プレヴィン/ピッツバーグ交響楽団によるマーラー交響曲第4番


マーラー 交響曲第4番
 プレヴィン/ピッツバーグ交響楽団
 EMIクラシックス 1978年 QIAG-50062
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アンドレ・プレヴィン指揮ピッツバーグ交響楽団の演奏によるマーラー交響曲第4番。1978年ピッツバーグでのセッション録音。ソプラノ独唱エリー・アメリング。

プレヴィンのマーラーは先般のN響定期での交響曲第9番が素晴らしかったが、録音の方を探してみたら本CDが見つかったので入手した。プレヴィン唯一のマーラー録音とのこと。

カンブルラン/読売日本交響楽団によるストラヴィンスキーのぺトルーシュカとフランクの交響曲


ストラヴィンスキー 「ぺトルーシュカ」&フランク 交響曲
 カンブルラン/読売日本交響楽団
 ライヴノーツ 2012年ライヴ WWCC-7709
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シルヴァン・カンブルランの指揮と読売日本交響楽団の演奏によるストラヴィンスキーのバレエ音楽「ぺトルーシュカ」(1947年版)およびフランクの交響曲。ライヴノーツの新譜。

ストラヴィンスキーは2012年4月13・14日の東京オペラシティ・コンサートホールでのライヴ収録、フランクは2012年4月21日のサントリーホールでのライヴ収録。

このうちフランクの交響曲の方は当日ホールで実演を聴いた。とても感銘深い演奏だった。

ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管によるシューベルトの交響曲第5番&第6番


シューベルト 交響曲第5番・第6番
 ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
 RCA 2011年 88725463362
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デイヴィッド・ジンマン指揮チューリヒ・トーンハレ管弦楽団によるシューベルトの交響曲第5番と第6番。RCAの新譜。2011年9月チューリヒ、トーンハレでのセッション録音。

ジンマン/トーンハレのシューベルト・チクルスは毎回楽しみに聴いている。これで交響曲第1番~第6番と「未完成」が出揃った。残る「グレイト」のリリースで全集完成の運びとなる。

サンフランシスコ交響楽団の来日公演(11/20 東京文化会館)の感想


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サンフランシスコ交響楽団の来日公演を東京文化会館で。指揮者はマイケル・ティルソン・トーマス。このオケは来日頻度が低く、今回15年ぶりの来日なのだとか。

最初はジョン・アダムズの「ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシン」。1986年にティルソン・トーマス指揮ピッツバーグ響により世界初演された曲で、弦と打楽器の織り成す精密なリズムの波の上で金管楽器が痛快なファンファーレを繰り広げ大いに盛り上げる。これは4分程度の小曲であっという間に終わってしまったが、コンサート初っ端の景気付けには最適な曲のひとつかもしれない。サンフランシスコ響のブラスセクションは惚れぼれするほど爽快な音だった。

続いて中国出身の名手ユジャ・ワンをソリストに迎えてプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番。この演奏は実に素晴らしかった。ユジャ・ワンは世界屈指の超絶技巧ピアニストという名声に相応しい快刀乱麻のピアニズムを存分に披歴しつつ、このプロコフィエフ作品の難技巧性に起因する音楽の面白さを余すところなく音化したような趣きがあり、第1楽章と終楽章の終盤での壮大なクライマックスはもとより疾風怒濤の第2楽章や巨象のダンスのような第3楽章にいたるまで縦横無尽に駆け抜けるピアノ・ソロの運動感は聴いていて痛快無比であり、この作品をこれほど面白く聴けたのは録音実演を通して初めての体験だった。

このプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番は初演の際、そのあまりにも(当時は)独創的な楽想のため聴衆の拒否反応がすさまじかったというエピソードが伝えられているし、この曲の雰囲気には実際ある種の禍々しさ、刺々しさといったような性格のものが色濃い。だから普通この作品はそのような刺々しさや禍々しさを強調して弾かれることが多いと思うが、当夜のユジャ・ワンの演奏はそういった奇形性よりも作品自体のピアノ音楽としての純粋な面白さや爽快さを汲み取って、それを自身の磐石のテクニックにより音化し尽くすことに成功したというべきだろうか。この作品をこんなにスリリングに聴けたことは今まで無かった。

後半はラフマニノフの交響曲第2番。ここでのオケの響きの特性を端的に表すなら光彩陸離という言葉が最も相応しいように思う。なんといってもアンサンブルの響きの上質な美しさが素晴らしく、アメリカのオケに有り勝ちな派手でケバケバしい音響とは全く異なる感触。この感触はアメリカンというよりは、むしろロンドンあたりのオケのそれに近い特性があるのではとも思ったが、アンサンブルの明晰な色彩の分解能からくる絢爛たる音響美においてはアメリカらしい豪奢な響きの特性も確かに伺われ、そこにアメリカの地域性というべきものもしっかりと継承されていることに気付かされた。

ラフマニノフの2番を実演で聴いたのは昨年14年ぶりに来日したロシア国立交響楽団の演奏会以来だったが、その本場のラフマニノフよりも今回のMTT/サンフランシスコの演奏の方が個人的には一層の好感を持てた。ロシア国立響のラフマニノフにさすがに比類ないくらいの格調高さがあったが、やや格式ばったところがあったし、音響的にも地味だった。その点MTT/サンフランシスコのラフマニノフは過度に格式ばっていなかったし、何よりオーケストラの洗練を尽くした、文字通り耳の御馳走ともいうべき音響美が抜群だった。

サンフランシスコ交響楽団の来日公演(11/20 東京文化会館)


11/20 東京文化会館
サンフランシスコ交響楽団 来日公演

指揮:マイケル・ティルソン・トーマス

ピアノ:ユジャ・ワン

曲目:
 J.アダムズ ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシン
 プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番
 ラフマニノフ 交響曲第2番

アンコール:
 (前半)シューベルト(リスト編曲) 糸を紡ぐグレートヒェン
 (後半)ビゼー 「アルルの女」よりファランドール
 (後半)コープランド バレエ音楽「ロデオ」より抜粋

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開演前の様子

ミンコフスキ/ルーヴル宮音楽隊によるシューベルト交響曲全集


シューベルト 交響曲全集 
 ミンコフスキ/ルーヴル宮音楽隊
 Naive 2012年ライヴ V5299
V5299

マルク・ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル(ルーヴル宮音楽隊)によるシューベルト交響曲全集。Naiveの新譜。2012年3月ウィーン、コンツェルトハウスでのライヴ録音。

ミンコフスキ/ルーヴルは前回リリースのベルリオーズ交響曲「イタリアのハロルド」が素晴らしかったが今回はシューベルトの交響曲全曲を一挙に録音(全8曲を一度にリリースというのはピリオドオケの録音としては初めてか)ということで興味津々で入手した。

ブックレットによるとオケの編成は全曲とも12型がベースになっているが「グレイト」のみ管弦ともに一部のパートを補強しアンサンブルに特別に厚みを持たせているようだ。

マリインスキー・オーケストラ来日公演(11/15 NHKホール)の感想


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ワレリー・ゲルギエフ/マリインスキー・オーケストラの来日公演をNHKホールで。このコンビの実演を聴くのは昨年のマリインスキー・オペラ「トゥーランドット」以来だがオーケストラとしての来日公演を聴くのは前回の来日(2009年12月)以来3年ぶり。

最初の演目はメシアンの初期の作品「キリストの昇天」。これは管弦楽のための4つの交響的瞑想という副題の通りメシアン一流の瞑想的なハーモニーが時に静謐に時に凶暴に紡ぎ出されていく神秘的雰囲気に包まれた作品だが、ゲルギエフ/マリインスキーは持ち前の広範なダイナミックレンジと細部まで緻密なアンサンブル処理をもって作品の姿を隅々まで過不足なく描き出した。

その点では見事の一言だったものの、肝心のアンサンブルの響きの耳当たりが総じてゴツゴツした感触だったのでメシアンらしさが正直あまり感じられなかったし、ちょうど去年の今頃、同じホールで聴いたパリ管の来日公演で披歴されたメシアンは独特の柔らか味を帯びたアンサンブルの内省的な響きやハーモニーの深い奥行きに耳をそばだたせられたが、今回そういうものは残念ながら感じられなかった。

続いてギリシャ出身の名手レオニダス・カヴァコスをソロに迎えてシベリウスのヴァイオリン協奏曲。この曲を実演で聴くのは昨年のN響定期以来だが、その時のソリストに当初クレジットされていたのが実はカヴァコスその人で、ブロムシュテットとの顔合わせでシベコンを弾く予定だったのだが、公演直前で体調不良によりキャンセルとなり、その代役は竹澤恭子が務めていた。

カヴァコスはシベリウス国際コンクールに史上最年少で優勝した経歴の持ち主であり、おそらくシベコンは自家薬籠中の作品なのだろう。かなり緩急の幅を大きくとった雄弁な語り口、研ぎ澄まされたテクニック、ストラディバリウスの絢爛たる響きの特性をフルに活かしたような鮮やかな音色。その独自のシベリウスの世界には聴き終えて深い感銘を与えられた。アンコールのバッハにも痺れた。

後半はプロコフィエフの交響曲第5番。この曲を実演で聴くのは4年前のロンドン響の来日公演以来で、その時の指揮者もゲルギエフ。今回も第1ヴァイオリンとチェロを隣接させるゲルギエフ常套の配置だったが、編成は14-12-10-10-6というチェロを厚くした14型だった。

演奏自体の特徴としては前述のロンドン響との同曲の実演の際の印象と概ね重なるものだったが、今回のマリインスキーとの演奏ではチェロの厚みが効いたのか全体を通して重低音の押しの強いタフな感触のアンサンブルから展開される、強靭なハーモニーの表出力にただならないものがあり、その点では以前のロンドン響との実演を凌ぐものがあったと思うし、そのぶん音楽としてのワイルドな荒々しさが前面に押し出された印象を感じた。反面いささか洗練味には欠け、ロンドン響との実演での、とことんまで突き詰められたようなアンサンブルの完成度の高さや盤石の音響設計という点からすると全体的に一歩を譲るような印象も正直あった。しかし、このプロコの5番のワイルドな楽想の持ち味を絶妙に引き立たせるという観点では、今回のマリインスキーとの演奏の方が音楽の特性に合っていたような気もするし、その意味でロンドン響との実演とは一風違った面白さが聴いていて感じられた。

それにしても当夜のコンサートは時間的にも内容的にも盛り沢山だった。後半のプロコフィエフが始まったのが8時45分で、これは普通のコンサートなら終演の時刻。アンコールにワーグナー「ローエングリン」第1幕への前奏曲。終演は10時に近かった。

マリインスキー・オーケストラ来日公演(11/15 NHKホール)


11/15 NHKホール
マリインスキー・オーケストラ 来日公演

指揮:ワレリー・ゲルギエフ

ヴァイオリン:レオニダス・カヴァコス

曲目:
 メシアン キリストの昇天
 シベリウス ヴァイオリン協奏曲
 プロコフィエフ 交響曲第5番

アンコール:
 (前半)J.S.バッハ 無伴奏パルティータ第2番のサラバンド
 (後半)ワーグナー 「ローエングリン」第1幕への前奏曲

2012-11-15
開演前の様子

ブロムシュテット/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管によるブルックナー交響曲第2番


ブルックナー 交響曲第2番
 ブロムシュテット/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
 Querstand 2012年ライヴ VKJK1214
VKJK1214

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏によるブルックナー交響曲第2番。独クヴェルシュタントの新譜。2012年3月ゲヴァントハウス大ホールでのライヴ録音。

このコンビの一連のブルックナー・チクルスは2006年のリリース開始から楽しみに聴いてきたが、いよいよ今回リリースの2番をもって全9曲の完結となった。

このブロムシュテットのブル2はキャラガン校訂の1872年初演版で演奏されているが、この稿は周知のとおり1991年にクルト・アイヒホルン/リンツ・ブルックナー管弦楽団により初めて録音され、また2005年に正式出版された稿による演奏としては2006年にシモーネ・ヤング/ハンブルク・フィルにより初録音されている

しかし現状この稿でのブル2の録音は極めて少なく、かつてフランクフルト放送響とのブルックナー全集で徹底的に初稿にこだわったはずのインバルでさえ最近の都響との再録音ではノヴァーク版1877年稿だったし、現状そのポピュラリティは今ひとつ上がっていないように思える。

今回のブロムシュテットの録音は全曲タイムが62分となっており、同じキャラガン初演版に基づくアイヒホルン/リンツ・ブルックナーの68分、ヤング/ハンブルクの72分と比べてもタイムの短さが顕著に現われている。

ブロムシュテット/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管によるブルックナー交響曲第9番(2011年ライヴ)


ブルックナー 交響曲第9番
 ブロムシュテット/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
 Querstand 2011年ライヴ VKJK1215
VKJK1215

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏によるブルックナー交響曲第9番。独クヴェルシュタントの新譜。2011年11月ゲヴァントハウス大ホールでのライヴ録音。

このコンビのブルックナー交響曲チクルスは2005年から足掛け7年を掛けて着々と進められてきたが、この9番と同時リリースの2番をもって1番以降の全9曲の録音が完成した。

ブロムシュテットのブル9は同じゲヴァントハウス管弦楽団を指揮して1995年にデッカに録音した演奏も良かったが、今回の再録音も楽しみに聴きたい。

バンベルク交響楽団の来日公演(11/6 サントリーホール)の感想


2012-11-06b

バンベルク交響楽団の来日公演をサントリーホールで。指揮は現在このオケの名誉指揮者を務めているヘルベルト・ブロムシュテット。

前半の演目はピョートル・アンデルシェフスキのソロによるモーツァルトのピアノ協奏曲第17番だったが、これは久々に耳にした天才肌のピアニストの演奏だった。

全編を通して軽妙洒脱なタッチの運びからモーツァルトの天衣無縫なメロディの魅力を余すところなく浮き彫りにしたような演奏というべきか。ことに弱音領域における繊細を極めたタッチの統制力が圧巻であり、その異様なほどに怜悧な美しさを帯びたピアニッシモの訴求力は尋常一様なものではなかったし、音楽が不意に短調に陰る際に聴かれた音色の肌寒いほどのコントラストにも聴いていて強く魅了させられた。

このモーツァルトの音楽に特有なメルヘンティズムとペシミズムとが表裏一体となったような楽想に、これほど深々とした視界を示してくれた演奏というのは今まで聴いたことがないと思えるほどだった。アンデルシェフスキは正直これまでノーマークだったが、今後は注目してみたいと思う。

後半はブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」。ブロムシュテットのブルックナーといえば最近CDの方で継続的にリリースされているゲヴァントハウス管とのライヴ・チクルスをいつも楽しみに聴いているので今回のバンベルク響とのブルックナーは聴くのが楽しみだった。

当夜ロビーで入手したプログラムに書かれていたところによると、かつてブロムシュテットが13歳か14歳の頃にスウェーデンのエーテボリのコンサートホールで初めて耳にしたブルックナーの交響曲が第4番「ロマンティック」であり、それがきっかけで以後ブルックナーの音楽にのめり込んでいったそうで実際ブロムシュテットはブルックナーの4番に関しては今年リリースされたゲヴァントハウス管との録音を含めて計3回ものレコーディングを果たしている。

そのブロムシュテット/バンベルク響のブルックナーは期待に違わぬ圧倒的な高みを示した、文字通り感無量の演奏内容だった。的確な作品把握から音楽の姿を丁寧に描き出すブロムシュテットのアンサンブル運用はいつもながら堂に入ったものだったし、オケの鳴りも充実を極め、その深いコクを湛えた味の濃い響きはここぞという時に軒並み深遠なパースペクティヴを湛えた神々しいまでのハーモニーとして鳴り響いた。ホルンのソロの見事な鳴りっぷりなど、聴いていて随所にバンベルク響のアンサンブルとしての驚異的なポテンシャルが顕著に伺われ、そこには歴史的に何人もの伝説的なブルックナー指揮者の薫陶を受けたオケとしての強固なアイデンティティを垣間見るような気がしたが、そのポテンシャルを仮借なく引き出しつつ、盤石の音楽設計をもって比類無いほどの立体感を帯びたブルックナーの広大無辺な世界を導出せしめたブロムシュテットの手腕にも、今更ながらに驚嘆の念を禁じえなかった。

先月のティーレマン/ドレスデンのブルックナーも良かったけれど、少なくとも音楽から受ける精神的緊張感という観点においてはブロムシュテットやスクロヴァチェフスキのブルックナーは別次元という印象を受ける。欲を言えば切りがないが、出来ればブロムシュテット/ゲヴァントハウスのブルックナーも実演で聴いてみたいと改めて思った。

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以下の部分は余談で、本公演の感想からはかなり脱線するので興味が無い方は読み飛ばしていただきたい。

今回のブロムシュテット/バンベルク響の来日公演の演目は前述のとおりブルックナー4番だったが、使用スコアはノヴァーク版だった。また今年リリースされたブロムシュテット/ゲヴァントハウスのブルックナー4番のSACDでも同じくノヴァーク版が使用されていた。

しかしブロムシュテットはブル4の録音において一貫してノヴァーク版を用いていたわけではなく、以前のサンフランシスコ交響楽団との録音では以下のようにハース版が使用されていた。

POCL1530
ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」
 ブロムシュテット/サンフランシスコ交響楽団
 デッカ 1993年 POCL1530

ただし、これは厳密には「ハース版と1886年ニューヨーク版との融合ヴァージョン」と記載されていた。1886年ニューヨーク版というのは実質的にはノヴァーク版のことで、要するにハース版を基本として部分的にノヴァーク版の指示を取り入れたのがブロムシュテット/サンフランシスコ響の録音における使用スコアであり、このような折衷様式は録音実演を問わず指揮者の裁量によりしばしばブルックナー演奏で用いられることがある。

ここで話題が唐突に先月のティーレマン/ドレスデン・シュターツカペレの来日公演に飛ぶのだが、その公演で披歴されたブルックナーの7番、実はロビーで入手したプログラムにはハース版と明記されていたにも関わらず、第2楽章の終盤の山場ではハース版に無いはずのシンバルが盛大に打ち鳴らされるという不整合が起きていた。

それだからか、ハース版というのが誤記で実はノヴァーク版の間違いだったのではないかといった声を当夜ホールで耳にした。まず終演後に席を立つ時に斜め後ろの方で誰かが隣人に「今のノヴァークだよねぇ。思いっきりシンバル鳴ってたし。このハースって間違いじゃん」と話しているのを聞いたし、ちょうどホールの外に出た時にも再び同じような会話を誰かが話しているのが聞こえた。

しかし個人的には、あのプログラムのハース版という記載は間違いとは言い切れないのではないかと思われる。なぜなら前述のブロムシュテット/サンフランシスコ響の録音のようにハース版を基本として随時ノヴァーク版の指示を取り入れるというやり方もあるわけだし、もうひとつ引っ掛かる点として、最近リリースされたティーレマン/ドレスデンのブルックナー交響曲第8番のCDがハース版で演奏されているという事実も大きいからだ。この短期間に8番はハース版で、7番はノヴァーク版でというのもちくはぐだし、更に言うなら、これは以前ブログでも詳しく書いたが、このブル8の録音でティーレマンは明らかにスコアから外れた独自の強弱法を取り入れていた。それなら7番においてもハース版を基本としつつ第2楽章の終盤の山場でシンバルを鳴らすという独自のやり方を取る可能性も十分に考えられるように思えるからだ。

いずれにせよ、当夜ホールで耳にしたように「このブル7は第2楽章でシンバルが鳴ったからノヴァーク版」と短絡的に決め付けるのは少々危険なような気がする。専門家ならいざしらず我々のような素人が部分的な特徴にだけ着目して軽々に判断するのは止めておいた方が無難かもしれない。

バンベルク交響楽団の来日公演(11/6 サントリーホール)


11/6 サントリーホール
バンベルク交響楽団 来日公演

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

ピアノ:ピョートル・アンデルシェフスキ

演目:
 モーツァルト ピアノ協奏曲第17番
 ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」

アンコール(前半):
 J.S.バッハ フランス組曲第5番よりサラバンド

2012-11-06
開演前の様子

ガーディナー/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティークによるベートーヴェンの「運命」と第7番(2011年カーネギーホール・ライヴ)



ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」、交響曲第7番
 ガーディナー/オルケストルレヴォリューショネル・エ・ロマンティーク
 ソリ・デオ・グローリア 2011年ライヴ SDG717
SDG717

ジョン・エリオット・ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティークの演奏によるベートーヴェン交響曲第5番「運命」&交響曲第7番。英ソリ・デオ・グローリアの新譜。2011年11月ニューヨーク、カーネギー・ホールでのライヴ録音。

ガーディナー/ORRは今年の春にブラームスのドイツ・レクイエムの再録音をリリースしたが、続いてベートーヴェンの交響曲の再録音を出してきたので、こちらも入手した。

このコンビのベートーヴェンというと当然ながら1990年代前半に収録された交響曲全集が思い出される。これはリリース当時センセーショナルな話題となったし、ピリオド・オケによるベートーヴェン全集としては先行していたブリュッヘン/18世紀オーケストラのそれと評価を二分するものだったが、そのブリュッヘンのベートーヴェン全集の再録音リリースと同じ時期にガーディナーもまたベートーヴェンの再録音を出してきたのは奇遇とも思える。

今回リリースのベートーヴェンのライナーノートにはオケのメンバー表が付記されていたので、試みにアルヒーフの方の交響曲全集のライナーに載っているオケのメンバー表と突き合わせてみると、さすがに20年近い間隔があるので大多数のメンバーが入れ替わっているのが分かるが、それでも前回のベートーヴェン録音時の一部のメンバーの名前は、今回の新録音にも見られた。チェロのトップ奏者デイヴィッド・ワトキンがそうだし、今回の録音のコンマスであるペーター・ハンソンも前回の交響曲第4番の録音でコンマスを務めている。

ライプツィヒ弦楽四重奏団によるロシアの弦楽四重奏曲集


ボロディン 弦楽四重奏曲第2番ほか
 ライプツィヒ弦楽四重奏団
 MD+G 2011年 30717582
30717582

ライプツィヒ四重奏団によるロシアの弦楽四重奏曲集。独MD+Gの新譜。2011年マリエンミュンスター修道院でのセッション録音。

収録曲は以下の5曲。

①N.アファナシエフ 弦楽四重奏曲「ヴォルガ河」
②リムスキー=コルサコフ コラールによる4つの変奏曲
③リムスキー=コルサコフ フーガ「修道院にて」
④ラフマニノフ 弦楽四重奏曲第1番より第2・第3楽章
⑤ボロディン 弦楽四重奏曲第2番

LFJでお馴染みのライプツィヒ四重奏団の新譜ということで入手。このカルテットはドイツ系の作品を中心に幅広いレパートリーを録音しているが、今回はロシアの弦楽四重奏曲集のリリースというのが興味深いし、収録曲にしても⑤以外は知名度の低い作品群が選ばれている。

①のニコライ・アファナシエフは19世紀中葉に活躍したロシアの作曲家。弦楽四重奏曲「ヴォルガ河」は1860年に作曲され翌年にロシア音楽協会賞を勝ち取っている。②はリムスキー=コルサコフが1885年に作曲した小品。③は1879年に作曲された「ロシアの主題による弦楽四重奏曲」の終楽章。この四重奏曲は出版されなかったが後年その第1~第3楽章がリムスキー=コルサコフの手により「ロシアの主題によるシンフォニエッタ」として管弦楽編曲されている。④はラフマニノフがモスクワ音楽院在学中の1889年(当時16歳)に作曲した未完の習作曲。

マゼール/N響の演奏会(10/29 NHKホール)の感想


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最初はベートーヴェンのレオノーレ第3番だったが正直あまり感銘を受けなかった。速めのテンポでスイスイ進めながらアンサンブルを無理なく鳴らし、程々に盛り上げるという風の、そつのない演奏。続いてグリーグのピアノ協奏曲。ピアニストはアリス=紗良・オット。第1楽章のカデンツァには惹き込まれたものの、全体的には表出力がいまひとつ不足気味。このピアニストの実演は今年6月のフランクフルト放送響の来日公演でも聴いたが、あのときのリストでのピアニズム自体の表出力には目覚ましいものがあったが、今回のグリーグは少し生ぬるく感じられてしまった。

後半はチャイコフスキーの交響曲第4番。この曲はマゼールのお気に入りのようで、レコードデビューして間もない1960年ごろにベルリン・フィルとウィーン・フィルを指揮して立て続けに録音しているし、また開演前のプレトークで小耳に挟んだ話によると、マゼールが初めて日本のオケに客演(東京交響楽団)した際に演目に選んだのも、このチャイコの4番だったのだとか。

当夜のチャイコフスキーは弦の編成が一風変わっていて、16-16-14-12-10というバスを厚くした変則16型だった。チャイコの4番の実演といえば最近聴いたばかりのロジェストヴェンスキー/読売日響の演奏が記憶に新しいが、面白いことに、そこでは今回のマゼールとは真逆に16-14-12-8-7というバスを薄くした変則16型だった。

好対照なのは編成のみならず演奏内容も然りで、マゼールはロジェストヴェンスキーのようにテンポを楽章ごとに大胆に切り替えたりとかクライマックスで大胆なテヌートを仕掛けて盛り上げるということはせず、全体的に速めのテンポを維持したスマートな運びからアンサンブルを丁寧に鳴らし、音量にしてもロジェストヴェンスキーよりは抑制を効かせ、そのぶんアンサンブル細部まで神経を行き届かせ、N響のオーケストラから絢爛たる響きを引き出すことに成功していた。

特に目覚ましかったのがアンサンブル各パートの色彩のメリハリ感であり、前述のようにバスを厚くしている割には重低音を殊更に強く押し出すという風な演奏ではなくて、むしろ高音部と低音部との音の連なりを色彩的に際立たせたりとか、あるいはトッティの際のアンサンブルの壮大な響きのパノラマ感を絶妙に浮き上がらせたり、こういったことのためにバスの厚さが活かされていたように思われた。

いずれにしてもロジェストヴェンスキーとはまた違った方向で手練手管を尽くしたアプローチが披歴され、少なくともチャイコの4番の実演でこれほど色彩感の豊かな演奏というのは聴いたことがないと感じたし、あらためてマゼールのアンサンブル・コントロールの練達ぶりに聴いていて感服させられた。

アンコールのグリンカ「ルスランとリュドミラ」序曲が始まったときは終演予定の21時を大きく過ぎていたが、82歳のマゼールは最後までスタミナ十分。惚れぼれするほど痛快なオーケストラ・ドライヴだった。

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