マゼール/クリーヴランド管によるガーシュウィンの歌劇「ポーギーとベス」全曲
ガーシュウィン 歌劇「ポーギーとベス」全曲
マゼール/クリーヴランド管弦楽団
デッカ 1975年 F90L-50212/4

先日、ワレリー・ゲルギエフがロンドン交響楽団を指揮したバルトークの歌劇「青ひげ公の城」全曲盤の新譜についての感想を掲載したのですが、そこでは外題役の青ひげ公にウィラード・ホワイトが配されていました。
その名前を目にして私の頭に浮かんできたのが、このマゼール/クリーヴランドの「ポーギーとベス」でした。ここでウィラード・ホワイトはポーギーを歌っているのですが、ちょうど彼がオペラ劇場にデビューした頃の録音で、これが「ポーギー歌い」としてのキャリアを築く契機ともなったと記憶しています。
久しぶりに、このマゼールの「ポーギーとベス」を、昨日と今日の両夜でひととおり聴いてみました。
これは言うまでもなくガーシュウィンの「ポーギーとベス」の古典的名盤として名高い録音で、同オペラ初の完全全曲盤、つまりノーカット・レコーディング・ディスクとされているものです。「黒人以外の歌手に歌わせてはならない」というガーシュウィンの指示に従い、歌唱陣はすべて黒人歌手で占められています。また、これがクリーヴランド管としての史上初のオペラ全曲録音となるものです。
この録音に際してロリン・マゼールは、「ポーギーとベス」をジャズでもミュージカルでもオペレッタでもなく、あくまでオペラとして録音する、という決意表明を行っていますが、その言葉の通り、演奏内容としても従来までのブロードウェイ風なムードを極力排そうというような、「本格派」の演奏という感じがするものです。音質も上々で、少しステレオ的プレゼンスが強調され過ぎている感もあるものの、デッカならではの鮮明度の高い音質水準は21世紀の現在においてもそれほど古さを感じません。
とはいえ、ノーカット・レコーディングとしたことに関しては、その歴史的意義は別として、聴いていて少し冗長感が先立つような印象も、正直受けます。特に第1幕がそうで、中盤で登場人物がクラップゲームに興じるシーンが長くてちょっともたれますし、終盤でクラウンがロビンズを殺害するシーンはかなり盛り上がるのですが、そこまでが長いですね。
そういう意味では、このオペラは第2幕に最も魅力を感じます。同幕第3場までのほのぼのとした空気はジャズ・オペラ特有の良さが充溢していますし、それがクラウンの唐突な出現を境に激変するあたりのメリハリもいいですし、第2幕第4場の緊張感にも素晴らしいものがあります。もちろん、第3幕のポーギーによるクラウン殺害場面にも圧倒させられます。
歌唱陣に関しては、演技力という点ではポーギー役のウィラード・ホワイト、そして歌という点では有名な「サマー・タイム」を歌うクララ役バーバラ・ヘンドリックスが秀逸です。両歌手ともにオペラ劇場にデビューした頃の録音なのに、良くこれだけ歌えるものだなと、改めて感心させられました。
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