ジュリーニ/コヴェント・ガーデン王立歌劇場のロッシーニ「セヴィリャの理髪師」1960年ライヴの感想


ロッシーニ 歌劇「セヴィリャの理髪師」全曲
 ジュリーニ/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団
 ICAクラシックス 1960年ライヴ ICAC5046
ICAC5046

カルロ・マリア・ジュリーニ指揮コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団の演奏によるロッシーニの歌劇「セヴィリャの理髪師」全曲。ICAクラシックス。1960年5月のロンドン、ロイヤル・オペラ・ハウスでのライヴ。フィガロ:ローランド・パネライ、ロジーナ:テレサ・ベルガンサ、アルマヴィーヴァ伯爵:ルイジ・アルヴァ。

稀代のメゾソプラノ・ベルガンサの実力を一躍知らしめた記念碑的ライヴである。音質は鮮明とはいいがたいが、かなりオンマイクな音で、舞台の臨場感が生々しく伝わってくる。度肝を抜かれるのがパネライのフィガロで、最初の登場シーンのぶっとびぶりがハンパでない。こういう弾けまくった歌いぶりはセッション録音では耳に出来ない、まさにライヴのたまもの。伯爵のアルヴァは堂に入った歌唱で終始安定感がある。ベルガンサのロジーナは、歌唱自体の巧さにくわえ当時新進気鋭のメゾとしての初々しさが随所に舞台に華をもたらしている。ジュリーニ/コヴェント・ガーデンのアンサンブル展開も素晴らしい。ロッシーニに相応しい躍動感が全編に満ちている。

「サンソン・フランソワ EMI録音全集」CD36の感想

「サンソン・フランソワ EMI録音全集」CD36
 フランソワ(pf) 
 EMIクラシックス 1947~1970年 6461062
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①モーツァルト:ソナタ第4番
②ショパン:ソナタ第3番
③シューマン:子供の情景
④プロコフィエフ:ソナタ第7番
⑤リスト:ロシニョール
⑥ショパン:ワルツ第6番・第1番「華麗なる大ワルツ」

1964年パリ、サル・プレイエルでの収録。CD35の3日後の同じホールでのリサイタルだが、こちらの方がステレオ感が高く音質が少し良い。しかし演奏自体は全体的にいまいち良くない。音質の関係かもしれないがフランソワにしては迫力がない。プロコフィエフも含めて、CD35のショパン2番のような鬼気迫るものがほとんど感じられない。あるいは当日の調子が悪かったか。なおショパンのソナタ第3番は技術上の理由でフィナーレが収録されていない。

スクロヴァチェフスキ/NFMヴロツワフ・フィルによるルトスワフスキ交響曲第1番&管弦楽のための協奏曲の感想



ルトスワフスキ 交響曲第1番、管弦楽のための協奏曲
 スクロヴァチェフスキ/NFMヴロツワフ・フィル
 Cd Accord 2013年ライヴ ACD196
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スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮NFMヴロツワフ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるルトスワフスキの交響曲第1番、および管弦楽のための協奏曲。CDアコード。2013年5月ポーランド、ヴロツワフにおけるヴィトルド・ルトスワフスキ・フィルハーモニック・コンサート・ホールでのライヴ録音。

ルトスワフスキを知悉するミスターSならではの練達の演奏というべきか。交響曲第1番はガードナー、サロネンという強力な新譜が最近リリースされたが、こちらはライヴ録音ということもあるだろうが、それらスタジオ録りの録音よりも、より音楽が生々しく感じられるし、張り詰めた緊迫感の表現力なども、流石というほかない。

「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD21の感想


「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD21
 ハイフェッツ(vn) ピアティゴルスキー(vc)ほか
 RCA 1950~1968年 88725451452
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「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD21

・ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲第2番
 イスラエル・ベイカー(Vn)
 ジェイコブ・ラテイナー(P)
 ウィリアム・プリムローズ(Va)
・チャイコフスキー:弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」
 イスラエル・ベイカー(Vn)
 ポール・ロゼンタール(Vn),
 ミルトン・トーマス(Va)
 ローレンス・レッサー(Vc)

ドヴォルザークのピアノ五重奏曲第2番はCD14にも収録されているが、このCD21ではヴィオラ奏者のみが違っている。CD14はジョゼフ・ド・パスクァーレだったが、こちらはプリムローズ。他の4人は同じメンバーで、録音年も同じ。CD14の方は1964年の11月に、CD21の方は1964年の3月に、それぞれスタジオ録音されている。最初はCD21の方をリリースする予定が、なんらかの事情でリリースできなくなり、CD14の録音を取り直してリリースしたというところだろうか。演奏内容はCD14と同様に秀逸。まあ、ヴィオラ奏者が違うだけでレコーディング時期も近いので、大きな違いはない。チャイコフスキーの方は音質の毛色が他と随分と違う。ややオフ気味で残響たっぷりという独特の音質で、個々のパートの線の分離が弱いかわりに、分厚いハーモニーとしての音の迫力が尋常でない。第1楽章の最後のあたりなど凄い表出力で圧倒させられる。

ロイス/カペラ・アムステルダムによるプーランクのスターバト・マーテルの感想


プーランク スターバト・マーテル、テネブレの7つの応唱
 ロイス/カペラ・アムステルダム
 ハルモニア・ムンディ 2012年 HMC902149
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ダニエル・ロイス指揮カペラ・アムステルダムの合唱によるプーランクのスターバト・マーテル、およびテネブレの7つの応唱。仏ハルモニア・ムンディ。2012年エストニアでのセッション録音。ソプラノはキャロリン・サンプソン。オーケストラ演奏はエストニア国立交響楽団。

この曲の最近リリースされたCDと比べると、ドゥネーヴ/シュトゥットガルト放送交響楽団の録音が速めのテンポ、パーヴォ・ヤルヴィ/パリ管弦楽団の録音が標準的テンポで、このロイス盤が最もテンポが遅い。もともと合唱メインの録音でもあるので、声の奥行きが非常に丁寧に描き出されている印象を受ける。響きの感触は無色透明というべきか。前記2盤ほどはオケの音の個性が立っていないが、強弱のメリハリはしっかりしている。、宗教曲演奏のエキスパートならではの録音だろう。

「サンソン・フランソワ EMI録音全集」CD33の感想

「サンソン・フランソワ EMI録音全集」CD33
 フランソワ(pf) 
 EMIクラシックス 1947~1970年 6461062
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フランソワEMI録音全集CD33

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番

デイヴィッド・ジンマン指揮フランス国立放送管弦楽団の伴奏である。フランソワ最晩年のライヴ。フランソワにしては全体的にピアニズムが穏健であり、枯れた味わいの演奏となっている。音質は良好。

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第5番

ロリン・マゼール指揮フランス国立放送管弦楽団の伴奏である。若きマゼールとの貴重な共演だが、モノラルの音質が平板なのがもったいない。この5年後のスタジオ録音が音質優秀だけに残念。ピアニズム自体の切れはスタジオ盤を凌ぐかというくらい良い。

フランク:交響的変奏曲

アンドレ・クリュイタンス指揮フランス国立放送管弦楽団の伴奏である。作品の性格ゆえかピアノの表出力がいまひとつ伸びない。しかし53年のライヴにしては音質がいい。上記のプロコもこれくらいの音質で聴きたかったが、、。

「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD20の感想


「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD20
 ハイフェッツ(vn) ピアティゴルスキー(vc)ほか
 RCA 1950~1968年 88725451452
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「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD20

シューベルト:ピアノ三重奏曲第2番
 ジェイコブ・ラテイナー(P)
ブラームス:ピアノ三重奏曲第2番
 レナード・ペナリオ(P)
 
65年と63年の録音。演奏は2曲とも素晴らしい。シューベルトの方はハイフェッツ晩年の録音ながら、第2楽章中盤の山場など、往年の凄味をほとばしらせていて感嘆させられる。ブラームスのピアノ三重奏曲第2番はアンサンブルのこなれ具合に堂に入ったものを感じる。すでに多くの共演を重ねた名手3人による意気の合った掛け合いが秀逸である。このピアノ・トリオはブラームスの最盛期に作曲されているだけに一分の隙もない構成美を備えているが、こういう優れた録音で耳にすると、あらためて希有の名曲だと認識させられる。

キタエンコ/ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団によるチャイコフスキー交響曲第7番の感想


チャイコフスキー 交響曲第7番、ピアノ協奏曲第3番
 キタエンコ/ケルン・ギュルツェニヒ管、ジルベルシテイン(pf)
 エームス 2012・2013年 OC672
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ドミトリー・キタエンコ指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団の演奏によるチャイコフスキー交響曲第7番(ボガティレフ補筆完成版)およびピアノ協奏曲第3番(ピアノ・ソロ:リーリャ・ジルベルシテイン)。独エームス。2012・2013年ケルン、フィルハーモニーでのセッション録音。

2曲とも録音自体が少なく競合盤もあまりないが、それを差し引いても本CDは名演だろう。キタエンコ/ケルン・ギュルツェニヒのヴァイタリティあふれるアンサンブル展開の味の濃い響きが素晴らしい。とくに交響曲第7番の第1楽章第2テーマにおけるむせ返るような旋律美など聴いていて素直に唸らされてしまう。ジルベルシテインの闊達なピアノ・ソロも秀逸である。

ミケランジェリの1975年グランジュ・ドゥ・メレでのライヴの感想

「ミケランジェリ グランジュ・ドゥ・メレ ライヴ」
 ミケランジェリ(pf)
 Altus 1975年ライヴ ALT272
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アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの1975年グランジュ・ドゥ・メレでのライヴ。Altus。1975年フランス、トゥレーヌ音楽祭でのライヴ録音。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第12番、シューベルトのピアノ・ソナタ第4番、ドビュッシーの映像より3曲、ショパンのピアノ・ソナタ第2番。

音質に問題がありすぎる。最初のベートーヴェンからノイズレベルのあまりの高さにのけぞる。ボリュームを上げるとノイズが大いに耳ざわりな上、ピアノの音像もボケ気味で、フレーズが聴きとりにくいことこの上ない。75年の録音とはちょっと思えない音質で、あるいは会場での隠し録りのたぐいか。いちおう正規盤だが、これはミケランジェリ自身おそらくリリースを許可しなかっただろうと思われる。

ミケランジェリとチェリビダッケ/フランス国立放送管弦楽団によるベートーヴェンの皇帝の感想


ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
 ミケランジェリ(pf) チェリビダッケ/フランス国立放送管
 Altus 1974年ライヴ ALT274
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アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリのピアノ演奏とセルジュ・チェリビダッケ指揮フランス国立放送管弦楽団の伴奏によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。Altus。1974年シャンゼリゼ劇場でのコンサートのライヴ録音であり、当日演奏されたブラームスの悲劇的序曲も収録されている。

最初のブラームス・悲劇的序曲から度肝を抜かれる。アンサンブルの充実度がすこぶるつきで、実にド迫力だが、それでいて副声部の浮き出しも抜かりなく、重層的にアンサンブルを鳴らし切る指揮者の手腕が素晴らしい。続く「皇帝」はミケランジェリの披歴する妖刀のような切れ味のピアニズムが圧巻である。「皇帝」を得意としたミケランジェリの真骨頂ここにありというべきか。

「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD19の感想


「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD19
 ハイフェッツ(vn) ピアティゴルスキー(vc)ほか
 RCA 1950~1968年 88725451452
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・ブラームス:弦楽五重奏曲第2番
 イスラエル・ベイカー(Vn)
 ポール・ロゼンタール(Va)
  ミルトン・トーマス(Va)
・ベートーヴェン::ピアノ三重奏曲第6番
  レナード・ペナリオ(P)

68年と63年の録音。ブラームス最後の大曲として知られる弦楽五重奏曲第2番に、ベートーヴェンのOp.70-1「幽霊」の影に埋れがちなピアノ三重奏曲第6番Op.70-2という組み合わせ。演奏はまずまずだが、ブラームスは冒頭のチェロの出が弱すぎるのが気になったり、いまひとつ音楽の押しが弱い。ベートーヴェンは全体的にピアノ・パートをもう少し強く弾いた方が、よりベートーヴェンらしくなるように思う。

「サンソン・フランソワ EMI録音全集」CD28の感想

「サンソン・フランソワ EMI録音全集」CD28
 フランソワ(pf) 
 EMIクラシックス 1947~1970年 6461062
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リスト:ハンガリー狂詩曲第6番~第15番

53・54年録音にしては音質が上等で往年の名手の片鱗は聴けるが、やはり音質的限界があるのも事実である。リストのハンガリー狂詩曲は概して序奏、テンポの遅い「ラッサン」、テンポの速い「フリスカ」というチャールダーシュ形式をとっているが、フランソワの演奏は概ねフリスカの部分が充実している。

「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD16の感想


「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD16
 ハイフェッツ(vn) ピアティゴルスキー(vc)ほか
 RCA 1950~1968年 88725451452
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・モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番
 イスラエル・ベイカー(Vn)
 ウィリアム・プリムローズ(Va)
 ヴァージニア・マジェフスキ(Va)
・メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第2番
 レナード・ペナリオ(P)

64年と63年の録音。2曲とも平均的レベルの演奏というところか。絶好調とまではいかないが悪くもない。音質がモーツァルトの方がオン気味だが、少し音が荒れている気もする。メンデルスゾーンの方は聴き易い音質。モーツァルトの弦楽五重奏曲は6曲あるが第1番変ロ長調K.174はディベルティメントだし第2番ハ短調K.406はセレナーデの改作なので第3番ハ長調K.515以降の4曲が実質的なジャンル作品だが、ときどき第2番ハ短調K.406を弦楽五重奏曲第4番と呼ぶ場合があるのでややこしい。この場合ハ長調K.515は第2番に、ト短調K.516は第3番に繰り上がる。

「サンソン・フランソワ EMI録音全集」CD25の感想

「サンソン・フランソワ EMI録音全集」CD25
 フランソワ(pf) 
 EMIクラシックス 1947~1970年 6461062

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ベートーヴェンのソナタ第23番「熱情」。音自体の表出力には惹かれるが、第1楽章の異様に勿体ぶったスローテンポなど、どうにも聴いていて違和感ありすぎ。終楽章のテンポ取りも異様としか言いようがない。フランソワのベートーヴェンに対する覚めた感情が伝わるようだ。シューマン「謝肉祭」。冒頭から快調なピアニズム。冴えない音質でよく健闘しているというべきか。 「蝶々」 も悪い演奏ではないが、音質が良くないので演奏の良さが十分に伝わらない。交響的練習曲は「蝶々」「謝肉祭」より音質がマシ。フランソワとしては標準的な演奏内容である。

「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD15の感想


「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD15
 ハイフェッツ(vn) ピアティゴルスキー(vc)ほか
 RCA 1950~1968年 88725451452
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・ブラームス:ピアノ四重奏曲第3番
 サンフォード・ションバッハ(Va)
 ジェイコブ・ラテイナー(P)
・ボッケリーニ:チェロ・ソナタニ長調
・エルンスト・トッホ:ディヴェルティメントOp.37-2

64年と65年の録音。ブラームスは良くない。演奏自体は立派だと思うが、オフ気味のモヤッとした音質が問題。品の良い音質といえば言えるが、全体的に音に力を感じにくい。これがボッケリーニになると、一転して鮮やかな音質が耳を楽しませる。この音質で、ブラームスも録ってほしかった。トッホも名演。音質はボッケリーニと同レベルで、名手二人の器楽的アクティヴィティが鮮烈に捉えられている。

「サンソン・フランソワ EMI録音全集」CD21の感想

「サンソン・フランソワ EMI録音全集」CD21
 フランソワ(pf) 
 EMIクラシックス 1947~1970年 6461062
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オール・ドビュッシー。映像は全体的に弱音の音色がノイズに埋もれがちなのが残念だが、強音の凛とした響きに惹かれる局面も多い。マスクと練習曲の方は高音質。ともにストレートにピアニズムの切れがものを言い、フランソワ会心のドビュッシーを聴ける。夢想はフランソワの死の3日前、英雄の子守歌は死の2日前の録音。まるでレクイエムのような趣きである。

ガードナー/BBC交響楽団によるウォルトンの交響曲第1番の感想


ウォルトン ヴァイオリン協奏曲、交響曲第1番
 ガードナー/BBC交響楽団、リトル(vn)
 シャンドス 2013・2014年 CHSA5136
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エドワード・ガードナー指揮BBC交響楽団によるウォルトンの交響曲第1番。英シャンドス。2014年2月クロイドン、フライアーフィールド・ホールでのセッション録音。同じくウォルトンのヴァイオリン協奏曲も収録されており、こちらは2013年ワトフォード・コロッセウムでのセッション。ヴァイオリン独奏者はタスミン・リトルが務めている。

交響曲はガードナーの演奏らしくシャキシャキと切れのあるアンサンブル展開からド迫力で鳴らされるオケの充実ぶりが目覚ましい。この曲にはラトル/バーミンガムの強力盤があるが、こちらのガードナー/BBC響の方が僅かに上かとも思える。ヴァイオリン協奏曲はもともとハイフェッツを想定して書かれた超難曲だが、リトルのボウイングは流石というべきか。第2楽章のテクニックが素晴らしい。

「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD12の感想


「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD12
 ハイフェッツ(vn) ピアティゴルスキー(vc)ほか
 RCA 1950~1968年 88725451452
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・アレンスキー:ピアノ三重奏曲第1番
 レナード・ペナリオ(P)
・ヴィヴァルディ:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲変ロ長調
 室内管弦楽団, マルコム・ハミルトン(Cemb)
・マルティヌー:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲第1番
 
63年と64年の録音。アントン・アレンスキーはリムスキー=コルサコフに作曲を習い、ラフマニノフの作曲の師でもある。その代表作がピアノ三重奏曲第1番だが、ここではオン気味の良好な音質から名手3人の闊達な掛け合いが素晴らしく、作品自体の価値を押し上げることに成功している。この曲は第3楽章のエレジー(チャイコフスキーの影響が強いといわれる)が有名だが、この演奏では少し素気ない。むしろ他の楽章の器楽的アクティヴィティを聴くべき。終楽章がすごい。ヴィヴァルディはデータによるとCD11のローザと同じ時期にロサンゼルスで録音されており、音質はローザ同様に良好。演奏も素晴らしい。ヴィヴァルディの協奏曲がベートーヴェンやブラームスの協奏曲と同様の様式で録音されていた時代の幸福な記録がここにある。最後の曲はマルティヌーが1927年に作曲した小品で、ヴァイオリンとチェロとのデュオ曲というのは珍しい。名手二人の丁々発止の掛け合いに惹きつけられる。

ハンガリー四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲全集CD7の感想


ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集CD7
 ハンガリー四重奏団
 Regis 1953年 RRC7011
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15番が掛け値なしの名演である。これは音質が同全集中ベストなのが追い風となっており、このカルテットならではの味わい深いフレージング展開の魅力が全編に充溢している。とくに第3楽章の素晴らしさが際立っている。このカルテットの真価を記録した録音といえるだろう。16番の方は、15番と比べると多少落ちるが、演奏・音質とも同全集中では標準的なレベルである。

ハンガリー四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲全集CD6の感想


ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集CD6
 ハンガリー四重奏団
 Regis 1953年 RRC7011
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12番の音質が冴えており、この音質はCD7の15番と並んで同全集中ベスト。おかげでハンガリー四重奏団の往年の響きの充実が良く伝わってくる。このカルテットの真価を伝えるという点で、この12番と15番の録音は貴重な記録だと思う。14番は12番ほど音質が冴えていないのが残念だが、このカルテットらしい骨太の濃厚な響きの味わいは伝わってくる。

ハンガリー四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲全集CD5の感想


ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集CD5
 ハンガリー四重奏団
 Regis 1953年 RRC7011
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第13番と大フーガ、ともにこのアンサンブルの味の濃い響きの魅力は随所に出ている。その意味では好演とも思うが、全体的にフレーズの切れに乏しく、音が密集するとボッテリした響きとなってしまうのが、どうにも気になる。音質の問題も大きいと思うが、あるいは、このカルテット自体の技術的限界点なのかもしれない。当時の水準からすると確かに健闘してはいるのだが、、、

ハンガリー四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲全集CD4の感想


ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集CD4
 ハンガリー四重奏団
 Regis 1953年 RRC7011
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このCD4は曲ごとに音質のムラが大きく、それが印象を大きく左右している。最初のラズモフスキー第3番は比較的オン気味に収録されており、アンサンブルの絡み合いが活き活きと伝わってくる。とくに終楽章のバイタリティは素晴らしい。続く「ハープ」はオフ気味だが、音質自体は鮮明で、このカルテットの標準的レベルでの味の濃い演奏が聴ける。問題は最後の「セリオーソ」で、オフ気味のうえに音がブカブカで鮮明さに欠け、どうにもパリッとしない音質となっている。

ハンガリー四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲全集CD3の感想


ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集CD3
 ハンガリー四重奏団
 Regis 1953年 RRC7011
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ラズモフスキー第1番がいまいち。この全集ボックスの音質の特徴である「高弦鮮明・低弦ぼんやり」が完全に裏目に出てしまった感がある。第1楽章冒頭のチェロの味の薄さにガクッとくるし、以降の楽章も肝心なところでチェロが弱いので音楽の訴えが伸びない。高弦はパリッとしているだけに勿体ない。ラズモフスキー第2番の方はまずまずなのだが、、。

ハンガリー四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲全集CD2の感想


ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集CD2
 ハンガリー四重奏団
 Regis 1953年 RRC7011
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弦楽四重奏曲第4番から第6番の3曲を収録。いずれも古典的造型のアンサンブル展開に基づく正攻法の解釈だが、これと同じ時期に録音されたブダペスト四重奏曲の録音と比べると全体的にアダージョは遅め、メヌエットは速め、というテンポが採られていることが分かる。緩急のメリハリ効果が自然な形で表現された味の濃いベートーヴェンというべきか。

ハンガリー四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲全集CD1の感想


ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集CD1
 ハンガリー四重奏団
 Regis 1953年 RRC7011
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弦楽四重奏曲第1番から第3番の3曲を収録。英レジスの復刻だが、年代にしてはノイズがかなり少ないが、そのぶん音質の彫りも甘くなっている感もあり、一長一短か。演奏はオーソドックスな古典的造型のアンサンブル展開だが、ヴァイオリンの訴求力が全体的に高い。逆に低声の実在感が相対的に弱いが、これは音質の問題かもしれない。ハンガリー四重奏団の全盛期の味の濃いベートーヴェンである。

「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD11の感想

「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD11
 ハイフェッツ(vn) ピアティゴルスキー(vc)ほか
 RCA 1950~1968年 88725451452
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・ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第1番
 ジェイコブ・ラテイナー(P)
・ハイドン:チェロと管弦楽のためのディヴェルティメント
 ジェイコブ・ラテイナー(P)
・ローザ:協奏交響曲Op.29~主題と変奏
 室内管弦楽団

63年と64年の録音。ベートーヴェンはラテイナーのピアノが少し弱いが弦の二人の弾き回しは相変わらず冴えている。ハイドンはベートーヴェンよりオン気味で潤いのある音質。ピアティゴルスキーのチェロの奥深い響きがいい。ミクロス・ローザはハンガリーの作曲家でハンガリーの民謡を巧みに取り入れた作風で知られる。ここに収録されているのはローザの「ヴァイオリンとチェロのための協奏交響曲 op.29」全3楽章のうちの第2楽章のみ。演奏は全体的に秀逸なので全楽章録音でないのが残念である。

「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD5の感想


「ハイフェッツ&ピアティゴルスキー RCA室内楽録音全集」CD5
 ハイフェッツ(vn) ピアティゴルスキー(vc)ほか
 RCA 1950~1968年 88725451452
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・ベートーヴェン:・弦楽三重奏のためのセレナードOp.8
 ウィリアム・プリムローズ(Va)
・コダーイ:・二重奏曲 Op.7

いずれも60年の録音。ベートーヴェンはDisc3&4と比べると演奏、音質ともに一層こなれてきた感がある。ベートーヴェン作品としては食い足りない曲だが、これだけ名手の揃った演奏だと、やはり謹聴してしまう。コダーイの方はベートーヴェンよりグッとオンマイクに録られている。この二重奏曲は最近リリースのリザ&フェルシュトマンのCDでも聴いたが、こちらのハイフェッツ&ピアティゴルスキーの方が第1・第2楽章ともに1分以上も短く、それだけテンポが速い。それだけテクニックの凄味が強調されているが、そのぶんザッハリヒな印象も強い。

オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団によるチャイコフスキー交響曲全集&管弦楽作品集の感想


チャイコフスキー 交響曲全集&管弦楽作品集
 オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団
 ソニー・クラシカル 1958~1976年 88883737162
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ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団によるチャイコフスキー交響曲全集&管弦楽作品集。

・交響曲第1番「冬の日の幻想」・第2番「小ロシア」
フィラデルフィア・サウンドというのかオーマンディ・サウンドというのか、なんともゴージャスな音響美の充溢する演奏で、チャイコフスキーの一連の交響曲の中でも1番と2番あたりだとダイレクトにオケの美質が活きる感がある。

・交響曲第3番「ポーランド」&弦楽セレナーデ
「ポーランド」は第1楽章序奏部の音質が何かザラついてる感じで、主部に入っても音がパリッとしない。このせいか、オケの響きも少しモッサリしているように聴こえる。しかし楽章が進むにつれて音が冴えていき、終楽章はフィラデルフィア管の美麗なサウンドが存分に発揮されていて秀逸。弦セレはポーランドよりもかなりオン気味で、鮮明だが、ふくよかさに欠けるきらいもある。アンサンブルは流石に上質で、オケの特性も音楽に良くフィットしている。

・交響曲第4番&1812年ほか
交響曲第4番は冒頭のトランペットの芝居がかった吹き回しにのけぞる。音楽のエンターテイメントな側面を印象づけられ、以降もリッチなフィラデルフィア・サウンドの威容を前面に押し出した、きらびやかな演奏が展開される。耳当たりの良い、美麗な響きの美しさには傾聴させられるが、このくらいの後期作品ともなると、いまひとつ陰影不足かとも思ってしまう。「1812年」は音質がパッとせず迫力不足。他の埋め草2曲はムードチックな楽想なのでオケの特性に合う。

・交響曲第5番&スラヴ行進曲&イタリア奇想曲
この交響曲第5番はこのコンビとしては会心の演奏という感じがする。少なくとも同じセットの交響曲第1番から第4番の録音よりも格段に音の訴求力が高い。上質なフィラデルフィア・サウンドというだけでなく、内的な充実に満ちたチャイコフスキーの名演。終楽章など圧巻としかいいようがない。スラヴ行進曲とイタリア奇想曲はいまいち音が冴えない。

・交響曲第6番「悲愴」&フランチェスカ・ダ・リミニ
この「悲愴」は名演というほかなく、 同じセットの交響曲第5番と甲乙つけがたい。音質に少しムラがあるが、全体的にアンサンブルの充実感が並みでない。弦の冴えていること。フィラデルフィア・サウンド絶好調の壮麗なチャイコフスキーというべきか。フランチェスカ・ダ・リミニも悪くないが、「悲愴」のあとで聴くと少し聴き劣りがしてしまう。

・交響曲第7番&ロココ主題変奏曲
交響曲第7番はキワモノとはいえ聴いていると随所にチャイコフスキーの他のシンフォニーの残滓が垣間見れる。第1楽章は全体的に「悲愴」第3楽章に楽想が似ているし、第2楽章の後半の盛り上がりは第5交響曲の第2楽章に雰囲気が近い。第3楽章は初期の交響曲のスケルツォのムードがするし、終楽章は交響曲第4番の終楽章の再来というべきか。演奏はロココ主題変奏曲ともども、オケの特性を活かした甘美な響きに仕上げられている。

・マンフレッド交響曲
名演。このセットのチャイコフスキー交響曲全集は第5と「悲愴」、このマンフレッド交響曲の3曲が飛び抜けて素晴らしい。基本的にはオーマンディ/フィラデルフィアらしい厚みのあるリッチなサウンドの利を活かした正攻法の行き方だが、全体にオケの表出力が充実を極め、ことに終楽章など、畳み掛けるような弦の迫力といい、強力無比な金管の咆哮といい、聴いていて惹きこまるばかりだ。

・ピアノ協奏曲第1番
 テッド・ジョセルソン(P)
・ピアノ協奏曲第2番
 ゲイリー・グラフマン(P)   
両曲ともに名手のピアニストをソロに立てての華やかな演奏で、オーソドックスな解釈ながら絢爛な響きで音楽の魅力を引き出すことに成功している。協奏曲第2番は音が少し硬いが、ピアニズムの切れが素晴らしい。外面的な音楽だが、こういった名手のピアノで聴くと素直に惹きこまれてしまう。

・ピアノ協奏曲第3番
 ゲイリー・グラフマン(P)  
音質面で少し弱いが、やはりグラフマンの練達のピアニズムが素晴らしい。展開部後半あたりの指さばきなど、超人的ですらある。しかしオーマンディ/フィラデルフィアのバックは全体に音がモッサリしているが、音質のせいか? ちなみにこの協奏曲第3番は同じセットに含まれている交響曲第7番の改作として知られる曲。冒頭ファゴットで出る第1主題など交響曲第7番の最初の主題とまったく同じだ。

・バレエ音楽「白鳥の湖」~ハイライト
さすがにフィラデルフィア・サウンドの音響美というべきか。こういう作品を演奏させたら天下一品。多分に外面的な響きであり、陰影に欠けるが、作品のカラーに対しての相性は抜群にいい。

・バレエ音楽「眠れる森の美女」~ハイライト
これは素晴らしい。オケの特性と曲との相性がバッチリというのか、見事なまでの音響美に酔わされてしまう。同じチャイコのバレエ音楽でも前年録音の「白鳥の湖」よりもこちらの方が音楽的に上だと感じた。いずれにせよ、このコンビのベスト録音のひとつだろう。

・バレエ音楽「くるみ割り人形」~ハイライト&幻想序曲「ロメオとジュリエット」
 「くるみ割り人形」はかなりいい演奏なのだが、「眠れる森の美女」のあとで聴くと少し聴き劣る感もある。とはいえ、このコンビの本領がいかんなく発揮された美演というべきだろう。「ロメオとジュリエット」は、随分もったいぶったテンポの割りにはオケの鳴りっぷりがベストと言い難く、いささか中途半端な演奏に終始している。

ゲルバー&デッカー/ミュンヘン・フィルによるブラームスのピアノ協奏曲第1番の感想


ブラームス ピアノ協奏曲第1番
 ゲルバー(pf) デッカー/ミュンヘン・フィル
 Warner 1965年 2564635354
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ブルーノ・レオナルド・ゲルバーのピアノとフランツ=パウル・デッカー指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の伴奏によるブラームスのピアノ協奏曲第1番。1965年ミュンヘンでのセッション録音。

決め手に欠ける感も否めないが、演奏自体は悪くない。若きゲルバーの本格派ピアニズムの才は全体的に良く発揮されており、揺るぎない安定感と構成力に傾聴させられる。フランツ=パウル・デッカー/ミュンヘン・フィルがなかなかに味の濃い伴奏を展開している点も好感的だが、マイクがオフめなのが残念。ヘンデル主題変奏曲の方は70年代の録音のようだが、音質的には協奏曲のそれよりも落ちる感が否めず、全体にタッチの音がキリッとしていない。

ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団によるマーラーの交響曲「大地の歌」の感想


マーラー 交響曲「大地の歌」&ブゾーニ 悲歌的子守歌
 ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
 RCA 2012年 88765438152
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デイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の演奏によるマーラーの交響曲「大地の歌」。RCA。2012年チューリッヒ、トーンハレでのセッション録音。メゾ・ソプラノがスーザン・グラハム、テノールがクリスティアン・エルスナー。

これまでのジンマン/トーンハレのマーラー録音は概ねオフ気味の引いたマイクによる俯瞰的な音像感が良くも悪くも顕著だったが、この大地の歌は、かなりオン気味に録られていて驚かされる。冒頭から金管の訴求力が素晴らしい。オン気味の音の迫力に加えこのコンビならではの稠密的なアンサンブル展開の生み出す情報量も抜群ときており、聴きごたえ満点のマーラーだ。ヘルデンテノールとリリコ・メゾのメリハリも特徴的。ブゾーニは弱音メインながら不思議な緊張感が出ているが、やはりアンサンブルの緻密な音の描き出しの賜物だろう。

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