ワルター/コロンビア響によるベートーヴェン「田園」のグランドスラム盤
ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」
ワルター/コロンビア交響楽団
グランドスラム 1958年 GS2035

これまで数々の歴史的名盤につき驚異的な高音質での復刻を成し遂げてきたグランドスラム・レーベルから、今度はワルター/コロンビアの「田園」の復刻CDがリリースされたとのことで、購入してみました。
例によってLPレコードからの板起こし盤ですが、制作者のコメントによると、ここで使用されているLPは最初期に販売されたもので、後年販売のLPないしCDと違って音質加工の度合いが少なく、有りのままの響きが収録されている、とのことです。音質に関しては「各奏者の座席位置までもはっきりと聴き取れるほど」とも書かれています。
それで聴いてみたところ、このCDの音質には確かにずば抜けたものを感じました。そして聴き終えて、何というか、ちょっと言葉にならないくらいの感銘を覚えました。このワルター/コロンビアの「田園」は、今さら言うまでもなく歴史的名盤であり、演奏そのものが破格の名演ですが、それをこの音質で聴かされた日には、、、
既存盤との比較という意味で、以下のディスクと音質を比べてみました。

ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」
ワルター/コロンビア交響楽団
ソニー・クラシカル 1958年 SRCR2007
これは本家ソニーによる1996年発売のSBMリマスタリング盤です。
ノイズレベルは全体的にソニー盤よりグランドスラム盤の方が高く、板起こし盤特有の針音も含めて、ソニー盤の方がすっきりとした耳当たりです。
その意味で単純に「聴き易い」のはソニー盤の方ですが、こと響きの実在感、アンサンブルの発するソノリティの生々しい臨場感という観点では、グランドスラム盤の方がソニー盤よりも遙かに上というほかなく、その違いには聴いていて唖然とさせられるほどです。
例えば第1楽章の第2テーマ(1:19)からの低弦の流れなど、両者を比べればグランドスラム盤の方が明らかにリアルでふくよかな音色の彩りに満ちています。この第2テーマの場面で適度に重低音を強調させ表情に奥行きを与えているのはこの演奏の特徴のひとつで、ソニー盤でもそれは認識できるものですが、このグランドスラム盤で聴くと遙かに説得力が感じられ、ここでワルターの言いたかったことさえまざまざと伝わってくるような、そんな気さえします。展開部でメインテーマがクレッシェンドしていく(3:14)あたりの弦楽器の素晴らしい臨場感などもそうで、そのむせ返るような響きの味わいが、ワルターの形成する開放的かつ愉悦的な音楽の情緒をさらに増幅せしめていて、このあたり聴いていて思わず感極まるほどのものでした。
以上の第1楽章に限らず、以後の楽章においても、総じてコロンビア響各パートの音色の発する色彩感がくっきりと、かつ生々しく収録されている点がこのグランドスラム盤の音質の大きな美質で、ソニー盤で聴くと何気なく通り過ぎてしまいそうなところも、グランドスラム盤だと意外な訴求力を獲得していて惹き込まれたり、そのあたりも新鮮な体験でした。
正直このグランドスラム盤は、聴く前は半信半疑で、「各奏者の座席位置までもはっきりと、、」というのも何かオーバーな感じがしましたが、実際聞いてみると、あながちオーバーとも言いきれない気もします。「はっきりと」というのはやや言い過ぎとも思いますが、コンサートホールを彷彿とさせる強い臨場感がよく確保されているのは事実でしょう。逆にそういう感覚がソニー盤の方にそれほど強くないのは、やはり聴き易さを過度に追求するあまりのリマスタリングの過剰による、化粧されたソノリティが、かえって本来の演奏の味わいを削ぎ落しているからではないか、そんな気もしました。
いずれにしても、このグランドスラムによるワルター/コロンビアの「田園」を耳にしたことは、私にとって極めて有意義な体験でした。こと音質面に関しては、ほぼ決定盤と言い切ってもいいのではないでしょうか。
それとは別に興味深かったのが本CDの楽曲解説で、その執筆者は、ベルリオーズです。これはベルリオーズが1830年代に書いたとされるベートーヴェン「田園」に関するエッセイ風の論考が、そのまま掲載されています。
第1楽章について「楽器法は特に描写性に富むものではないが」などと書かれていてビックリしますが、ベルリオーズからすれば確かにそうかも、、という気も。第4楽章は「恐ろしき天変地異、世の終わり」というように捉えていたようですね。
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