若杉弘/ドレスデン・シュターツカペレによるマーラー交響曲第1番「巨人」
マーラー 交響曲第1番「巨人」
若杉弘/ドレスデン・シュターツカペレ
ソニー・クラシカル 1986年 32DC1060

若杉弘氏の訃報が報じられました。昨日、東京都内の病院で多臓器不全のため死去されたとのことです。享年74歳。御冥福をお祈りします。
氏の実演には幾度となく接し、その意欲的なプログラムも含めて、常にクオリティの高い演奏を聴かせてくれていただけに、残念です。最近、めっきり指揮台に立たれる機会が減っていただけに、気になってはいたのですが、、、
そこで今夜は、氏の代表盤として名高い、このドレスデン・シュターツカペレを指揮してのマーラー「巨人」を聴いて故人を偲ぶことにしました。
なぜかマーラーのシンフォニーをほとんど録音しない、この名門オーケストラによる数少ないマーラーですが、ここでは氏の良い意味で抑制を利かせたオーケストラ・ドライブが、アンサンブルからまろやかで奥行きのある音響の感触を引き出していて、正調ながらも聴き進むほどに味わいが深まる、そんな感じの演奏ですね。
第1楽章の序部や提示部などの弱音主体の場面、のみならずコーダなど急速テンポのフォルテの場面においてさえも耳に挑まない、しっとりとした響きのまろやかさが絶えず、このオーケストラがマーラーを演奏するとこういう風に響くのか、という啓示に富んでいますし、第2楽章の愉悦感も、第3楽章の哀愁味も、そして終楽章の動と静のダイナミズムも、いずれもオーソドックスなスタイルからアンサンブルの卓越した表現力でもってキメ細かく、そして過不足なく描き出されていて、コクのあるドレスデン・サウンドの妙音と相まって、単に完成度が高いというにとどまらず、聴き終えて深々とした余韻が残る演奏でした。あらためて、いい演奏だなと思いました。
このドレスデン・シュターツカペレとの「巨人」は、またオペラの分野でも実績の豊かな氏の表現力の面目躍如という感もあり、名実ともに氏の代表盤というに相応しいような気がします。
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