チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の来日公演(11/15 サントリーホール)の感想


チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の来日公演(11/15 サントリーホール)の感想です。

2011-11-15c

オーケストラは通常配置、編成はドヴォルザークが14型でブラームスが16型でしたが後者はチェロ奏者が(ヨーヨーマも含めて)12人(つまり16-14-12-12-8)という低弦に少し厚みを持たせたバランスでした。

前半のドヴォルザークのチェロ協奏曲はヨーヨー・マの快刀乱麻ともいうべきボウイングの切れ味が素晴らしく、聴いていてヴァイオリンかとさえ思われるほどにチェロの重力から解放されたような抜群の運動性と躍動感を帯びたフレージングの運びから、ドヴォルザークの美しいメロディを朗々と歌い上げ、その呼吸の伸びやかなことやボウイングの自在なことなど、さすがにヨーヨー・マの十八番の演目という風格に満ちていました。ヨーヨー・マによる同曲の実演は2年前のヤンソンス率いるバイエルン放送響の来日公演でも聴きましたが、今回はマが何度も共演を重ねて以心伝心な関係を築いていると思われるジンマン/トーンハレ管との共演ということで2年前の公演の時よりも快刀乱麻ぶりに更に拍車が掛かったような印象さえありました。

このヨーヨー・マの演奏は確かに表現自体において突き抜けたものがあり、その限りではマならではの演奏表現と言うべきものでした。ただ前述のように私は2年前に彼の同曲の実演を耳にしていることから、確かに優れた演奏であってもそこからある種の斬新さというか、それこそ今まで聴いたことのないようなフレッシュな音楽の趣きを知覚するという類の演奏とは成り得ず、いわば良いものは何度聴いても良い、というべき類の演奏でした。

しかし後半のブラームス交響曲第2番に関しては、それこそ私にとって初めて耳にするかのような斬新な趣きに事欠かないという点において瞠目に値する演奏内容でした。それは限りなく贅肉を削ぎ落したスリムな響きから構築される深々とした情緒というアンビバレントな特性において驚くべき新鮮味を湛えた演奏であり、そのあたりのストイックなロマンティズムの趣きに聴いていてグッと惹き込まれました。

このブラームスで披歴されたジンマン/トーンハレ管のアプローチというのは、まず旋律描写に関しては原曲のロマン派作品としてのスタイルに十分な敬意を払い、テンポを細やかに切り替えつつメロディというメロディを粘着感のあるフレージング展開からウエットに歌い上げるという行き方でしたが、同時にハーモニーの構築においてはオーケストラ個々のパートの奏でる旋律的な濃度のバランスが絶妙な形で相対的にコントロールされており、ゆえに決して濃密過多にならず、アンサンブル全体が一定以上の音響的透過性をコンスタントに持続させ、このブラームスのシンフォニー本来の揺るぎない構築的迫力を聴き手に明確に意識させる、というものでした。

その結果この作品の魅力たっぷりの構成メロディの持ち味ならびに本格を極めた交響曲としての堂々たる構築感、これらが互いを阻害することなく並列的に共存共栄するという、かなり突き詰められた形での演奏が披歴されることになりました。往々にして交響的構築感が阻害される情緒重視型のアプローチとも、逆に往々にして情緒感が阻害される交響的構築感重視のアプローチとも一味ちがう、その意味においてジンマン/トーンハレ管ならではのブラームスがホールに現出するに至り、結果この作品の二面的な醍醐味を同時に耳にするような心地よい快感に聴いていて誘われました。

このような特異なアプローチを可能にしているのは第一にはミリ単位の精度でのアンサンブル展開さえ可能とするかのようなジンマンのオーケストラに対する統制力が隅々まで行き届いている点が大きいのではと思われますが、のみならずブラームスゆかりのオーケストラ(このオーケストラは1868年のオケ設立時からブラームスとの関係が深い)としての地力とかブラームスに対するオーケストラ自体の共感の強さなどが背景にあるのかもという気もします。いずれにしても当夜のブラームスは指揮者ジンマンの確かな見識に裏打ちされた卓抜した音楽設計とオーケストラの伝統的ポテンシャルとが一体となって奏でられたかのような素晴らしい演奏内容でした。

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