パリ管弦楽団の来日公演(11/19 NHKホール)の感想


パリ管弦楽団の来日公演(11/19 NHKホール)の感想です。

2011-11-19c

オーケストラはVn-Va対向配置、編成はシューマンが14型でメシアンとストラヴィンスキーが16型でした。

最初のメシアン「忘れられた捧げ物」は弱冠22歳のメシアンがパリ音楽院を修了する1930年に作曲した作品で、「十字架」」「罪」「聖餐」の3つの部分に区切られており各々「悲痛に」「狂暴に」「慈悲をもって」という表情指定が与えられているということですが、ヤルヴィ/パリ管のアンサンブルは悲痛味を満たしたピアニッシモから狂暴を極めたようなフォルテッシモまで実にダイナミックな表現レンジを披露し、メシアン本場のオケとしての貫禄を十分に見せつけました。

続くシューマンのピアノ協奏曲ではダン・タイ・ソンの奏でるピアノの音色の怜悧な美しさにグッと心惹かれました。どのパッセージワークひとつとっても流暢な打鍵の運びから繰り出される奇麗に粒の揃って美しいピアニッシモの音立ちもさることながら、フォルテッシモにおいてさえふっくらと柔らかみのあるドリーミーな音色の諧調が素晴らしく、全体的にデュナーミクのレンジは控え目でド迫力とかパンチの効いた演奏といった形容は当てはまらない表現でしたが、そのあたりの自制力においてもダン・タイ・ソンの一つの見識が現われているように感じられましたし、アンコールで披歴されたショパンのマズルカも含めて、往年のショパン・コンクール覇者としての稀代のピアニズムの持ち味が十分に発揮された見事な演奏を堪能できて満足でしたが、そのピアニズムの特性を考慮するならもう少し残響のリッチなホールであればさらに音色の美感が映えて演奏の良さが一層ひきたったような感もありました。

後半のストラヴィンスキー「ペトルーシカ」は3管編成による1947年版での演奏でしたが、ここでは俊英パーヴォ・ヤルヴィの手により緊密に織り上げられたシビアなアンサンブルの組み上げとパリ管本来の芳醇な音響美の両者が折り合う地点に生まれる音楽のスリリングな拮抗感が聴きものでした。

この「ペトルーシカ」においてヤルヴィは全体的にオーケストラの響きをタイトに引き締めつつオーソドックスなテンポの運びから快調にアンサンブルの歩を進めつつ、また熾烈なフォルテッシモの場面でも決して暴力的にオケを鳴らさずパリ管特有の響きの美彩を毀損しない、その意味で緻密でデリケートな音楽造りを披露し、造型的にはオーソドックスな表現ながら音響的には非凡なものを聴き手に感知させるという行き方でした。

このようなヤルヴィの入念な運用のもとで発揮されたパリ管のアンサンブル独特の水際立った色彩感も見事なもので、それは単にパリ管の各パートの音色が上質でカラフルな美しさに富んでいるというだけでなく、むしろ音楽の進展に伴い実に多様多彩なハーモニーの引き出しを具有しているという点に真価があるように聴いていて思えました。というのも、例えば最初の謝肉祭の市の場面では賑々しい雑踏を描写する湧き立つように華やかな色彩の充溢、あるいは続くペトルーシカの独房でのアンニュイで頽廃的な色合いなど、この作品の性格に由来するパノラマ的な色彩の切り替えが絶妙を極めていたからで、結果このバレエ音楽の持つ色彩面での意外な面白さに聴いていて惹きつけられる思いでした。

残念なのはホール自体が相当デッドなのでパリ管の持つ芳醇な音響美の持ち味が必ずしも最大限には発揮されていたとは言えないように思えた点で、それがため大満足とまでは正直いきませんでしたが、久しぶりにフランスの管弦楽団ならではの演奏の醍醐味を堪能した充足のひとときでした。

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