デュトワ/フィラデルフィア管によるラフマニノフの交響曲全集


ラフマニノフ 交響曲全集、管弦楽・声楽作品集
 デュトワ/フィラデルフィア管弦楽団
 デッカ・タワーレコード 1990〜93年 PROC-1006/9
PROC-1006-9

これは先月、タワーレコードから復刻リリースされた、シャルル・デュトワ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏によるラフマニノフの交響曲と管弦楽・声楽作品集です。

3曲の交響曲に加えて、交響詩「死の島」、幻想曲「岩」、「交響的舞曲」の各管弦楽作品と、合唱交響曲「鐘」、カンタータ「春」、「3つのロシアの歌」の各声楽作品(いずれもフィラデルフィア芸術協会合唱団の合唱で、ソプラノはアレクサンドリナ・ペンダチャンスカ、テノールはカルディ・カルドフ、バリトンはセルゲイ・レイフェルクス)がCD4枚に収録されています。

デュトワ/フィラ管のラフマニノフは、交響曲第2番を収録したCDを持っていて、それは演奏としても上々なので同じ顔合わせによる2番以外のCDも欲しいと思っていたのですが、そちらはこれまで再発盤も出ず、中古盤も見つからず、という状態でした。それがこのたび思いがけず再発され、喜んで購入しました。

デッカ・レーベルによるラフマニノフの交響曲全集というと、一般には以下のアシュケナージのものが良く知られていると思います。

455798-2
ラフマニノフ 交響曲全集
 アシュケナージ/アムステルダム・コンセルトヘボウ
 デッカ 1980〜84年 455798-2

これはデッカのドル箱とも言われる人気盤で、これまでも幾度となく再発されてきたロングセラーです。

どうもデュトワ/フィラ管の一連のラフマニノフは、これまで同じデッカのアシュケナージ/コンセルトヘボウ盤の人気の割りを食っていたような感じだったのですが、それが今回、こうして全集の形で廉価で再発されたのは喜ばしい限りで、さっそく一連の演奏に耳を傾けてみました。

音質的には、アシュケナージ/コンセルトヘボウ盤と比べるならば一歩を譲る感もありますが(むしろアシュケナージ盤の音質の良さが常軌を逸しています)、優秀な音質であることに疑いはなく、その高音質を背景に、デュトワ/フィラ管ならではとも言うような美彩なオーケストラ・サウンドの粋を存分に満喫させられる演奏です。

一連の収録曲の中でも、特に交響曲第3番の演奏が一頭地を抜いていると感じました。この曲は、世界初演がフィラ管、世界初録音もフィラ管(しかもラフマニノフ自身の指揮)という、このオーケストラゆかりの作品ですが、曲想的にも華麗なフィラデルフィア・サウンドに良くフィットしていますし、当意即妙なデュトワの指揮ぶりもその面目躍如という感じがします。

第1楽章では、例えば(1:58)からの第2テーマに聴かれるチェロの音色のエレガンシー、メロディの夢想な味わいなど、聴いていて強力に惹き込まれますし、展開部後半(9:42)あたりから(11:46)の再現部までのクライマックス形成に聴かれるアンサンブルの充実した迫力と響きのめくるめく光彩美など、まさにフィラデルフィア・サウンドの醍醐味が全開という風で聴き惚れるばかりです。

そうかと思うと、第2楽章ではフィラ管のアンサンブルの各種ソロの技量の豊かさがこよなく印象的であって、冒頭のホルンや、それを受けるヴァイオリンのソロ、あるいは(2:06)からのフルート・ソロの音立ちの美しいこと、まるで極上のフランス産果実酒の如しで、以降も楽章全体に、聴いていてゴージャスな音響展開一辺倒にとどまらせないデュトワの棒の冴えが良く伺われます。

終楽章も含めて、デュトワは全体にフィラ管の芳醇な音響美を十全に活かしながら、そこにフランス風味のしっとりとして瑞々しい音色の潤いを付着させることに成功していて、アメリカの名門オーケストラの機能性にフランス風の美彩な色調感が実に巧く調和しているなと、聴いていてしきりに思わされるものでした。

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