マゼール/N響の演奏会(10/29 NHKホール)


10/29 NHKホール
NHK交響楽団 演奏会(NHK音楽祭)

指揮:ロリン・マゼール

ピアノ:アリス=紗良・オット

演目:
 ベートーヴェン 序曲「レオノーレ」第3番
 グリーグ ピアノ協奏曲
 チャイコフスキー 交響曲第4番

アンコール:
 (前半)リスト パガニーニによる大練習曲第5番「狩り」
 (後半)グリンカ 「ルスランとリュドミラ」序曲

2012-10-29a
開演前の様子

ドレスデン・シュターツカペレ来日公演(10/26 サントリーホール)の感想


2012-10-26b

クリスティアン・ティーレマン率いるドレスデン・シュターツカペレの来日公演、先日のNHKホールに続いてサントリーホールでの最終日を聴いた。

前半の演目はワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死。このコンビのワーグナーはNHKホールでのリエンツィ序曲にも感服させられたが、当夜のワーグナーはホールのアコースティックの利もあり、また格別だった。

冒頭からじっくりと攻めたスローテンポをベースに厳粛に紡ぎ出されるメロディの美しさは喩えようもないほどであり、このオーケストラ特有の馥郁たる響きは無垢の艶やかさとなってワーグナーの彼岸の楽調に絶妙に照応し、稀に見るほどの深みのある陰影を醸し出し、これには聴いていてグッと心揺さぶられる思いだった。

ティーレマンのワーグナーの実演というと一昨年ミュンヘン・フィルを率いて来日した際、同じホールで聴いたタンホイザー序曲が思い出される。今回のトリスタンとは反対に冒頭から快速テンポで突っ走る怒涛のようなアンサンブル展開に圧倒させられたが、それと引き比べても今回のドレスデン・シュターツカペレとのワーグナーは、このオーケストラの持つ響きの諧調、いわゆるドレスデン・サウンドの珠玉の含蓄もあり、ひときわ感動的だった。

後半はブルックナー交響曲第7番。先日のNHKホールでのブラームス同様、ここでもティーレマンは遅めのテンポをベースに積極的にテンポを動かし、独特ともいうべき起伏感を印象づける、ティーレマン一流のロマンティック・スタイルによるブルックナーが披歴された。第1楽章だけで24分、全体で74分という大演奏だったが、その大河的な音楽の流れが生み出す雄大なスケール感は驚嘆に値するものであり、それがオーケストラの芳醇な音響美と絶妙に相まって、このコンビだけが為し得るような至純のブルックナーとしてホールに立ち現われ、その崇高な音楽の佇まいには聴いていて深い感銘を禁じえなかった。

前述のように、先日のブラームス同様このブルックナーにおいてもティーレマンは自己のポリシーに従いアゴーギグの変化を闊達に組み込んだ表現を展開したので、そのブラームスで感じた芝居がかったような印象が正直ここでも全くないでもなかったが、むしろ曲想変化に伴うテンポの動きが音楽の瞬間瞬間に新たな生命を吹き込むかのような新鮮な趣きが素晴らしかったし、このテンポの動きゆえにブルックナーの交響曲が紛れもなくドイツ・ロマン派に属する作品であるという事実(この事実は日本では往々にして軽視されるが)を改めて強く印象づけられもした。こういう視点に立ったブルックナーは最近ほとんど耳にできなくなったし、その意味でも貴重な体験だった。

伝えられるところによるとティーレマンは自己の音楽表現に関する信念には妥協を許さない指揮者であり、それが一因でミュンヘン・フィルのポストを去ることになったとも言われている。ドレスデンでのポストがどの程度まで継続するか分からないが、今回の来日公演を聴いた限り、このコンビの前途に幸あることを願いたいと思う。また、来年のウィーン・フィル来日公演の指揮者はティーレマンが有力とのこと。こちらも今から楽しみだ。

ドレスデン・シュターツカペレ来日公演(10/26 サントリーホール)


10/26 サントリーホール
ドレスデン・シュターツカペレ 来日公演

指揮:クリスティアン・ティーレマン

演目:
 ワーグナー 「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死
 ブルックナー 交響曲第7番

2012-10-26
開演前の様子

ドレスデン・シュターツカペレ来日公演(10/22 NHKホール)の感想


2012-10-22b

前半がブラームス交響曲第3番、後半がブラームス交響曲第1番。いずれも遅めのテンポをベースにアゴーギグの変化を闊達に組み込み起伏感の豊かな音楽の造形を創出する、その点では往年のドイツの巨匠指揮者の様式をも匂わせる、ティーレマン一流のロマンティック・スタイルによるブラームスが披歴された。

例えば交響曲第3番の冒頭だと、まず急速テンポで開始するも第1テーマのフレーズ後半から大きくリタルダンドしたり、展開部の冒頭アジタートのシーンを猛烈なスピードで走り抜けたかと思うと展開部後半ではどっしり腰を落としたスローテンポで押し通す、という按配で、とにかくテンポの出入りが激しく、それに起因するドラマティックな起伏を聴いていて否が応にも印象づけられる。

このようなティーレマン独特の大胆なアンサンブル展開は諸刃の剣ともいうべき印象があり、確かにブラームスの音楽に内在するロマンティックなメロディやドラマティックな起伏感を絶妙に引き立たせ、聴いていて陶然としたり心揺さぶられたりする瞬間もしばしば訪れたが、局面によっては大仰な音楽の身振りが少々芝居がかったような趣きを匂わせ、聴いていて興ざめしてしまうような印象を受けることもしばしばだった。交響曲第3番でいうと第1楽章と第3楽章は前者、第2楽章と終楽章は後者の割合が比較的高かった。

そういうわけで全面的に称賛するには躊躇する演奏だったが、演奏様式がユニークであるがゆえツボにはまった場合の訴求力が半端でなく、前述の第3楽章などオーケストラの芳醇な響きが繰り出す、むせ返るようなロマンの香りに陶然とさせられたし、交響曲第1番の方でも第1楽章と第3楽章こそ弱かったが第2楽章と終楽章の表現力は文字通り圧巻であり、ことに終楽章で展開された濃厚な音のドラマは滅多に耳にし得ないほどに突き抜けたもので、これは聴いていて大きく心揺さぶられる思いだった。

アンコールに演奏されたのはワーグナーのリエンツィ序曲。当代随一のワーグナー指揮者ティーレマンと、そのワーグナーゆかりのオーケストラであるドレスデン・シュターツカペレ、このコンビの織り成すワーグナーはやはり別格だった。

ドレスデン・シュターツカペレ来日公演(10/22 NHKホール)


10/22 NHKホール
ドレスデン・シュターツカペレ 来日公演

指揮:クリスティアン・ティーレマン

演目:
 ブラームス 交響曲第3番
 ブラームス 交響曲第1番

アンコール:
 ワーグナー 歌劇「リエンツィ」序曲

2012-10-22
開演前の様子

アレクサンドル・タローのジャズ・アルバム 「屋根の上の牛」


「屋根の上の牛(Le Boeuf sur le Toit)」
 タロー(pf)、ブラレイ(pf)、デセイ(sop)他
 Virgin 2012年 4407372
4407372

アレクサンドル・タローのピアノ演奏を中心とするジャズ・アルバム「屋根の上の牛」。英Virginの新譜。2012年パリでのセッション録音。

アレクサンドル・タローは前回リリースのバッハのピアノ協奏曲集に惹かれるものを感じたので気になっていたが、そのバッハに続いて今度は何とジャズ系のアルバムを打ち出してきたので興味津々で入手した。

本CDには1920年代のパリで名を馳せた伝説的キャバレー「屋根の上の牛(Le Boeuf sur le Toit)」にゆかりのジャズ音楽を中心に計26曲が収録されており、その曲目を見るとジャズ系ではジャン・ヴィエネル、クレマン・ドゥーセ、ポピュラー系ではウォルター・ドナルドソン、コール・ポーター、クラシック系ではミヨー、ラヴェル、ガーシュウィンといった作曲家が取り上げられている。

前述のようにアルバムのタイトル「屋根の上の牛」というのはフランスの作曲家ミヨーの有名なバレエ音楽ではなく、そのミヨー作品から名前が採られたパリの有名なキャバレーの名称を指している。ライナーノートによると、タローはジャズの演奏家だった祖父の影響で少年時代にジャズ音楽に傾倒し、このキャバレーで演奏されていたヴィエネル&ドゥーセの録音に夢中になったようで、そういう自身の体験が本CDのコンセプトになっているということらしい。

そういうわけでジャズ色の強いアルバムだが、意外とクラシック色も強く打ち出されている。というのも、このCDに4曲ほど収録されている4手連弾曲でタローと連弾しているのはフランク・ブラレイ、またヴィエネル作曲のブルースを歌っているのはナタリー・デセイだし、また演目的にも、前述の3人のクラシック系作曲家の作品以外に、ショパン、リスト、ワーグナーの作品をドゥーセが自由に編曲したピアノ曲が含まれていたりするからで、かなり意識的にジャズ&クラシックのクロスオーバーの試みが打ち出されているような感がある。

周知のようにタローはバロック系作品をモダン・ピアノで魅力的に演奏するピアニストであり、このアルバムでも1曲を除いてモダン・ピアノが使われている。「セントルイス・ブルース」のみ例外で、これは本来ウィリアム・クリストファー・ハンディ作曲のジャズのスタンダード・ナンバーだが、それを後年ジャン・ヴィエネルがハープシコード用に編曲しているため、それに従いプレイエルのハープシコードにより演奏されている。

チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ来日公演(10/17 サントリーホール)の感想


2012-10-17b

日本ではモスクワ放送交響楽団の名称で広く認知されているチャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラの、芸術監督フェドセーエフ80歳記念ツアー。その東京公演最終日を聴いた。

最初の演目はスヴィリードフの交響組曲「吹雪」(プーシキンの物語への音楽の挿絵)、その全9曲のうち6曲が続けて演奏された。ゲオルギー・スヴィリードフはショスタコーヴィチの弟子筋にあたるロシアの作曲家で、交響組曲「吹雪」は本来プーシキンの小説を原作とする映画劇伴として作曲された音楽が1974年に組曲として再構成された作品。映画音楽としての実用性に重きが置かれているようで、耳に心地よいメロディがこれでもかとばかり充溢する、そのかぎりで聴いていて爽快な気分に浸れる音楽。これは指揮者やオケにとってはゆかりの作品のようで、ヴィブラートたっぷりの弦の美しいメロディの奏で方といい、全体的に堂に入った演奏という風格だった。

続いてリムスキー=コルサコフのスペイン奇想曲。濃厚な弦のコッテリしたハーモニーに金管の重厚な吹き回しと木管の図太く味の濃い音色が絶妙に合流し紡ぎ出された響きは文字通りロシア本場を地でいく濃密な味わいのものであり、その演奏内容の見事さもさることながら、同じホールで昨年聴いたロシア国立交響楽団のラフマニノフと同様、いわゆるロシアの地域的伝統に根ざした固有の響きの特性というものが現在に至るまで脈々と受け継がれているという事実、その歴史の重みに対して聴いていて自ずと敬意を抱かされるようなロシア色の豊かな演奏だった。

後半はショスタコーヴィチの交響曲第10番だったが、この演奏は震えがくるほどに素晴らしかった。まさに正統派のショスタコーヴィチというに相応しい、小細工無用の王道的解釈による堂々たる演奏内容であり、フェドセーエフは標準より少し遅めのテンポをベースに奇を衒うことなく粛々とアンサンブルの歩を進め、この作品に特有の音楽の異常性を誇張を排して有りのままに描き出したが、そのケレン味の無さがかえって作品の異常性に由来する緊張感を増幅せしめ、そのハーモニーの微妙な絡み合いが醸す繊細な音色の奥行きの深さといった方面に幾度となく耳をそばだたさせられたし、異様なほどに透徹した響きのフォルテッシモからは深淵を覗くような凄味が感じられるなど、特に第1楽章を聴き終えた時のゾッとするような恐怖の印象は、この曲を聴いて初めて味わうような類の感覚だった。

このショスタコーヴィチの一連の作品の中でもひときわ謎めいた交響曲第10番の成立がソビエトの一時期の政治的情勢に深く起因していることは疑いないにしても、その真価、いうなら地域性を超越した普遍的な人間性の訴えかけを聴き手に真摯に伝達するには、やはり根本的に作品や作曲家に対する演奏する側の内的共鳴の深さが大きくものを言うのかもしれない。がむしゃらに大きな音を出したり流暢にメロディを歌ったりということに意を注ぐ行き方とは対極的なまでに主知的なアプローチだったが、しかし途方もない説得力に満ちた演奏だった。

このショスタコーヴィチの大曲をフェドセーエフはタクト無しで指揮したが、指揮者の所作に吸着するかのようなオーケストラの反応の度合いが尋常でなく、その点にも感服した。フェドセーエフが前任者ロジェストヴェンスキーの後を襲ってモスクワ放送響の芸術監督に就任したのが1974年なので、今年で38年という、世界的にも稀な長期政権である以上は当然なのかもしれないが、文字通り自身の手足のようにオケをドライヴし荘厳な音響の伽藍を精緻に組み上げていく手腕には恐れ入るばかりだった。

チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ来日公演(10/17 サントリーホール)


チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ 来日公演
10/17 サントリーホール

指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ

演目:
 スヴィリードフ 交響組曲「吹雪」より
 リムスキー=コルサコフ スペイン奇想曲
 ショスタコーヴィチ 交響曲第10番

アンコール:
 チャイコフスキー 「白鳥の湖」よりスペインの踊り

2012-10-17
開演前の様子

スティーヴン・イッサーリスのリサイタル・アルバム「見出された場所」


「見出された場所(LIEUX RETROUVES)」
 イッサーリス(vc)
 ハイペリオン 2011年 CDA67948
CDA67948

スティーヴン・イッサーリスのチェロ演奏による「見出された場所」と題されたリサイタル・アルバム。英ハイペリオンの新譜。2011年12月モンマス、ワイアストン・エステイト・コンサートホールにおけるセッション録音。

以下の10曲が収録されている。

①リスト 忘れられたロマンス
②リスト ノンネンヴェルト島の僧房
③リスト 悲しみのゴンドラ
④ヤナーチェク おとぎ話
⑤フォーレ チェロ・ソナタ第2番
⑥クルターク スティーヴンのために:ポーリン・マラの追憶に
⑦クルターク ピリンスキー・ヤーノシュ ジェラール・ド・ネルヴァル
⑧クルターク 影
⑨クルターク ジェルジー・ロー・イン・メモリアム
⑩アデス 見出された場所

①~⑤および⑩はトーマス・アデスのピアノ演奏とのデュオとなっている(⑥~⑨は無伴奏チェロ作品)。

昨年のN響定期で聴いたウォルトンのチェロ協奏曲が素晴らしかったイッサーリスの新譜ということで入手した。周知のようにイッサーリスは「ミスター・ガット弦」の異名で知られるイギリスの名チェリストであり、その広範なレパートリーは現代曲をもカバーするものとなっているが、本CDの演目もそのようなイッサーリスのスタイルを象徴するようなものとなっている。

本CDのライナーノートはイッサーリス自身により執筆されている。いわく個々の収録曲は一見すると相互に関連が薄いように思われるかも知れないが実は①~⑨は⑩を導くために配置されており、このアルバムのタイトルとなっているアデス「見出された場所」こそが本CDのプログラムの中核であるとのこと。

トーマス・アデスは「ブリテンの再来」とも評される現代イギリスの作曲家であり、この「見出された場所」は2009年に作曲されイッサーリスにより世界初演が行われている。そのアデスが自身の作曲の上で中心的ポジションにある作曲家と規定しているのがリスト、ヤナーチェク、フォーレ、クルタークであり、それらの作品を経由して「見出された場所」に聴き手が到達するようにというコンセプトに基づき本アルバムの演目が編まれている、ということのようだ。

⑥の「スティーヴンのために:ポーリン・マラの追憶に」はクルタークが2010年にイッサーリスの最愛の妻ポーリンの死を悼んで作曲した作品であり、この作品を自分が弾く際には私的な感情にどうしても捉われてしまうが、この作品の持つ深いフィーリングは紛れもなく普遍的なものであるとイッサーリスは述べている。

ユロフスキ/ロンドン・フィルによるチャイコフスキーの交響曲第4番&第5番


チャイコフスキー 交響曲第4番・第5番
 ユロフスキ/ロンドン・フィル
 ロンドンフィル自主制作 2011年ライヴ LPO0064
LPO0064

ヴラディーミル・ユロフスキ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるチャイコフスキーの交響曲第4番および第5番。ロンドンフィル自主制作レーベルの新譜。2011年ロンドンでのライヴ収録。

個人的に注目しているユロフスキ/ロンドン・フィルだが肝心の新譜のリリースが昨年のオネゲルのアルバム以降ぱったり止まっていたのでどうしたのかと思っていた。

正直このコンビの録音には当たりはずれが結構あるが、ツボにはまると途轍もない演奏内容を披歴するだけに目が離せない。

ゲルギエフ/ロンドン交響楽団によるチャイコフスキーの交響曲第1番~第3番


チャイコフスキー 交響曲第1番~第3番
 ゲルギエフ/ロンドン交響楽団
 LSO-Live 2011年ライヴ LSO0710
LSO0710

ワレリー・ゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団の演奏によるチャイコフスキー交響曲第1番~第3番。英LSO-Liveの新譜。交響曲第1番「冬の日の幻想」と交響曲第2番「小ロシア」は2011年ロンドン、バービカンホールでのライヴ録音。交響曲第3番「ポーランド」は2011年チューリッヒ、トーンハレでのライヴ録音。

ゲルギエフ/ロンドン響は近年の来日公演におけるプロコフィエフやマーラーでの充実を極めた演奏内容に感服させられているが今回のリリースはゲルギエフの一八番チャイコフスキーの交響曲集ということで早速入手した。

ロンドン響によるチャイコフスキーの前期3大シンフォニーの録音といえば、このオーケストラの黄金期にアンタル・ドラティがマーキュリーにレコーディングしたチャイコフスキー交響曲全集が思い浮かぶが、今回のゲルギエフの新譜にはSACDの利もあるので不朽の名盤たるドラティの録音を凌ぐ演奏内容を期待したいところだ。

オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団による20世紀オーケストラ作品集


"Eugene Ormandy conducts 20thCentury Classics"
 オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団
 RCA 1955~1982年 88725417202
88725417202

ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団による20世紀オーケストラ作品集。RCAより先月リリースされたCD12枚組のボックスセット。「ボレロ」「展覧会の絵」「惑星」「画家マティス」「ペトルーシュカ」「カルミナ・ブラーナ」など、このコンビがCBSおよびRCAに録音した20世紀オーケストラ作品が40曲ほど収録されている。

目当ては初CD化とされる「春の祭典」。これは1955年のモノラル録音だが、この時期にハルサイのレコーディングは数えるほどしかされていないし、どの程度の完成度と表出力を備えた録音となっているか聴いてみたいと思い入手した。

ロジェストヴェンスキー/読売日響のチャイコフスキー演奏会(10/6 東京芸術劇場コンサートホール)の感想



読響の名誉指揮者ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(今年81歳。壮健。あと10年くらいは余裕で指揮できそう)によるオール・チャイコフスキー・プログラム。

前半はロシアのピアニスト、ヴィクトリア・ポストニコワをソロに迎えてのピアノ協奏曲第1番。ポストニコワといえばエラートに録音したチャイコフスキーのピアノ作品全集など、主にロシア音楽の演奏に定評があり、特にチャイコフスキーのエキスパートというイメージがある。1969年にロジェストヴェンスキーと結婚して以来、今回の演奏会のように夫婦で共演する機会も数多いのだとか。

そのポストニコワの実演を聴くのは今回が初めてだったが、ことテクニックに関しては、所々ミスタッチも聴かれたし、正直それほど腕の立つピアニストという印象は受けなかったものの、全体的に落ち着いたテンポをベースに、腰の据わった打鍵からドッシリと重厚感のあるタッチがコンスタントに繰り出され、実に濃厚な聴き応えのチャイコフスキーが披歴された。いわばロシアン・ピアニズムの王道という風格に満ちた演奏だった。

チャイコの1番の実演というと今年のLFJで聴いたイム・ドンヒョクのピアノが記憶に新しいが、ポストニコワのピアニズムはちょうどドンヒョクと対照的という感じがした。揺るぎないテクニックを武器に流暢なタッチから明解で淀みなく音楽を運んだドンヒョクのピアニズムは確かに見事だったが、いかんせん重厚味に欠けていた。その点でポストニコワのピアニズムは実直に素晴らしく、今年の春にN響定期で聴いたマツーエフ以来、久々に本場のチャイコフスキーを耳にしたという感懐が湧いた。

後半は交響曲第4番。ロジェストヴェンスキーは冒頭のファンファーレから容赦なく金管をバンバン鳴らし、以降もオーケストラの鳴りっぷりが抜群で聴いていて惚れぼれするほどだった。

今年の読響はカンブルラン、カリニャーニ、下野竜也、スクロヴァチェフスキと聴いてきたが、ことオケの鳴りっぷりに良さに関しては文句なく今回が一頭地を抜いていた。むろん大音量とはいえアンサンブルが野放図に鳴らされているわけではなく、ハーモニーのバランスはしっかりと最後まで秩序だっていたし、テンポ面でも第1楽章やや速め、第2楽章は普通、第3楽章やや遅め、終楽章は遅めというように独自のメリハリを与え、メロディを歌うところはじっくりと歌い、クライマックスでは大胆なテヌートを仕掛けて大いに盛り上げるなど、ロジェストヴェンスキーは手練手管を尽くしたアプローチを披歴し、すこぶる豪快にして濃厚な味わいのチャイコフスキーが展開された。

したがって聴き応えは抜群だったし、聴いていて爽快無比な気分にも浸ったが、こと感動の度合いということになると、同じオケで先週聴いたスクロヴァチェフスキのベートーヴェンには遠く及ばないというのが正直なところだった。それは演奏の行き方がどうこうというのでなく純粋に曲自体の性質の違いからくる感想にほかならないし、実際ロジェストヴェンスキーの指揮は堂に入っていて素晴らしいものだったが、その解釈が徹底されていたがゆえ、双方の作品自体のキャパシティの差もまざまざと浮き彫りにされたような気がしてしまったというべきか。

オーケストラ編成に関しては少々腑に落ちなかった。16型なのにチェロ奏者が8人というイレギュラーなバランスだったからで、ふつう16型ならチェロ10人にコンバス8人というのが相場のところ、ここでは16-14-12-8-7という編成が採られていたのだが、これは本当にロジェストヴェンスキーの方針だったのだろうか。チャイコフスキーの後期のシンフォニーで低弦を厚くするならまだしも逆に薄くするというのは、どうなんだろうと思ったし、なにしろ金管パートがバンバン鳴っているのに低弦が薄いので局面によってはハーモニーの腰が軽いような印象を受けなくもなかった。

ロジェストヴェンスキー/読売日響のチャイコフスキー演奏会(10/6 東京芸術劇場コンサートホール)


10/6 東京芸術劇場コンサートホール
読売日本交響楽団 演奏会

指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー

ピアノ:ヴィクトリア・ポストニコワ

演目:
 チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番
 チャイコフスキー 交響曲第4番

アンコール:
 チャイコフスキー 「四季」より舟歌(ポストニコワ)

2012-10-06
開演前の様子

アンスネス/マーラー・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番&第3番


ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番・第3番
 アンスネス(pf)/マーラー・チェンバー・オーケストラ
 ソニー・クラシカル 2012年ライヴ 88725420582
88725420582

レイフ・オヴェ・アンスネスの弾き振りとマーラー・チェンバー・オーケストラの伴奏によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番&第3番。ソニー・クラシカルの新譜。2012年5月プラハ、ルドルフィヌムでのライヴ録音。

アンスネスといえば一昨年ノルウェー室内管を率いて来日した際のモーツァルト(ピアノ協奏曲第23番&第24番)を聴いて感動した記憶が忘れ難く、今回リリースのベートーヴェンの協奏曲集も早速入手した。

マーラー・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェンのピアノ協奏曲集というと2004年にリリースされたアルゲリッチの録音が思い出される。第2番と第3番の組み合わせであり、ピアニストと指揮者(アバド)それぞれの個性が絶妙な形で発揮された目覚ましいベートーヴェンだったが、残念ながら協奏曲全集の録音には発展せず、単発に終わった。今回のアンスネスのベートーヴェンは全集に発展するのか。

ブリュッヘン/18世紀オーケストラによるベートーヴェン交響曲全集(2011年ライヴ)


ベートーヴェン 交響曲全集
 ブリュッヘン/18世紀オーケストラ
 Glossa 2011年ライヴ GBSADV001
GBSADV001

フランス・ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラの演奏によるベートーヴェン交響曲全集。スペインGlossaの新譜。2011年10月ロッテルダム、デ・ドゥーレンでのライヴ録音。第九の歌手はレベッカ・ナッシュ(ソプラノ)、ウィルケ・テ・ブルンメルストローテ(メゾ・ソプラノ)、マルセル・ビークマン(テノール)、ミヒャエル・テーフス(バス)。

特典DVDとして「天国への九つの階段」というブリュッヘンが自身のベートーヴェン像を語るインタヴュー映像が入っており、これは日本語字幕付きとなっている。

GBSADV001dvd

ブリュッヘンのベートーヴェンの実演は昨年すみトリで新日本フィルとの演奏会で聴いて、その深い音楽の奥行きに感服させられたし、手兵18世紀オーケストラとの実演の方でも、2002年の来日公演におけるベートーヴェン交響曲の全曲チクルスのうちの第1」&「英雄」および「第9」の演奏会を聴いたが、そこでは円熟期を迎えたこのコンビが以前のような尖鋭と現在の円熟とを内部で融合させ、一種独特の風貌や深度を音楽に付与せしめていた。

今回リリースの新全集は、おそらく同コンビがかつて録音したベートーヴェン全集とはまた一味もふた味も異なる演奏となっているように思われるので、これは腰を据えてじっくりと聴いてみたいと思う。

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