ヴァント/北ドイツ放送交響楽団によるムソルグスキー=ラヴェル編「展覧会の絵」1982年のライヴ


チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番
&ムソルグスキー=ラヴェル編 組曲「展覧会の絵」
 ボレット(pf) ヴァント/北ドイツ放送交響楽団
 Profil 1985年・82年ライヴ PH09029
PH09029

ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団の演奏によるムソルグスキー=ラヴェル編・組曲「展覧会の絵」。独Profilの新譜。1982年ハンブルク、ムジークハレでのライヴ録音。併録されているホルヘ・ボレットのピアノ独奏によるチャイコフスキー・ピアノ協奏曲第1番の方は1985年ハンブルク、ムジークハレでのライヴ録音。

ヴァントの「展覧会の絵」の録音としては北ドイツ放送響との最晩年のライヴ盤、それに今年リリースされたベルリン・ドイツ響とのライヴ盤が既に出ているが、いずれもフランス風ともロシア風とも掛け離れた独自の厳しい色調感でありながらも音楽としての表出力に目覚ましいものがあり、今回の新譜も早速入手した。

7432172788-2
ムソルグスキー=ラヴェル編 組曲「展覧会の絵」
 ヴァント/北ドイツ放送交響楽団
 RCA 1999年ライヴ 7432172788-2

上記RCA盤の「展覧会の絵」の方にはドビュッシーの交響的断章「聖セバスティアンの殉教」がカップリングされているが、これは1982年9月20日ハンブルク、ムジークハレでのライヴとあり今回Profilから出た「展覧会の絵」の録音の日時と一致している。おそらく演奏会前半が「聖セバスティアンの殉教」で後半が「展覧会の絵」というプログラムだったのだろう。

ヤコフ・カスマンによるスクリャービンのピアノ・ソナタ全集


スクリャービン ピアノ・ソナタ全集
 カスマン(pf)
 Phaia-Music 1996・2003年 PHU019
PHU019

ヤコフ・カスマンのピアノ演奏によるスクリャービンのピアノ・ソナタ全集。パイア・ミュージックから今月リリースされたCD。1996・2003年のセッション録音。スクリャービンのピアノ・ソナタ第1番~第10番の全10曲がCD3枚に収録されている。

このレーベルから先般リリースされたプロコフィエフのピアノ・ソナタ全集を入手したことは先週ブログに書いたが、聴いてみると演奏内容、音質いずれもなかなかのもので、久しぶりにプロコフィエフのソナタを本格的なピアノ演奏で堪能した。

こうなると同レーベルからリリースの同じピアニストによるスクリャービンのピアノ・ソナタ全集の方も聴いてみたくなり、早速取り寄せた。

ゲルギエフ/ロンドン交響楽団およびマリインスキー劇場管弦楽団によるシャヒディの管弦楽作品集


シャヒディ 管弦楽作品集
 ゲルギエフ/ロンドン響 ・マリインスキー劇場管弦楽団
 メロディア 2010年・2011年 MELCD1002007
MELCD1002007

ワレリー・ゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団およびマリインスキー劇場管弦楽団の演奏によるトリブホン・シャヒディの管弦楽作品集。露メロディアの新譜。2010年ロンドンおよび2011年サンクトペテルブルクでのセッション録音。

最近のゲルギエフはロンドン響とマリインスキー管の双方の自主制作レーベルから活発にCDリリースを行っているが、今回の新譜はロシアの老舗メロディアからのリリース。収録されているのはシャヒディという作曲家の交響詩、バレエ音楽、クラリネット協奏曲(ソロ奏者イゴール・フェドートフ)、マーチなど計7曲で、このうち4曲をロンドン交響楽団が、残り3曲をマリインスキー劇場管弦楽団が演奏している。

正直まったく知らない作曲家だが、ゲルギエフ指揮ロンドン響とマリインスキーのオケによる演奏ということで入手した。そのトリブホン(トリブ・カーン)・シャヒディはCDに記載されているところによれば1946年にタジキスタンの首都ドゥシャンベに生まれ、旧ソ連時代のモスクワ音楽院において作曲をハチャトゥリアンに師事した経歴を持つ作曲家とのこと。

しかし、こと収録曲についてはライナーノートに解説が全然ない。曲の概要はおろか作曲年代すら書かれていないし、どういう背景なり思想のもとに造られた曲なのかさっぱり要領を得ない。まさか、ほとんど売れないのを見越して手を抜いた、とか?

なんにせよ現状ほぼ無名に近い作曲家の作品集なのだし、必要な情報はきちんと掲載すべきではないか?

アルテミス四重奏団によるシューベルトの後期弦楽四重奏曲集


シューベルト 弦楽四重奏曲第13番~第15番
 アルテミス四重奏団
 Virgin 2009年 6025122
6025122

アルテミス四重奏団によるシューベルトの弦楽四重奏曲集。英Virginの新譜。2009年ドイツ、ベルリンでのセッション録音。収録曲は弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」、同第14番「死と乙女」、同第15番の3曲。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲チクルスのCDが素晴らしかったアルテミス四重奏団が今度はシューベルトの四重奏曲集をリリースということで早速入手。

もっとも録音自体は先のベートーヴェン・チクルスの完成途上で行われている。同時代に生きながら対照的な性格をもつ、これら二人の偉大な作曲家のカルテットを並行して録音することは自分たちにとって大いなる挑戦だったと、同カルテットのチェロ奏者エカルト・ルンゲがライナーノートで述懐している。

アポロ・アンサンブルによるハイドンの交響曲第6番~第8番


ハイドン 交響曲第6番「朝」・第7番「昼」・第8番「夕」
 アポロ・アンサンブル
 Centaur 2010年 CRC3173
CRC-3173

アポロ・アンサンブルの演奏によるハイドンの交響曲第6番「朝」・第7番「昼」・第8番「夕」。米Centaurの新譜。2010年オランダでのセッション録音。

このハイドンの初期交響曲3部作は2年前に読売日響のコンサートで初めて実演を聴いた。そこではカンブルランの指揮によりハイドンの意外な先鋭性が巧く表現されていたのが面白く印象に残っているが、さすがに新譜となると数年に一度くらいしか出ないし、この機会にと思い入手してみた。

アポロ・アンサンブルはダヴィド・ラビノヴィチをリーダーとして1992年に設立されたオランダのピリオド・オーケストラであり、ハイドンの録音としては今回が通算14枚目のリリースとのこと。

ヤコフ・カスマンによるプロコフィエフのピアノ・ソナタ全集


プロコフィエフ ピアノ・ソナタ全集
 カスマン(pf)
 Phaia-Music 1993・94年 PHU008
PHU008

ヤコフ・カスマンのピアノ演奏によるプロコフィエフのピアノ・ソナタ全集。パイア・ミュージックから今月リリースされたCD。1993年・94年のセッション録音。プロコフィエフのピアノ・ソナタ第1番~第9番の全9曲がCD3枚に収録されている。

パイア・ミュージックは昨年に業務を停止したフランスのレーベル「カリオペ」の残した音源を受け継ぎ、それらをリマスタリングした上で改めて再発を行っているレーベルであり、音質も優秀と評判らしい。

試しに何か聴いてみたいと思い、このプロコフィエフのソナタ全集を取り寄せた。ヤコフ・カスマンは1997年ヴァン・クライバーン・コンクール第2位のロシア人ピアニスト。

NHK交響楽団の定期公演(6/16 NHKホール)の感想


①コダーイ ガランタ舞曲

プログラム前半をハンガリーで統一したいということから選ばれた演目だろうか。アシュケナージはアンサンブルを整然と無理なく鳴らし、ほどほどに盛り上げ、過不足なく、という風だった。この曲は以前に第一生命ホールでジャパン・シンフォニアの演奏で聴いたことがあるが、あの時はもっと室内楽的な奥行きの豊かさが感じられたが、それと比べると今回の演奏はホールのキャパの差ゆえかもしれないが、ちょっとスカスカした印象だった。

②バルトーク ピアノ協奏曲第2番

ピアニストはフランスの実力派、ジャン・エフラム・バヴゼ。このバルトークは随分と聴きごたえがあった。バヴゼのピアニズムは洗練された音色の訴求力が素晴らしい。弾力感に富んだ切れのあるタッチでバリバリ弾いているという風でありながら強引に弾き飛ばしている印象がなく、むしろ細やかなフレージングが不思議と訴えかけてくるあたりなど、独自の表出力に満ちていた。

第1楽章から流暢な指さばきで淀みなく推移するパッセージの鮮やかな色彩感が際立ち、フォルテッシモでも決して暴力的に弾かず、研ぎ澄まされた和音の洗練味が持続し、尖鋭なインパクトを叩きつける。第2楽章の印象主義風な弱音展開のあたりではドビュッシーの音楽のような透明にして寄る辺ない音色の美しさに惹き込まれたし、第3楽章の終盤などは正直もう少しピアノを打楽器的にガツンと打ちならしてもと思ったものの、最後まで統一性のある解釈でまとめあげ、この作品の持つ隠された色彩美を十分に堪能させられた。バックN響の金管奏者や打楽器奏者の名技も十分にものを言っていたし、終わってみれば実に刺激的で面白いバルトークだった。

③R・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」

16型編成だったがチェロ奏者が12人と少し多め。後で調べてみて分かったが、この曲は作曲家により16-16-14-12-12という編成が決められているらしい。

N響らしく手堅くソツのない演奏というべきか。本来こういう大編成の難曲はN響のようなポテンシャルの高いオケにはぴったりのはずだし、アシュケナージも大規模なオーケストレーションを整然と鳴らすことには長けている指揮者。要所要所での難しい金管ソロのフレーズなども難なくこなし、きちんと為すべきことを為し、適度に盛り上げ、適度に格調高く、適度に緻密で、適度に美しい。

その限りでは別に悪い演奏ではないと思うが、この曲には個人的に思い入れがほとんどないせいもあるかもしれないが、あまりに表情が普通すぎて今一つ面白味に欠ける演奏だったというのが率直なところで、これはというような凄味が最後まで伺われなかったのが残念だった。

一年ほど前にN響の定期でリヒャルトの「英雄の生涯」が取り上げられたのを聴いたときも今回と同じように空虚な気持ちでホールを後にしたことを覚えているし、その3日後にインバル/都響の演奏で同じ「英雄の生涯」の実演を聴いた時には自分でも意外なくらい感動したことも覚えている。この「ツァラトゥストラ」もいつかそういう目の覚めるような実演に出会う時が来るのかもしれない。

そんなことを思いつつ霧雨の降りしきるなかホールを後にした。

NHK交響楽団・定期公演(6/16 NHKホール)


6/16 NHKホール
NHK交響楽団 定期公演

指揮:ウラディーミル・アシュケナージ
ピアノ:ジャン・エフラム・バヴゼ

演目:
コダーイ ガランタ舞曲
バルトーク ピアノ協奏曲第2番
R.シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」

アンコール(バヴゼ):
ドビュッシー 前奏曲集より「亜麻色の髪の乙女」

2012-6-16
開演前の様子

ハイティンク/バイエルン放送交響楽団によるマーラー交響曲第9番


マーラー 交響曲第9番
 ハイティンク/バイエルン放送交響楽団
 Br-Klassik 2011年ライヴ 900113
900113

ベルナルド・ハイティンク指揮バイエルン放送交響楽団の演奏によるマーラー交響曲第9番。バイエルン放送響自主制作レーベルの新譜。2011年12月ミュンヘン、ガスタイク・フィルハーモニーでのライヴ録音。

齢80を超えてなお進境著しいハイティンク。マーラーの録音はシカゴ響との「復活」(これもいい演奏だった)以来ひさびさだが今回はヨーロッパの雄バイエルン放送響を指揮しての交響曲第9番のライヴということで早速入手した。

「マルタ・アルゲリッチ&フレンズ ライヴ・フロム・ザ・ルガノ・フェスティヴァル2011」


「マルタ・アルゲリッチ&フレンズ 
ライヴ・フロム・ザ・ルガノ・フェスティヴァル2011」
 アルゲリッチ(pf)ほか
 EMIクラシックス 2011年ライヴ 6447012
6447012

マルタ・アルゲリッチのピアノと多数の共演者によるライヴ録音集。EMIクラシックスの新譜。2011年6月ルガノ音楽祭でのライヴ録音。

演目および各演奏者は以下のとおり。

①ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第8番
 ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

②モーツァルト 4手のためのピアノ・ソナタK.497
 クリスティーナ・マルトン(ピアノ)
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

③ハイドン ピアノ三重奏曲HobXV:27
 ポリーナ・レシェンコ(ピアノ)
 アリッサ・マルグリス(ヴァイオリン)
 ユリアン・シュテッケル(チェロ)

④シューマン 幻想小曲集
 ゴーティエ・カプソン(チェロ)
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

⑤リスト 悲愴協奏曲
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
 リーリャ・ジルべルシュテイン(ピアノ)

⑥ラフマニノフ ピアノ三重奏曲第2番「悲しみの三重奏曲」
 デニス・コジュヒン(ピアノ)
 ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
 ヤン・ルヴィノワ(チェロ)

⑦ショスタコーヴィチ モスクワのチェリョムーシカ(3台pf版)
 ジョルジア・トマッシ(ピアノ)
 カルロ・マリア・グリグオーリ(ピアノ)
 アレッサンドロ・ステッラ(ピアノ)

⑧ラヴェル ラ・ヴァルス
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
 セルジオ・ティエンポ(ピアノ)

⑨ラヴェル ピアノ協奏曲
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
 スイス・イタリア語放送管弦楽団
 ヤツェク・カスプシク(指揮)

⑩ザレブスキ ピアノ五重奏曲ト短調op.34
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
 ドーラ・シュワルツベルク(ヴァイオリン)
 ルチア・ホール(ヴァイオリン)
 リダ・チェン(ヴィオラ)
 ゴーティエ・カプソン(チェロ)

目当ては⑨のラヴェル・ピアノ協奏曲。2年前のフィラデルフィア管の来日公演でアルゲリッチが弾く予定の演目だったが公演直前で惜しくも出演がキャンセルとなり聴き逃していた。

ムジカ・コンテクスタの声楽合唱によるウィリアム・バードのグレート・サーヴィス(大典礼曲)


ウィリアム・バード グレート・サーヴィス
 ムジカ・コンテクスタ
 Chaconne 2011年 CHAN0789
CHAN0789

ムジカ・コンテクスタの声楽合唱によるウィリアム・バードのグレート・サーヴィス(大典礼曲)。英シャンドスの古楽レーベルChaconneの新譜。2011年5月イギリスのアッパー・ノーウッド、セント・ジョンズ教会でのセッション録音。

「グレート・サーヴィス」はバードが当時のイギリス国教会のために作曲した礼拝音楽であり、テ・デウム、ベネディクトゥス、キリエなどの7曲で構成されるが、本録音では各曲の間にバード作曲のモテット、詩篇、アンセム、オルガン前奏曲などが適宜挿入される形で収録されている。器楽パートはイングリッシュ・コルネット・アンド・サックバット・アンサンブルが担当、オルガン・パートの演奏者はスティーヴン・ディヴァイン。

バードの声楽曲は先月のLFJにおけるマリア・ケオハネ&リチェルカール・コンソートの演奏会で聴いたが、そこで取り上げられたのは世俗歌だった。

イギリス・ルネサンスを代表する宗教音楽の大家として知られるバードの本領はやはり宗教曲だと思うが、ちょうどそのバードの本格的な宗教音楽の新譜がリリースされたので入手した。

クルト・ザンデルリング/スウェーデン放送交響楽団によるハイドンの39番とシューベルトの「グレート」


ハイドン 交響曲第39番
&シューベルト 交響曲第9番「グレート」
 ザンデルリング/スウェーデン放送交響楽団
 ヴァイトブリック 1994年・92年ライヴ SSS0133
SSS0133

クルト・ザンデルリング指揮スウェーデン放送交響楽団の演奏によるハイドンの交響曲第39番およびシューベルトの交響曲第9番「グレート」。ヴァイトブリックの新譜。1994年と92年、ストックホルム、ベルワルドホールでのライヴ録音。

名匠ザンデルリングの新たなライヴ録音のリリースとしては昨年末に出たモーツァルト39番&ベートーヴェン「田園」以来となる。今回も早速入手した。

なおザンデルリングは生前シューベルトの「グレート」の正規録音を残さなかったが、ケルン放送交響楽団を指揮した同曲の驚異的な録音がプライヴェート盤でリリースされている。

ELS01-109
シューベルト 交響曲第9番「グレイト」
 ザンデルリング/ケルン放送交響楽団
 EnLarmes 1980年代ライブ ELS01-109

フランクフルト放送交響楽団の来日公演(6/6 サントリーホール)の感想


2012-6-6b

①リスト ピアノ協奏曲第1番

ピアニストはアリス=紗良・オット。公演プログラムに掲載のインタヴュー記事にはリストの音楽へのひとかたならぬ思い入れが書かれていたが、当夜の演奏も立派なものだった。冴え渡るテクニックを背景に繰り出されるピアニズムの華麗を極めた表現力たるや聴いていて呆気にとられるほどのものだったし、鮮やかなパッセージワークから展開される個々のフレーズの妖艶なまでの美しさも特筆的だった。

敢えて難を挙げるならピアニズムの物理的というか重量的な意味での迫力だろうか。正直リストの1番というと個人的には最近CDで聴いたマツーエフの録音のように個々の打鍵にマッシブな重みを存分に効かせながら堅牢に構築された行き方の演奏が好きなので、当夜のアリス=紗良・オットの披歴したリストは若干ゾーンが外れていたが、こういうスタイルを好む聴き手にとってはこれ以上ないと言えるほどの演奏ではなかったかと思う。

②マーラー 交響曲第5番

法外なまでの純音楽的な醍醐味に満ちたマーラーだった。パーヴォ・ヤルヴィの指揮のもとに披歴されたフランクフルト放送響のアンサンブル展開は全編に渡って精緻を極め、恣意的なテンポ運用を抑制した直線型の造型と頑強な重低音(通常配置16型だったがチェロ11人コンバス9人と若干バスに厚みを持たせていた)をベースに組み上げられた音楽のフォルムは揺るぎなく、細部に至る完成度の高さ、音響的な情報量、いずれも圧巻の一言だった。

そして聴いていて思い出されたのが同じパーヴォ・ヤルヴィの指揮で昨年の秋に聴いたパリ管の来日公演でのストラヴィンスキー。この時も造型的にはオーソドックスな表現ながら音響的には非凡なものを聴き手に感知させるという行き方だったが、今回のマーラーでもオケは違えど、およそ奇をてらわずにオーケストラの非凡なパフォーマンスを磨き抜くことで作品の持つ途方もない奥行きをダイレクトに聴き手に意識させるという方針において確かな共通項が感じられた。

マーラーの5番にはあらゆる人間感情が錯綜して放り込まれているとまで言われる複雑で難解な表情の作品だが、当夜の演奏では何よりドイツ音楽然とした音楽の骨格が大事にされていたので、そういった複層的に絡み合うエモーショナルな色彩が理知的に練られて響き、それにより狂気や絶望、喜悦や享楽といった様々な情念を突き抜けたところにある純粋な音の快楽が透けて見えてくる。知情意が高いレベルで融合しているというべきだろうか。マーラーの音楽は情一辺倒では生きないが理一辺倒でも生きない。その危ういバランスだけが持ち得る音楽の稀有の緊張感を堪能したコンサートだった。

フランクフルト放送交響楽団の来日公演(6/6 サントリーホール)


フランクフルト放送交響楽団 来日公演
6/6 サントリーホール

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ:アリス=紗良・オット

演目:
リスト ピアノ協奏曲第1番
マーラー 交響曲第5番

アンコール:
(前半)リスト ラ・カンパネラ
(前半)ブラームス ワルツ第3番
(後半)ブラームス ハンガリー舞曲第5番
(後半)ブラームス ハンガリー舞曲第6番

2012-6-6a
開演前の様子

ガッティ/フランス国立管弦楽団によるドビュッシーの管弦楽作品集


ドビュッシー 管弦楽作品集
 ガッティ/フランス国立管弦楽団
 ソニー・クラシカル 2011年 88697974002
88697974002

ダニエーレ・ガッティ指揮フランス国立管弦楽団の演奏によるドビュッシーの管弦楽作品集。ソニー・クラシカルの新譜。2011年フランス、パリでのセッション録音。交響詩「海」、牧神の午後への前奏曲、管弦楽のための映像の3曲が収録されている。

ガッティは3年前のミラノ・スカラ座来日公演でのヴェルディの指揮ぶりが素晴らしかったがCDリリースは久しく無かった。ようやくソニーから手兵フランス国立管を指揮してのドビュッシーの録音がリリースされたので入手した。

ラトル/ベルリン・フィルによるブルックナー交響曲第9番(第4楽章補筆完成版)


ブルックナー 交響曲第9番
 ラトル/ベルリン・フィル
 EMIクラシックス 2012年ライヴ 9529692
9529692

サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるブルックナー交響曲第9番。EMIクラシックスの新譜。2012年2月ベルリン・フィルハーモニーでのライヴ録音。第4楽章補筆完成版による演奏であり、サマーレ・フィリップス・コールス・マッツーカ版の最新校訂に基づくスコアが用いられている。

キャラガン校訂版も含めて滅多に録音されない第4楽章補筆完成版だが、天下のベルリン・フィルがレコーディングしたとなると今後はポピュラリティが多少なり上がるかもしれない。

この補筆完成版に関しては個人的には正直さほど惹かれてはいないが、面白いと思う場面が一か所ある。

というのも、ブルックナーは交響曲の終楽章において同じ曲の先行楽章の主要主題を回想するということをしばしば試みているが、この交響曲第9番の第4楽章(のスケッチ)においては極端なことに、第1楽章から第4楽章までのすべての第1主題が同時に重ね合わせられて最強奏で出されるのだ。このラトルの録音だと終楽章の(20:25)からのシーンがそうだが、このように全楽章の主題が最後にまとめて一度に出るというやり方は類例に乏しいし、なにより巨大シンフォニーの幕切れに相応しいインパクトがある。

ただ、4つのテーマを同時にバランスよく奏でなければならないので、演奏する方は大変だろう。

庄司紗矢香とリス/ウラル・フィルによるショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番&第2番


ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番
 庄司紗矢香(vn) リス/ウラル・フィルハーモニー管弦楽団
 Mirare 2011年 MIR166
MIR166

庄司紗矢香とドミトリー・リス指揮ウラル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番&第2番。仏Mirareの新譜。2011年8月ロシア、エカテリンブルク・フィルハーモニーでのセッション録音。

先月のLFJにて同じ顔合わせで聴いた協奏曲第1番の実演が素晴らしかったので入手。

ブロムシュテット/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管によるブルックナー交響曲第4番


ブルックナー 交響曲第4番
 ブロムシュテット/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
 Querstand 2010年ライヴ VKJK1018
VKJK1018

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏によるブルックナー交響曲第4番。独クヴェルシュタントの新譜。2010年10月ゲヴァントハウス大ホールでのライヴ録音。

このレーベルから継続的にリリースされているブロムシュテット/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のブルックナー・シリーズは毎回楽しみに聴いているので今回の4番も早速入手。これで3番から8番までの6曲がリリースされた。次回リリースはおそらく9番か。

ゲヴァントハウス管のブルックナー4番というと2009年の来日公演で聴いたリッカルド・シャイーの演奏が思い出される。しなやかなアンサンブルの展開から時には強烈な変わり身の速さでドラマティックな起伏力を聴き手に印象づけていたが、フォルムは少々崩れ気味だった。ブロムシュテットが振るとどう変わるか注目したい。

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