庄司紗矢香のヴァイオリン演奏によるショスタコーヴィチの協奏曲第1番(LFJ2012公演)


5/4 東京国際フォーラムAホール
LFJ2012 公演215

lfj2012-215

ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲第1番
 庄司紗矢香(ヴァイオリン)
 ドミトリー・リス(指揮)
 ウラル・フィルハーモニー管弦楽団

ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲というとCDで聴く限りオイストラフを筆頭とする旧ソ連系のヴァイオリニストに印象深い演奏が多いが、当夜の庄司紗矢香が披歴した表現は、そういった旧ソ連系の演奏家においてしばしば聴かれる重厚で濃密な表現と比べるとフォームとしてはスマートであり、情緒に訴えるような切り口でもなければ、奇を衒った変則技を仕掛けるでもない誠実なアプローチといえるものだった。

しかし彼女の盤石のテクニックをベースに鋭利に研ぎ澄まされたボウイングから繰り出される峻烈なアーティキュレーションには尋常ならざる凄味が感じられ、このショスタコーヴィチが血を吐くような思いで書いたのではとさえ思える悲痛にして沈思的な音楽が実に雄弁に切々と奏でられた。

ことに第3楽章が圧巻だった。この声なき慟哭ともいうべき楽章に浮遊する寄る辺ない不安感、ひたひたと押し迫る恐怖のニュアンス、そういったものが静まりかえった巨大空間ホールに深々と響きわたる様は聴いていて身ぶるいを禁じえなかったし、終楽章直前のカデンツァの最強奏では彼女の真っ赤なドレスが血の色にすら見えるほどの鬼気迫る弾きぶりであった。

ドミトリー・リス指揮ウラル・フィルも見事だった。ことに指揮者は指揮棒を持たない全身指揮で細やかに音楽の機微を表現していたし、第2楽章中盤のフォルテッシモで凄い形相でオケを猛烈に鳴らして切迫感に満ちた山場を形成していた。終演後にスコアに印刷されていたショスタコーヴィチのポートレートを客席に高々と掲げて拍手に応えていたあたりにも同じ「ドミトリー姓」の作曲家への共感の強さが伺われた。

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