ビエロフラーヴェク/BBC交響楽団によるスークの交響曲第2番「アスラエル」


スーク 交響曲第2番「アスラエル」
&ブリテン シンフォニア・ダ・レクィエム
 ビエロフラーヴェク/BBC交響楽団
 スプラフォン 2008年ライヴ SU4095
SU4095

イエジ・ビエロフラーヴェク指揮BBC交響楽団によるスークの交響曲第2番「アスラエル」。スプラフォンの新譜。2008年プラハの春国際音楽祭におけるプラハ市庁舎スメタナホールでのライヴ録音。また同じコンサートで演奏されたブリテンのシンフォニア・ダ・レクィエムも別CDに収録されている。

ビエロフラーヴェク/BBC響は昨年オニキスからリリースされたマルティヌー交響曲全集が非常に良かったが、今度はスプラフォンから同じチェコの作曲家であるスークのアスラエル交響曲のライヴが出たので早速入手した。

アスラエル交響曲はヨセフ・スークが作曲の師であるドヴォルザークの死を契機に、その哀悼の意を込めて作曲に着手し、1906年に完成した。死者の霊を導く天使とされるアスラエルがタイトルに据えられているが、これは前述のドヴォルザークの死と、そのドヴォルザークの娘にしてスークの妻であったオティリエの死を悼む意図から付けられたものであろうとされている。

マナコルダ/カンマーアカデミー・ポツダムによるシューベルトの交響曲第3番と「未完成」


シューベルト 交響曲第3番・第8番「未完成」
 マナコルダ/カンマーアカデミー・ポツダム
 ソニー・クラシカル 2011年 88691960642
88691960642

アントネッロ・マナコルダ指揮カンマーアカデミー・ポツダムの演奏によるシューベルト交響曲第3番・第8番「未完成」。ソニー・クラシカルの新譜。2011年4月・6月ポツダム、ニコライザールでのセッション録音。

アントネッロ・マナコルダはマーラー・チェンバー・オーケストラの元コンサートマスターであり現在はカンマーアカデミー・ポツダムの首席指揮者を務めている。

このシューベルトではモダン楽器オーケストラであるカンマーアカデミー・ポツダムを指揮しているが、ピリオド楽器奏法をベースとしつつホルン、トランペット、ティンパニに古楽器を使用するという折衷様式が採用されているとのこと。

韓国ワーナーの「J.S.バッハ・コレクターズ・エディション」


「J.S.バッハ・コレクターズ・エディション」
 アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥスムジクス他多数
 Warner Korea 1958年~1998年 WKC50D0021
WKC50D0021

韓国のワーナー・ミュージックより2010年にリリースされた、J.S.バッハの主要作品を集めた50枚組ボックスセット。

音源はワーナー傘下のテルデックとエラート両レーベルから選択されており、最も古い録音はカール・リヒターがミュンヘン国立歌劇場管弦楽団員を指揮して1958年に旧テレフンケンに録音した教会カンタータ集で、最も新しい録音は1998年のトン・コープマン指揮アムステルダム・バロック管弦楽団の復活祭オラトリオとなっている。

このボックスセットの通常の実売価格はどうやら1万5千円程度であり、それだって1枚あたり300円見当だから十分に安いのだが、今月それが某サイトの特売セールで5千円で販売されていた。みっともない話だが、あんまりの安さに釣られて入手してしまった。

無論いくら安いといっても中身がダブリ盤ばかりだったら無意味だが、このバッハ・エディションは幸いというか、未聴音源の割合が高かった。全50枚のうち20枚くらいを占めているのはアーノンクール/WCMのアナログ時代のバッハ録音だが、このうち1970年録音のマタイ受難曲は現在まで長らく廃盤状態となっていたこともあり未聴だったし、ほかにも、アラン・カーティスのイギリス&フランス組曲、ヘルベルト・タヘツィのフーガの技法、スコット・ロスのパルティータ全曲、グレン・ウィルソンの平均律クラヴィーア曲集全曲、トマス・ツェートマイアーの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲、イェルク・バウマンの無伴奏チェロ組曲全曲、アンドレアス・シュタイアーの編曲ソナタ集(ヤン・アダム・ラインケンの原曲をバッハが編曲したもの)といったあたりはいずれも未聴だった。なんとか時間をみつけて地道に聴いていこうと思う。

なお、音質をダブリ盤と比べてみようと思いコープマン/アムステルダム・バロックの手持ち2枚と聴き比べてみたが、ほとんど変わらなかった。変に手が加えられて音質劣化していると嫌だったので取りあえず安心した。

ビシュコフ/ケルンWDR交響楽団によるR.シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」


R.シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」、メタモルフォーゼン
 ビシュコフ/ケルンWDR交響楽団
 Avie 2001年 AV0017
AV0017

セミヨン・ビシュコフ指揮ケルンWDR交響楽団の演奏によるR.シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」とメタモルフォーゼン。英Avieより2003年にリリース。2001年ケルン・フィルハーモニーでのセッション録音。

今月ハーディング/新日本フィルの演奏会で耳にした「英雄の生涯」がとても良かったので久々に同曲のCDを求めたくなった。

それで物色していたら目についたのが本CD。なんでも「英雄の生涯」はビシュコフ/ケルンWDR響の得意レパートリーであり、このCDの録音も実演で40回以上も取り上げた末に満を持してセッションに臨んだものらしい。

読売日響の演奏会(7/21 東京オペラシティ・コンサートホール)の感想


①ドビュッシー 小組曲

元来はドビュッシーがピアノ連弾曲として作曲した作品だったが、後年ドビュッシーの友人アンリ・ビュッセルが管弦楽用に編曲し、こちらの方が今ではポピュラーとなっている。その原曲のピアノ連弾曲に関しては、最近入手したパスカル・ロジェの演奏によるCDで聴いたばかりだったが、こうして管弦楽版と聴き比べてみると、成程こちらの方が格段に聴き映えはする反面、原曲の持つ清楚なロマンティズムの味わいはかなり後退していて、やや通俗性の色が濃くなっているようにも思えた。

カリニャーニはアンサンブルを過不足なく取りまとめ、ややこじんまりとした演奏だったが、細部まで丁寧に音楽を織り上げていた。また作品の性質を考慮したのか、このドビュッシーのみ指揮棒を持たない空手のスタイルだった。

②サン=サーンス ハバネラ、序奏とロンド・カプリチオーソ

ヴァイオリニストは南紫音。2005年ロン=ティボー国際音楽コンクール第2位の実力派ヴァイオリニスト。さすがにボウイングの確かなテクニックは見事なものだったし、両曲ともに柔らかい肌ざわりのフレージングからサン=サーンス特有のメロディーの魅惑を存分に歌いあげ、聴いていて心地よい陶酔に誘われた。

少し気になったのが全体的にフレージングの線が細い点で、御本人の体型と同じく相当にスリムな響きに終始したが、局面によっては音の濃さを聴き手に強く印象づけたほうが曲想がより映えるようにも感じられた。ただ、ヴァイオリンの鳴り自体は決して悪くないのにフレーズの線が細いということは、おそらく確信的にそういう方向性で弾いているのだろう、という気もした。

③サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」 

カリニャーニは全体的に速めのテンポを基調としながら彫りの深い響きをアンサンブルから抽出しつつ作品本来の具有する強弱の壮大な音響レンジを浮き彫りにするという行き方であり、ことにフォルテッシモでのアンサンブルの燃焼力には目覚ましいものがあり、オーケストラを鼓舞して豪快な鳴りっぷりの大音響にまで持って行きながらも響きを飽和させず、常にハーモニーの輪郭をぼかさずに音楽の堂々たる威容を聴き手にまざまざと印象づける手腕には聴いていて感服する思いだったし、終楽章のコーダで披歴されたアンサンブルの猛加速など煽るところはきっちりと煽り、オペラティックともいうべき盛り上がりが形成されていた。こういった表現であるがゆえに聴き終えたあとの爽快感は格別なものだった。

このようなカリニャーニのドラマティックな指揮ぶりは確かにこの交響曲のスペクタクルな音響の醍醐味を味わうという面では十二分であった反面いささか外面的で一面的な表現とも取れなくもなく、サン=サーンスの音楽の持つ内省的な思索や内面的な美しさという方面に関しては何かしら味気なく、聴き終えたあとも上記のようにすこぶる爽快な気分に満たされつつ、こうも一面的なアプローチで本当に良かったのかしら的な漠然としたクエスチョンも脳裏によぎったというのが正直なところだった。

サン=サーンスのオルガン付きに関しては、以前にフランス国立放送フィルの来日公演で聴いたときも今回と同じような爽快感と同時に漠然とした疑念を抱いてホールを後にしたことを覚えているが、もしかしたら自分のなかに、この交響曲に対して過剰な期待感を抱いているところがあるのかもしれない。この交響曲は本当はもっともっと底の深い音楽ではないかという思いこみを抱いているから演奏を素直に享受できないのかもしれない。そんなことを聴き終えて思った。終演後の客席の反応は上々だった。

読響のコンサートにしては珍しくアンコールが。曲目は当然フランス系かと思いきやプッチーニのマノン・レスコー間奏曲が始まった。そういえばカリニャーニは先週、上野で二期会のカヴァレリア・ルスティカーナとパリアッチを指揮し、絶賛を博していたのだった。

読売日響の演奏会(7/21 東京オペラシティ・コンサートホール)


7/21 東京オペラシティ・コンサートホール
読売日本交響楽団 演奏会

指揮:パオロ・カリニャーニ
ヴァイオリン:南紫音

演目:
 ドビュッシー 小組曲
 サン=サーンス ハバネラ
 サン=サーンス 序奏とロンド・カプリチオーソ
 サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」

アンコール曲:
 プッチーニ 「マノン・レスコー」間奏曲

2012-07-21
開演前の様子

ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管によるシューベルトの交響曲第3番&第4番


シューベルト 交響曲第3番・第4番「悲劇的」
 ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
 RCA 2011年 88691963792
88691963792

デイヴィッド・ジンマン指揮チューリヒ・トーンハレ管弦楽団によるシューベルトの交響曲第3番と第4番「悲劇的」。RCAの新譜。2011年チューリヒ、トーンハレでのセッション録音。

ジンマン/トーンハレのシューベルトチクルスのCDとしては既に交響曲第1番、第2番、「未完成」がリリースされているが、いずれも従来の演奏観念に捉われない斬新なシューベルト像の提示が新鮮を極めている。今回の3番&4番も早速入手した。

クラッゲルードとエンゲセト/ダーラ・シンフォニエッタによる北欧のヴァイオリン名曲集


北欧のヴァイオリン名曲集
 クラッゲルード(vn) エンゲセト/ダーラ・シンフォニエッタ
 ナクソス 2011年 8572827
8572827

ヘンニング・クラッゲルードのヴァイオリン演奏とビャルテ・エンゲセト指揮ダーラ・シンフォニエッタの伴奏による北欧のヴァイオリン名曲集。ナクソスの新譜。2011年5月スウェーデン、ファルン・クリスティーネハレでのセッション録音。

収録曲は以下の通り。

①オルセン ノルウェイ、ロムからの6つの古い村の歌
②アッテルベリ ヴァイオリン、ヴィオラ、弦楽オーケストラのための組曲第3番(2台ヴァイオリンと弦楽版、世界初録音)
③ステーンハンマル ヴァイオリンとオーケストラのための2つの感傷的なロマンス
④ブル ハヴァナの思い出
⑤ブル 山の幻影(ヴァイオリンと弦楽合奏版)
⑥ハルヴォルセン ヴァイオリンとオーケストラのためのノルウェイ舞曲第3番
⑦シベリウス ヴァイオリンとオーケストラのためのユモレスク(Op.87&89)
⑧シンディング 晩景

クラッゲルードの新譜としてはシンディングのヴァイオリンとピアノのための作品集(第2集)以来2年ぶりのリリースになるが、このヴァイオリニストの北欧作品に対する情熱ならびに演奏の素晴らしさは尋常一様のものでなく、今回の北欧名曲集も早速入手した。

それにしても日本語帯のタイトルが「ノルウェーのヴァイオリン名曲集」となっているのは明らかに変。「NORDIC」を誤訳したのか?

バレンボイム/ウエスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラによるベートーヴェン交響曲全集


ベートーヴェン 交響曲全集
 バレンボイム/ウエストイースタン・ディヴァン・オーケストラ
 デッカ 2011年ライヴ 4783511
4783511

ダニエル・バレンボイム指揮ウエスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラによるベートーヴェン交響曲全集。英デッカの新譜。2011年8月ケルンでのライヴ録音。第9終楽章の歌手はアンナ・サムイル(ソプラノ)、ヴァルトラウト・マイアー(メゾ・ソプラノ)、ペーター・ザイフェルト(テノール)、ヴォルフガング・コッホ(バス)。

ウエスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラはイスラエルとレバノンの対立を軸とする中東紛争を憂えたパレスチナの文学者エドワード・サイードが、音楽による異人種の共生をテーマとしてバレンボイムともに1999年に創設したオーケストラであり、そのメンバーは中東地域から国籍を越えて(エジプト、シリア、レバノン、ヨルダン、チュニジア、イスラエル)集められた14歳から25歳の若い音楽家たちによって構成されている。

このような明確な演奏理念を持つ若い多国籍オケを指揮したバレンボイムがどのようなベートーヴェン像を披歴するか、ぜひ聴いてみたいと思い入手した。

そのバレンボイムのベートーヴェン交響曲全集といえば以前にベルリン・シュターツカペレを指揮して録音したセットが思い出される。

3984-27838-2
ベートーヴェン 交響曲全集
 バレンボイム/ベルリン・シュターツカペレ
 テルデック 1999年 3984-27838-2

これはリリース当初、昨今では珍しくなった重厚なフォームでの、本格的なベートーヴェンとして評判になったし、個人的な印象としてもバレンボイムの表現自体には惹かれるものが多かった。ただ音質が若干プアであり、このコンビの実演を何度か耳にした印象からすると、もう少し潤いのあるアコースティックであればさぞかしとも思えるものだった。

今回のベートーヴェン全集はCD5枚組でのリリースであり、演奏時間の関係でCD6枚組でのリリースだった旧全集と比べると全体的にタイムが若干スリムになっている。

エトヴェシュ/UMZEアンサンブルによるリゲティとクルタークの作品集


リゲティ メロディーエン、チェロ協奏曲
&クルターク 「亡きR.V.トルーソヴァのメッセージ」ほか
 エトヴェシュ/UMZEアンサンブル、ペレーニ(vc)ほか
 BMC 2009年ライヴ BMCCD162
BMCCD162

ペーター・エトヴェシュ指揮UMZEアンサンブルの演奏によるリゲティとクルタークの作品集。ハンガリーのBMC(ブダペスト・ミュージック・センター)レーベルの新譜。「ペーター・エトヴェシュ、カーネギー・ホールでリゲティ&クルタークを振る」というCDタイトルの示す通り2009年ニューヨーク、カーネギー・ホールでのライヴ収録となっている。

収録曲はリゲティのチェロ協奏曲、メロディーエンおよびクルタークの「亡きR.V.トルーソヴァのメッセージ」、「アンナ・アフマトーヴァによる4つの詩」の4曲。このうちリゲティの協奏曲のチェロ独奏をミクローシュ・ペレーニが、クルタークの2つの歌曲のソプラノ歌唱をナターリャ・ザゴリンスカヤが務めている。

ハンガリーの名手ペレーニは、今年ECMからリリースされたブリテン・バッハ・リゲティの無伴奏チェロ作品集が素晴らしかったが、このBMCの新譜ではリゲティのチェロ協奏曲の独奏を務めているということで早速入手した。

現代ハンガリーの作曲家クルタークは今年86歳となる現在も壮健に作曲活動を続けており、その最新作として2009年にカーネギー・ホールで世界初演された「アンナ・アフマトーヴァによる4つの詩」のライヴが本CDに収録されている。もうひとつの収録曲「亡きR.V.トルーソヴァのメッセージ」はクルタークの出世作として認知されており、こちらは1981年にパリでシルヴァン・カンブルラン指揮アンサンブル・アンテルコンタンポランにより初演されている。

パーヴォ・ヤルヴィ/フランクフルト放送響によるハンス・ロットの交響曲


ロット 交響曲、管弦楽のための組曲への2つの楽章
 P.ヤルヴィ/フランクフルト放送交響楽団
 RCA 2010年 88691963192
88691963192

パーヴォ・ヤルヴィ指揮 フランクフルト放送交響楽団の演奏によるハンス・ロットの交響曲第1番ホ長調。RCAの新譜。2010年フランクフルト、アルテ・オーパーでのセッション録音。同じ作曲家の「管弦楽のための組曲への2つの楽章」という作品も収録されており、こちらは同年フランクフルト、ヘッセン放送ゼンデザールでのセッションであり、世界初録音と銘打たれている。

先月の来日公演で耳にしたマーラーが素晴らしかったパーヴォ・ヤルヴィ/フランクフルト放送響の新譜ということで入手した。

ハンス・ロットは1858年にウィーンに生まれ、ウィーン音楽院においてブルックナーにオルガンを師事し、マーラーとも親交を結ぶも、敬愛するブラームスに自作を酷評されたことにより精神を病み、25歳という若さで世を去った悲運の作曲家として近年ポピュラリティが高まっている。

とりわけ後年マーラーが作曲する一連のシンフォニーの先駆けとして注目されているホ長調の交響曲に関しては録音も現在まで相当数がリリースされているし、知られざる作曲家という評価も一昔前のこととなりつつある。

このロットの交響曲の従来の録音では、個人的には以下のセーゲルスタム盤の濃密な演奏が忘れ難い。

BIS-563
ロット 交響曲
 セーゲルスタム/ノールショピング交響楽団
 BIS 1992年 BIS-563

ちなみに上記セーゲルスタム盤の総タイムは64分だが、今回のヤルヴィ/フランクフルト盤の総タイムは54分となっている。

アポロ・アンサンブルによるハイドンの交響曲第18番・第28番・第52番


ハイドン 交響曲第18番・第28番・第52番
 アポロ・アンサンブル
 Centaur 1998年 CRC2447
CRC2447

ジョン・シュー指揮アポロ・アンサンブルの演奏によるハイドンの交響曲第18番・第28番・第52番。米CentaurのCD。1998年アメリカ、マサチューセッツでのセッション録音。

先月このオーケストラの最新録音であるハイドンの交響曲第6番~第8番のCDを入手したことはブログに書いたが、これが大当たりだった。まさに極上のピリオド・アンサンブルによる洗練を極めたハイドンの音楽に耳を洗われた。

そのCDの解説によると、このオランダのピリオド・オーケストラは既にハイドンの録音を数多くリリースしているということで、がぜん他の録音も聴いてみたくなったが、現状ほとんどが廃盤となっているようで手に入りにくく、かろうじて本CDを入手できた。

ハーディング/新日本フィルの演奏会(7/7 すみだトリフォニーホール)の感想


①シューベルト 交響曲第8番「未完成」

そういえば昨年サントリーホールで聴いたインバル/都響の「英雄の生涯」の時も前半がシューベルトの交響曲(第5番)だったが、、、シューベルトと「英雄の生涯」は相性がいい、、のか?

ハーディングは沈着なスタンスから丁寧にアンサンブルを紡ぎ、ふっくらと柔らかい音を印象づける美しいシューベルトを表現。14型の規模にしては今一つ鳴りが弱く、前記インバル/都響の12型のシューベルトよりも弱いくらいだったが、そのぶんタイトに引き締まった響きの緊密な組み上げが素晴らしく、第1ヴァイオリンとチェロを隣接させる配置パターンも上声と下声の一体感を強めるのに貢献していたようであり、音楽の揺るぎない構築感と音響的な洗練味が出色だったし、聴いている時は多少迫力不足かとも思えたものの、聴き終えてみると意外に余韻の深い演奏だった。

②R.シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」

この曲はハーディングのお気に入りの作品なのだとか。ハーディング/新日本フィルのリヒャルト作品の実演は3年前に「死と変容」をサントリーホールで聴いたことがあったが、この時は正直さほど強い感銘は受けなかったので(後半のベートーヴェンの「エロイカ」は素晴らしかったが)、今回も半信半疑だったが、フタを開けてみれば感銘の度合いは今回の方が格段に上だった。

一応プログラムに掲載の予定タイムには約40分とあったが、実際は50分オーバーと平均より少し長めのタイムだった。これは主として例の愛人と英雄との会話のシーンでハーディングが遅めのテンポを維持し、徹底的にメロディを歌うことに拘ったことによるが、それは濃密に旋律線を浮き上がらせるというよりは、むしろメロディの心地よい流れを重視し旋律の清らかな美感を聴き手に意識させるという行き方だったので、そこには濃厚な人間ドラマというよりもむしろ純粋な音楽の抽象美とも形容すべき興趣が充溢していたし、他の段においてもハーディングは過分に響きの構えを広げず、贅肉感の少ない、いわば筋肉質の音響構成に徹していたので、16型の分厚いアンサンブルにしては意外なくらいの透明感を引き出すことにも成功し、この作品は実のところ室内楽と紙一重なんだなと思わせるシーンも多かった。そのあたりが聴いていて素直に新鮮だったし、あらためて本作品の魅力的な旋律の多彩さに気付かされる思いだった。

のではあるが、このハーディングの「英雄の生涯」には、ある種のメリハリがいまひとつ欠けていたようにも思えた。例えば昨年のインバル/都響の「英雄の生涯」では細大漏らさぬ緻密なアンサンブル処理から繰り出される覚醒的な音響の緊迫感が素晴らしく、ここぞというクライマックスではアクセルを思い切りよく踏み込み熾烈な音響の充溢を躊躇しないという強メリハリ型の表現スタイルであったがゆえに、このリヒャルトの交響詩に潜在するところの猛々しい感情の奔流が強度のリアリズムを帯びて聴き手に迫ってくるような演奏にまで昇華されていたように思われた。そういったあたりが今回のハーディングの演奏ではおしなべて大人しく、確かに純音楽的に練り切られていたが、こと音楽のどぎつい表情の浮き出しという側面に関しては総じて抑制が掛かっていた。

無論これは解釈の方向性の違いであり優劣の問題ではないが、あくまで個人的な印象としては今回のハーディングよりも昨年のインバルの方が幾分か面白く聴けた。しかし人によってはハーディングの「英雄の生涯」の方の演奏を音楽的に上質の表現と捉えて強く惹かれても全く不思議でないし、あるいはそういう聴き手の方が多いのかも知れない。終演後の客席は大いに沸いていた。おそらく来年のアルミンク退任後はハーディングが同フィルの中核的な存在となるのだろうし、今日と同じくらい水準の高い演奏を耳にする機会も増えそうだ。

ハーディング/新日本フィルの演奏会(7/7 すみだトリフォニーホール)


7/7 すみだトリフォニーホール
新日本フィル 定期演奏会

指揮:ダニエル・ハーディング

演目:
 シューベルト 交響曲第8番「未完成」
 R.シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」

2012-7-7
開演前の様子

ギーレン/バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団によるベートーヴェン交響曲全集


ベートーヴェン 交響曲全集
 ギーレン/バーデンバーデン・フライブルクSWR交響楽団
 ヘンスラー 1997~2000年ライヴ 93285
93285

ミヒャエル・ギーレン指揮バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団(旧・南西ドイツ放送交響楽団)の演奏によるベートーヴェン交響曲全集。独ヘンスラーの新譜。1997~2000年ドイツ、フライブルク・コンツェルトハウスでのライヴ録音。第9の終楽章の歌手はレナーテ・べーレ(ソプラノ)、イヴォンヌ・ナエフ(アルト)、グレン・ウィンスレイド(テノール)、ハンノ・ミュラー=ブラッハマン(バス)。

ギーレンのベートーヴェン交響曲全集の録音としては2度目のリリース。

5600892
ベートーヴェン 交響曲全集
 ギーレン/南西ドイツ放送交響楽団
 EMIクラシックス 1986~1994年 5600892

こちらの旧全集においてはギーレンの持ち前のザッハリヒなスタンスから怜悧に音を刻むことにより非情緒的にしてシビアな趣きのベートーヴェン像を打ち立てており、その硬質な音楽の雰囲気には独特のインパクトがあった。しかし惜しむらくはEMIの音質が全般にモサッとしていた。

今回は放送用ライヴのCD化ということだが、このレーベルは音質に定評があるし、この指揮者の個性的なベートーヴェンを良質な音で改めて聴いてみたいと思い入手した。

ロジェによるドビュッシーのピアノ作品全集


ドビュッシー ピアノ作品全集
 ロジェ(pf)
 オニキス 2004~2011年 ONYX4095
ONYX4095

パスカル・ロジェの演奏によるドビュッシー・ピアノ作品全集。オニキス・レーベルの新譜。2004~2011年スイス、ラ・ショー=ド=フォン音楽ホールでのセッション録音。ドビュッシーが作曲した一連のピアノ独奏曲、4手連弾曲ならびに2台ピアノ用作品がCD5枚に収録されている。4手連弾曲と2台ピアノ曲ではアミ・ロジェとのデュオ。

2012年の今年はドビュッシー生誕150周年ということでCDが活発にリリースされているが、そのなかにあってもフランスの名ピアニストであり、20代前半でデッカにラヴェルのピアノ作品全集を録音するなどフランス作品のエキスパートとして名高いパスカル・ロジェによる、このドビュッシー全集の登場には食指をそそられたので入手した。

ディクソン/ヘッセン放送交響楽団によるベートーヴェンの第9


ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」
 ディクソン/ヘッセン放送交響楽団
 Audite 1962年ライヴ AU95620
AU95620

ディーン・ディクソン指揮ヘッセン放送交響楽団の演奏によるベートーヴェン交響曲第9番「合唱」。独Auditeの新譜。1962年フランクフルト・アム・マイン、ヘッセン放送ゼンデザールでのライヴ録音。終楽章の歌手はフリッツ・ヴンダーリヒ(テノール)、テオ・アダム(バス・バリトン)、マルガ・ヘフゲン(アルト)、矢野 滋(ソプラノ)。
 
貴重な歴史的音源の発掘に定評のあるAuditeだが正直このCDに関しては最初に見たとき何だろうと思ってしまった。だいたいベートーヴェンの第9のCDのジャケット写真がテノール歌手というのが異様。無名に近い指揮者とドイツのローカルオケという顔合わせだが、歌唱陣はヴンダーリヒ、アダム、ヘフゲンという豪華な顔ぶれ。その錚々たる歌唱陣に混ざっているのは日本人のソプラノ歌手、、、?

ライナーノートの情報によるとディーン・ディクソンという指揮者はアフリカ系アメリカ人の黒人指揮者で、1915年ニューヨークに生まれジュリアード音楽院での研鑽を経てニューヨーク・フィル、ボストン響、フィラデルフィア管などに客演指揮として登場するも、黒人に対する差別意識の根強い当時のアメリカにおいては恒久的なポストを手にすることが困難だったため、ヨーロッパへ渡り、1953年にエーテボリ交響楽団の音楽監督に就任、さらに1961年からはヘッセン放送響のチーフ・コンダクターに就任するという経歴の持ち主とされている。

ソプラノの矢野滋(しげ)に関してはライナーノートにも情報が少なく、カリフォルニアでロッテ・レーマンに師事した経歴を持つ若手の日本人ソプラノ歌手とあるのみだが、これだけの顔ぶれの歌唱陣と肩を並べていることから、おそらく当時のヨーロッパでは相応の実力と知名度の持ち主だったのだろう。

正直もの珍しさから入手したCDだったが、上記のように肌の色のハンディキャップを跳ね返しヨーロッパでキャリアを築いた黒人指揮者の指揮する第9とはどのような演奏か、がぜん興味が湧いた。知られざる日本人ソプラノの歌唱ともども、じっくりと耳を傾けてみたい。

サロネン/ロサンジェルス・フィルによるショスタコーヴィチの交響曲第4番と歌劇「オランゴ」プロローグ


ショスタコーヴィチ 歌劇「オランゴ」プロローグ、交響曲第4番
 サロネン/ロサンジェルス・フィル
 グラモフォン 2011年ライヴ 4790249
4790249

エサ=ペッカ・サロネン指揮ロサンジェルス・フィルハーモニックの演奏によるショスタコーヴィチの歌劇「オランゴ」プロローグおよび交響曲第4番。独グラモフォンの新譜。2011年12月ロサンジェルス、ウォルト・ディズニー・コンサート・ホールでのライヴ録音。

ショスタコーヴィチの作曲とされる「オランゴ」というオペラは初耳だ。ライナーノートによるとロシアの十月革命15周年記念作品として1932年に委嘱されたオペラのようで、オランゴというのはオランウータンと人間との異種交配により造り出された猿人の名称とされている。台本は当時ロシアで人気を博していたSF作家アレクセイ・ニコラエヴィッチ・トルストイが手掛けているとのこと。

しかしながら当時のスターリン独裁体制下のソビエトにおいて上記のようなぶっとんだ台本は危険と判断した作曲家は、最終的に完成を断念してしまい、その生前は日の目を見ることはなく、長らく埋もれた存在となっていたが、21世紀になってモスクワで本オペラのプロローグに相当する部分のピアノ・スコアが発見されたのを契機とし、ショスタコーヴィチ未亡人の承諾を得てジェラード・マクバーニーによりオーケストレーション化され、2011年にサロネン指揮ロサンジェルス・フィルのコンサートで世界初演された、というのが大まかな経緯らしい。

カップリングの交響曲第4番は周知のように1930年代の若きショスタコーヴィチの激烈なまでの前衛精神の結晶ともいうべき作品だが、こちらも「オランゴ」と同じ時期に作曲され、しかし30年近く封印状態にされた作品。このシンフォニーと同じ時期に手掛けられたオペラとなれば、その過激な台本にも何となく納得がいくような気がする。

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