クレーマー/BBCフィルによるハイドンの交響曲のライヴ集


ハイドン 交響曲第22番「哲学者」、第26番「哀歌」、第67番、第80番
 クレーマー/BBCフィルハーモニック
 BBCミュージックマガジン 2007〜09年ライヴ
BBC-2009-07

これはBBCミュージックマガジン2009年7月号の付録ディスクで、ニコラス・クレーマーの指揮BBCフィルの演奏により、ハイドンの4曲の交響曲がライヴ収録されています。

このCD(というか雑誌ですが)は、実は交響曲第67番を目当てに購入しました。

この曲は昨年9月のウィーン・フィル来日公演(サントリーホール)で取り上げられた曲で、私も生で聴いたのはそれが初めてでしたが、そこでウィーン・フィルの織りなした、交響曲というよりもむしろ室内楽的とも言うようなインティメートなアンサンブルの掛け合いの妙に、客席で聴いていてすっかり魅了させられました。

そして、このあたりの音楽の親密な妙感は、おそらくスタジオでカッチリ固めた録音よりも、むしろライヴの方が引き立つのではないかと思うのですが、しかしこの曲のライヴ録音など、果たしてあるのだろうか、と思っていたところ、折よくリリースされたのが本ライヴ盤というわけです。

さっそく交響曲第67番の演奏を聴いてみると、全体に編成の絞られたアンサンブルの織り成す軽妙なハーモニーが心地よさの限りで、弦といい管といい、各パートのフレージングにはスタジオ録音のようなカッチリ感は希薄で、各パートの自発性が程よく尊重されたような気さくなアンサンブル展開が、スタジオ録音とはまた一味違った音楽の生々しい息遣いを感じさせ、くだんのウィーン・フィルの生演奏での印象が、何だか聴いていて蘇ってくるようでした。

例えば第3楽章の(00:46)からミュート付きソロ・ヴァイオリンのデュオが織り成すトリオなど、このクレーマーの演奏で聴くといかにもインティメートな味わいに富んでいて、ハイドンの音楽を肩肘張らず、何気なく楽しむことができる、そんな雰囲気がこよなく醸し出されています。

このクレーマーの演奏の後で、同じ交響曲第67番を、ドラティ/フィルハーモニカ・フンガリカの演奏で聴いてみると、全体に弦の音圧が強く、造形的にもカッチリと一分の隙もないといった感じの、風格に満ちた立派な演奏で、これはこれで素晴らしいと思いますが、ちょっと立派すぎてナチュラルな表情感の醸成に弱いことも否めず、もちろん曲にも拠りますが、こと67番に関しては、私としてはドラティよりもクレーマーの演奏の方に惹かれました。

他の3曲も同じ演奏スタイルですが、第22番「哲学者」と第26番「哀歌」に関してはアンサンブル配置が一風変わっていて、通常配置のチェロの位置にオーボエが配置されています。つまり「弦と管の対向配置」になっているようです。

この変則配置に関しては、ブックレットにクレーマー自身による解説が記載されていますが、その英文を要約すると、つまりオーボエ奏者がヴァイオリンを正面視して演奏することになるので両パート間のユニゾンないし掛け合いに一体感が増し、より室内楽的な音彩が提供されるということのようです。

そう言われるとそんな気もしますが、むしろ印象的なのはオーボエの響きの、ヴァイオリンに対するユニークなバランスの方で、例えば第26番の(00:26)からの例の受難曲のメロディなど、普通の演奏だと弦の主旋律をオーボエが軽く支えるという感じに聴こえるところ、ここではオーボエの響きが弦のそれをふっくらと包みこむような独特のバランスで聴こえてきます。そのハーモニーの意外な新鮮さと美しさにはちょっと陶酔させられました。

ところで、こういうのは日本の音楽雑誌などではやはり難しいのでしょうか。やって欲しいのですけど、、、

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