マゼール/フィルハーモニア管弦楽団によるマーラー交響曲第1番「巨人」&第2番「復活」&第3番の感想


マーラー 交響曲第1番「巨人」&第2番「復活」&第3番
 マゼール/フィルハーモニア管弦楽団
 シグナム 2011年ライヴ SIGCD360
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ロリン・マゼール指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏によるマーラー交響曲第1番「巨人」&第2番「復活」&第3番。英シグナム。2011年ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライヴ録音。

交響曲第3番の演奏が素晴らしく、この曲でこれほど荘厳な雰囲気を湛えた演奏というのも珍しい。マゼール特有のスローテンポをベースとするアンサンブルの粛然とした歩の進め方がユニークを極めており、なにか宗教音楽みたいな趣きを聴いていて感じさせる。ライヴゆえのピッチの甘さが随所に聞かれるが、それも演奏のリアリティを高めているように思えてくるから面白い。いずれにしても、これほどの雄大なスケールのマーラーはひさびさに耳にした。音質も上々。交響曲第2番「復活」も悪くはないが上記第3番の録音よりは表出力が弱い印象を受ける。こちらの方が、ややマイクが引き気味か。演奏はマゼールらしいスローテンポの雄大な音楽の流れを印象づける行き方。巨匠風マーラーの代表格的演奏というべきか。交響曲第1番「巨人」は全体的にテンポが平均より少し遅めにしろ、マゼールにしては穏健な速度だが、随所でフレージングに粘着力を持たせたり、パウゼを強調したりと、独自の構成が伺われる。フィルハーモニア管のアンサンブルもパリッとしていて、金管が気持ち良いほど良く鳴っている。ただマイクがオフ気味で、響きが拡散傾向なのが気になった。

パーヴォ・ヤルヴィ/パリ管弦楽団によるプーランクの宗教作品集の感想


プーランク 宗教作品集
 パーヴォ・ヤルヴィ/パリ管弦楽団
 グラモフォン 2012・2013年 4791497
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パーヴォ・ヤルヴィ指揮パリ管弦楽団の演奏によるプーランクの宗教作品集。独グラモフォン。2012年・2013年パリ、サル・プレイエルでのセッション録音。収録曲は「グローリア」「黒衣の聖母への連祷」およびスターバト・マーテル。ソプラノ歌唱はパトリシア・プティボン。

パリ管の持つアンサンブルの美しさとプティボンの神秘的なまでに美しい歌唱とが放つ音楽の美彩が素晴らしい。弱奏部の冴え冴えとした美しさなど、やはり最新録音の音質の良さがダイレクトに発揮されていて好ましい。スターバト・マーテルには味の濃いプレートル盤、ドゥネーヴ/シュトゥットガルト放送響の色彩的メリハリの強さなどが印象的だが、このヤルヴィとパリ管のスターバト・マーテルはプーランク本家のオケならではの醍醐味が印象深い。

ギレリスの1976年ザルツブルク音楽祭ライヴの感想

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第12番・第16番ほか
 ギレリス(pf)
 オルフェオ 1976年ライヴ ORFEOR883132
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エミール・ギレリスのピアノ演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第12番&第16番。独オルフェオ。1976年ザルツブルク音楽祭でのライヴ録音。ベートーヴェンの2つのソナタのほかシューマンのトッカータOp.7とアラベスクOp.18およびブラームスの4つのバラードOp.10も収録されている。

全体的にギレリス晩年のタッチの硬質性が醸し出す音楽の内省的味わいが良く出ている。ベートーヴェンの16番は、あまりベートーヴェンらしくない楽想だが、ギレリスで聴くと、その荘厳な音楽の佇まいはやはりベートーヴェンという感じがする。12番ソナタは第3楽章の緊張感が素晴らしい。シューマンとブラームスも求心力のあるタッチから音楽の厳しい様相を照らし出していて聴いていて身が引き締まる。

フランソワ=フレデリク・ギィによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番・第31番・第32番の感想


ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第30番・第31番・第32番
 フランソワ=フレデリク・ギィ(pf)
 Zig-zag 2009~2012年ライヴ ZZT333
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フランソワ=フレデリク・ギィの演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番・第31番・第32番。仏ジグ・ザグ・テリトワール。2009~2012年フランス、アルセナル・コンサートホールでのライヴ録音。

フランス人ピアニストならではの音色の香気と卓抜した造形力とを併有する希有のベートーヴェンというべきか。洗練された美しいタッチが作品の幻想的な奥行きを強調し、知的な構成力がベートーヴェンのロジカルな迫力を押し出していく。構成的でありながら幻想的。ベートーヴェン晩年の作品の不可思議な二面性を垣間見る思いがする。

フランソワ=フレデリク・ギィによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第26番「告別」・第27番・第29番「ハンマークラヴィーア」の感想



ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第26番「告別」・第27番・第29番「ハンマークラヴィーア」
 フランソワ=フレデリク・ギィ(pf)
 Zig-zag 2009~2012年ライヴ ZZT333
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フランソワ=フレデリク・ギィの演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第26番「告別」・第27番・第29番「ハンマークラヴィーア」。仏ジグ・ザグ・テリトワール。2009~2012年フランス、アルセナル・コンサートホールでのライヴ録音。

3曲とも素晴らしいが、とくに「ハンマークラヴィーア」は圧巻。粒立ちの際立った美しいタッチから構築される荘厳なベートーヴェン。音色に対する卓抜した感性と優れた造型的構成力を併せ持つピアニストのみになしうる演奏というべきか。音質も秀逸である。

フランソワ=フレデリク・ギィによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第1番・第2番・第3番の感想


ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第1番・第2番・第3番
 フランソワ=フレデリク・ギィ(pf)
 Zig-zag 2009~2012年ライヴ ZZT333
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フランソワ=フレデリク・ギィの演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第1番・第2番・第3番。仏ジグ・ザグ・テリトワール。2009~2012年フランス、アルセナル・コンサートホールでのライヴ録音。

演奏自体は悪くないとも思うが、ベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタ群はやはり解釈が難しいという事実も意識させる。ベートーヴェンというよりハイドンやモーツァルトのようなアプローチが合うようにも思うし、グルダなどはそれで成功しているが、ここでのギィの解釈はなにか煮え切らない。中途半端に造型をいじるよりは、もっとストレートに弾き通した方が個人的にはいいと思うが、、、。なお、第1ソナタの第1楽章と終楽章のみ展開部反復を行っている。

フランソワ=フレデリク・ギィによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」・第25番・第24番「テレーゼ」・第28番・第22番の感想


ベートーヴェン ピアノソナタ第23番「熱情」・第25番・第24番「テレーゼ」・第28番・第22番
 フランソワ=フレデリク・ギィ(pf)
 Zig-zag 2009~2012年ライヴ ZZT333
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フランソワ=フレデリク・ギィの演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタピアノ・ソナタ第23番「熱情」・第25番・第24番「テレーゼ」・第28番・第22番。仏ジグ・ザグ・テリトワール。2009~2012年フランス、アルセナル・コンサートホールでのライヴ録音。

これは素晴らしい。ギィによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の6枚めになるが、音質が5枚めまでより明らかに良い。ダイナミックレンジの狭さが解消されており、強音のソノリティが伸び伸びと響いている。音質がいいとギィのアプローチがダイレクトに追い風になり、ベートーヴェンの中後期のソナタ特有の内省的ロマンティズムにピアニズムの美質が端的にフィットしていて、実に聴き映えがする。「熱情」でのキリッと冴えた弾き回しにも惹きこまれるが、圧巻は第28番。これほどの幻想美がこのソナタに内蔵されていようとは! 

フランソワ=フレデリク・ギィによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第16番・第17番「テンペスト」・第18番の感想



ベートーヴェン ピアノソナタ第16番・第17番「テンペスト」・第18番
 フランソワ=フレデリク・ギィ(pf)
 Zig-zag 2009~2012年ライヴ ZZT333
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フランソワ=フレデリク・ギィの演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第16番・第17番「テンペスト」・第18番。仏ジグ・ザグ・テリトワール。2009~2012年フランス、アルセナル・コンサートホールでのライヴ録音。

第16番と第18番に関しては名演だと感じる。両曲ともベートーヴェンにしては喜悦的な楽想であり、深刻味が相対的に薄いが、いずれもギィの展開するロマン派ライクなアプローチに良くフィットしていて新鮮な趣きを伺わせる。第16番は最近ギレリスのCDで聴いたばかりだが、タイムを比べてみるとギィの方がギレリスより第2楽章が長く終楽章が短い。それだけテンポの緩急差を強調した解釈だが、それが作品の朗らかな雰囲気を強調することにも成功している。第18番も同様で、とくに第3楽章でのルバートを多用した行き方がフレッシュ。テンペストはいまいちか。洗練されたタッチだが、いかんせん起伏力が大人しい。

フランソワ=フレデリク・ギィによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第15番「田園」・第19番・第20番・第21番「ワルトシュタイン」の感想



ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第15番「田園」・第19番・第20番・第21番「ワルトシュタイン」
 フランソワ=フレデリク・ギィ(pf)
 Zig-zag 2009~2012年ライヴ ZZT333
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フランソワ=フレデリク・ギィの演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第15番「田園」・第19番・第20番・第21番「ワルトシュタイン」。仏ジグ・ザグ・テリトワール。2009~2012年フランス、アルセナル・コンサートホールでのライヴ録音。

フランス人ピアニストならではのベートーヴェンというべきか。高度の磨きあげられたタッチの音色が紡ぐフレーズの連なりに耳を傾けていると、精巧なガラス細工の工芸品のような格調と美しさをイメージさせられてしまう。「ワルトシュタイン」はバックハウスのゴツゴツしたピアニズムとは対極点にある行き方。いやはや。

セル/チェコ・フィルによるドヴォルザーク交響曲第8番(1969年ルツェルン・ライヴ)の感想

ドヴォルザーク 交響曲第8番
 セル/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
 Audite 1969年ライヴ AU95625
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ジョージ・セル指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるドヴォルザーク交響曲第8番。独Audite。1969年ルツェルン音楽祭でのライヴ録音。ほかにジョージ・セル指揮ルツェルン祝祭管弦楽団の演奏によるブラームス交響曲第1番も収録されている。こちらは1962年ルツェルン音楽祭でのライヴ録音。

名匠セル会心のドヴォルザークというべきか。なにしろオケの表出力がハンパでない。ジョージ・セルのドボ8といえば最晩年のクリーブランド管弦楽団との録音が有名で、あれも並々ならない演奏レベルだが、このライヴはそれさえ霞んでしまうほどの凄さである。音質も上々で、近接的なマイクが演奏の凄さを十二分に伝えてくれる。併録のブラームスは上のドボ8と比べるとかなり聴き劣る。こちらは音質がいまいちで、疑似ステレオの音質が平板だし加工臭が耳についてしまう。

フランソワ=フレデリク・ギィによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第13番・第12番・第4番の感想


ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第13番・第12番・第4番
 フランソワ=フレデリク・ギィ(pf)
 Zig-zag 2009~2012年ライヴ ZZT333
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フランソワ=フレデリク・ギィの演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第13番・第12番・第4番。仏ジグ・ザグ・テリトワール。2009~2012年フランス、アルセナル・コンサートホールでのライヴ録音。

ここでもギィのアプローチは強弱緩急の幅を大きく取ったロマン派スタイルのピアニズムをベースに、タッチの洗練さらた美感と張りのある強度とのバランスを慎重に整えながら進めていく行き方。ベートーヴェンの強固な古典的造型性はさほど引き立たないが、むしろ感覚に訴える表出力の強さを聴くべき演奏というべきか。ただ音質は万全とは言い難い。あいかわらずボリュームをあげるとノイズ感が気になる。やはりセッションで固めるべきだったのでは、、、。

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