏で同じ「英雄の生涯」の実演を聴いた時には自分でも意外なくらい感動したことも覚えている。この「ツァラトゥストラ」もいつかそういう目の覚めるような実演に出会う時が来るのかもしれない。

そんなことを思いつつ霧雨の降りしきるなかホールを後にした。

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