児玉桃によるラヴェル、武満、メシアンのピアノ作品集の感想

ラヴェル 鏡&武満徹 雨の樹素描&メシアン ニワムシクイ
 児玉桃(pf)
 ECM 2012年 4810426
4810426.jpg

児玉桃のピアノ演奏によるラヴェル「鏡」、武満徹「雨の樹素描」およびメシアン「ニワムシクイ」。独ECM。2012年ノイマルクト、ライトシュターデルでのセッション録音。

最初のラヴェル「夜蛾」から凛然と澄んだ音色の妙にグッと惹きつけられる。「鏡」はラヴェル初期のピアノ作品集であり、ラヴェル作品の中では比較的不人気だが、やはり作品本来の魅力が引き立つのはピアニストの演奏次第である。1905年のラヴェル「鏡」に対し1982年の武満徹「雨の樹素描」、1970年のメシアン「ニワムシクイ」と並んでいるが、いずれも音楽の雰囲気が妖美な鮮やかさを帯びている点で共通するということが本アルバムで良く理解できる。

フランソワ=フレデリク・ギィによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」・第5番・第6番・第7番の感想



ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」・第5番・第6番・第7番
 フランソワ=フレデリク・ギィ(pf)
 Zig-zag 2009~2012年ライヴ ZZT333
ZZT333.jpg

フランソワ=フレデリク・ギィの演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」・第5番・第6番・第7番。仏ジグ・ザグ・テリトワール。2009~2012年フランス、アルセナル・コンサートホールでのライヴ録音。

「悲愴」の第1楽章はかなり思い切った緩急対比が面白い。グラーヴェとアレグロのテンポ差が大きく、強い起伏力を印象づけられる。他の3曲も含めてフレージングに溜めが多く、ロマン派のソナタのような趣きがあり、ギィの洗練された音色の美感が、その印象を助長する。このあたり好悪は別れるだろうが、ひとつの見識に基づいたベートーヴェンとして傾聴に値する演奏である。

ネゼ=セガン/フィラデルフィア管弦楽団によるストラヴィンスキー「春の祭典」の感想


ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」ほか
 ネゼ=セガン/フィラデルフィア管弦楽団
 グラモフォン 2013年 4791074
4791074.jpg

ヤニック・ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏によるストラヴィンスキー「春の祭典」。グラモフォン。2013年3月フィラデルフィア、ヴェリゾン・ホールでのセッション録音。ほかに大バッハのオルガン曲のストコフスキーによるオーケストラ編曲作品も3曲ほど収録されている。

このハルサイは素晴らしい。フィラ管ゆかりの作品なのに、このオケによる決定打的な録音がこれまでなかったのだが、このネゼ=セガン盤はまさに決定打と言い得る見事な録音だ。オケの輝かしい音響美に鮮烈な音響的パンチ力が付帯し、音楽のあらゆる場面が新鮮な音画として響いていく様は圧巻としかいいようがない。バッハも秀逸。ふくよかなオケの音色が何とも言えない。

フランソワ=フレデリク・ギィによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第9番・第10番・第11番&「月光」の感想


ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第9番・第10番・第11番&「月光」
 フランソワ=フレデリク・ギィ(pf)
 Zig-zag 2009~2012年ライヴ ZZT333
ZZT333.jpg

フランソワ=フレデリク・ギィの演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第9番・第10番・第11番&「月光」。仏ジグ・ザグ・テリトワール。2009~2012年フランス、アルセナル・コンサートホールでのライヴ録音。
 
フランス生まれのピアニストによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集はとても珍しい。ギィのピアニズムは音の洗練とタッチの強度を絶妙に両立させた高度な行き方で、個々のタッチに張りのある強さとまろやかな美感が付帯している点に魅力を覚えた。ただ残念なのは音質がいまいちな点。ライヴ録りの制約だと思うが、ボリュームを上げると音が濁る傾向が目立つ。せっかくのピアニストの持ち味がだいぶ損なわれている気がする。

ヘンシェル&ベレゾフスキーによるマーラーの「子供の不思議な角笛」による歌曲全曲の感想


マーラー 「子供の不思議な角笛」による歌曲全曲
 ヘンシェル(br)、ベレゾフスキー(pf)
 Evil-Penguin 2012年 EPRC013
EPRC013.jpg

ディートリヒ・ヘンシェルのバリトン歌唱とボリス・ベレゾフスキーのピアノ伴奏によるマーラーの「子供の不思議な角笛」による歌曲全曲。ベルギーEvil Penguin Records。2012年ロッテルダムでのセッション録音。

マーラーがドイツの民衆歌謡「子供の不思議な角笛」の歌詞に基づいて作曲した全ての歌曲を収録する、というコンセプトに基づき歌曲集「子供の不思議な角笛」全12曲(「三人の天使が歌った」と「原光」を含む)と、歌曲集「最後の7つの歌」の「死せる鼓手」と「少年鼓手」の2曲と、歌曲集「若き日の歌」のうち第2集と第3集に含まれる9曲、以上の計23曲の歌曲が収録されている。

まずヘンシェルの歌唱が絶品である。朗々たる美声、揺るがないフォームと完璧に近い歌いぶり。あえていうなら「だれがこの歌を作ったのだろう」で高音が少しだけ苦しそうなくらいか。ベレゾフスキーの伴奏も素晴らしい。決してパワフル一辺倒ではないが、要所要所で表出力のあるタッチを披露しヘンシェルの歌唱に多彩な奥行きを添えている。

ヘンゲルブロック/北ドイツ放送交響楽団によるメンデルスゾーン交響曲第1番&シューマン交響曲第4番の感想



メンデルスゾーン 交響曲第1番&シューマン 交響曲第4番
 ヘンゲルブロック/北ドイツ放送交響楽団
 ソニー・クラシカル 2011年 88697940022
88697940022

トーマス・ヘンゲルブロック指揮、北ドイツ放送交響楽団の演奏によるメンデルスゾーン交響曲第1番とシューマン交響曲第4番。ソニー・クラシカル。2011年3月ドイツ・リューベックでの録音。余白にはメンデルスゾーン弦楽八重奏曲の「スケルツォ」も収録。シューマンの4番は初稿版のスコアでの演奏。

アンサンブルの表出力それ自体は悪くはないと思うが、全体的にピリオドスタイルの取り入れが中途半端な気がする。メンデルスゾーンの1番は以前に出たノリントン/シュトゥットガルト放送響のCDの方がコンセプトが徹底されていた。シューマンの4番は演奏自体は秀逸だが初稿版ということで損をしている部分がかなりある感じがする。

ステンハンマル四重奏団によるステンハンマルの弦楽四重奏曲第3番&第4番の感想


ステンハンマル 弦楽四重奏曲第3番&第4番ほか
 ステンハンマル四重奏団
 Bis 2011・2012年 BISSA1659
BISSA1659.jpg

ステンハンマル四重奏団の演奏によるステンハンマルの弦楽四重奏曲第3番および第4番。瑞BIS。2011年~2012年スウェーデンでのセッション録音。ほかにステンハンマル作曲の組曲「ロドレッシの歌」よりエレジーと間奏曲も併録されている。

演奏・音質ともに超一級というほかなく、最初の弦楽四重奏曲4番の第1楽章コーダなど震えがくるほど素晴らしい。ステンハンマルの弦楽四重奏曲はベートーヴェンの影響が色濃いと言われるが、成程この2曲に関しては特にそう思える。ちなみに弦楽四重奏曲3番は第1楽章のみ長調が主体、他の3楽章はすべて短調が主体という珍しい曲である。

フォーグラー&グリモーによるシューマンの室内楽作品集の感想


シューマン 歌曲集「詩人の恋」(チェロ用編曲版)ほか
 フォーグラー(vc)、グリモー(pf)
 ソニー・クラシカル 2011・2013年 88697892582
88697892582.jpg

ヤン・フォーグラーのチェロとエレーヌ・グリモーのピアノによるシューマンの室内楽作品集。ソニー・クラシカル。2011・2013年ドイツ、ベルリンとノイマルクトでのセッション録音。

①幻想小曲集
②歌曲集「詩人の恋」(チェロ用編曲版)
③アンダンテと変奏曲Op.46(オリジナル室内楽版)

①は本来ピアノとクラリネットのための作品だが、クラリネットをヴァイオリンまたはチェロに置き換えてもよいとされる。フォーグラー&グリモーのデュオの冴えていること。最初の曲の冒頭から作品本来の歌謡的魅力が全開で引きこまれる。②はハイネの詩に基づくシューマンの代表的歌曲のチェロ編曲版だが、もともと歌曲だけに、チェロの旋律線が奏でるカンタービレの歌謡的な美しさが際立っている。なるほどチェロは人声に近い楽器だが、この歌曲の旋律がこれほど魅力的に響くのは、この演奏ならではだろう。③だが、この作品46は本来ホルンと2台のピアノ、2つのチェロという編成を想定して作曲されたのだが、試演段階で構想が変更され2台ピアノのための作品として完成された。この初演時のピアニストはクララ・シューマンとメンデルスゾーンという豪華な顔合わせである。このCDでは最初の構想段階での編成での演奏となっており、伴奏はモーリッツブルク祝祭アンサンブルが務めている。演奏自体は立派だと思うが、シューマンもバランスに問題ありと考えて編成を変えているだけに、やや微妙な印象も拭えない。

サヴァリッシュ/N響によるブラームス交響曲全集の感想


ブラームス 交響曲全集
 サヴァリッシュ/NHK交響楽団
 キングインターナショナル 1971-75年ライヴ KKC2028
KKC2028

ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮NHK交響楽団によるブラームス交響曲全集。キングインターナショナル。

・交響曲第1番
録音時期:1973年6月23日
録音場所:東京、NHKホール
NHKホールの柿落し公演の録音。サヴァリッシュらしい正調のブラームスだがN響は終楽章の肝心なところでホルンがコケたりと、結構キズが目立つが、アンサンブル自体の活力や燃焼力は最後まで高い。音質もオン気味で生々しい。

・交響曲第2番
録音時期:1971年5月8日
録音場所:東京厚生年金会館
1番よりも緩急の起伏を印象づけられる、ドラマティックなスタイルのブラームスである。アンサンブルの充実度も1番と同格。音質は少しオフ気味だが十分な臨場感がある。

・交響曲第3番
録音時期:1972年4月19日
録音場所:東京文化会館
2番とはうってかわってスロー基調の構築的なアプローチ。そのぶん非常に格調の高いブラームスだが表出力はいまひとつ伸びない。音質も1番や2番に比べると少しモヤッとした感じがする。

・悲劇的序曲
録音時期:1972年4月19日
録音場所:東京文化会館
オケの表出力が強く、非常に聴きごたえがある。オン気味の迫力に満ちた音質も素晴らしい。

・交響曲第4番
録音時期:1975年4月23日
録音場所:東京、NHKホール
サヴァリッシュらしい正調のブラームスである。アンサンブル自体の活力や燃焼力は最後まで高い。音質もオン気味で申し分なし。

イッサーリスとハーディング/マーラー・チェンバー・オーケストラによるドヴォルザークのチェロ協奏曲集の感想



ドヴォルザーク チェロ協奏曲集
 イッサーリス(vc)
   ハーディング/マーラー・チェンバーオーケストラ
 ハイペリオン 2012年 CDA67917
CDA67917.jpg

スティーヴン・イッサーリスのチェロ演奏とダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラの伴奏によるドヴォルザークのチェロ協奏曲集。英ハイペリオン。2012年イタリア、テアトロ・コムナーレ・ディ・フェラーラでのセッション録音。以下のドヴォルザーク作品が収録されている。

①チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104
②歌曲「一人にして」Op.82-1(管弦楽編曲版)
③チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104の初稿の終楽章コーダ
④チェロ協奏曲 イ長調 B.10

ドヴォルザークのロ短調のチェロ協奏曲は名曲として名高いだけに録音も数知れずリリースされているが、このイッサーリスのCDは過去に聴いたどの録音よりも素晴らしいと思う。フレージングの表出力がずば抜けているとしか言いようがない。この曲がこんなに感動的な曲だったのかと今更ながらに思わされたのだから凄すぎる。ハーディング/マーラー・チェンバーも圧巻。最高のピントで奏でられた音画である。そして④も絶品。ドヴォルザークの習作で、魅力に欠けるとも言われるが、とんでもない話で、とくに第1楽章のむせ返るような情緒は聴いていて耳を捉えて離さない。演奏が抜群だから作品の真価が存分に発揮されているのだろう。

ティーレマン/ドレスデン・シュターツカペレによるブゾーニ、プフィッツナー、レーガー作品集の感想


ブゾーニ 交響的夜曲
&プフィッツナー ピアノ協奏曲
&レーガー ロマンティック組曲
 ティーレマン/ドレスデン・シュターツカペレ、バルト(pf)
 Profil 2011年ライヴ PH12016
PH12016.jpg

クリスティアン・ティーレマン指揮ドレスデン・シュターツカペレの演奏によるブゾーニの交響的夜曲、プフィッツナーのピアノ協奏曲(ピアノ演奏ツィモン・バルト)およびレーガーのロマンティック組曲。独Profil。2011年ドレスデン、ゼンパーオーパーでのライヴ録音。

ドレスデン・シュターツカペレゆかりの3曲を演奏したコンサートのライヴ。ブゾーニの交響的夜曲は10分ほどの小曲で、オケによるデモーニッシュな夜想曲という趣き。プフィッツナーのピアノ協奏曲は1920年代の作品としてはほどほどにロマンティックでほどほどにモダンという煮え切らない感じの曲。あまり演奏されないのも分かる気がする。最後のレーガー・ロマンティック組曲は第1楽章と終楽章でのワーグナーを思わせる重厚濃密な音楽の流れが聴かれるが、このあたりにティーレマン/ドレスデンの持ち味がうまく発揮されている感じがする。

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.