レナード・バーンスタイン歴史的放送録音集(1946~61年)


「レナード・バーンスタイン歴史的放送録音集1946~61」
 バーンスタイン/ボストン交響楽団、ニューヨーク・フィル他
 WHRA 1941~61年ライヴ WHRA6048
WHRA6048.jpg

米West Hill Radio Archiveから先月リリースされたセット。レナード・バーンスタインが1940年代から60年代初頭にかけてボストン交響楽団およびニューヨーク・フィルを指揮して収録した放送用録音が全11枚のCDに集成されている。

収録曲で主だったところを挙げるとボストン響との録音では、シューマン交響曲第2番(1946年)、ショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」(1948年)、マーラー交響曲第2番「復活」(1949年)、メシアンのトゥーランガリラ交響曲(1949年の世界初演のリハーサル)。ニューヨーク・フィルとの録音では、バーンスタイン交響曲第2番(1950年)、ストラヴィンスキー「春の祭典」(1951年)、コープランド交響曲第2番(1957年)、ピストン「管弦楽のための協奏曲」(1959年)、チャベス交響曲第4番(1960年)、ダイアモンド交響曲第8番(1961年)。ライヴ以外で唯一収録されている1941年セッション録音のダイアモンド「前奏曲とフーガ第3番」はバーンスタインの初の録音(ピアニストとしてのレコーディングデビュー)として知られる。

とりわけ1949年のマーラー2番に興味を引かれた。現在までにCDで正規リリースされているバーンスタインのマーラー2番の全曲録音は1963年のニューヨーク・フィルとのセッション1973・74年のロンドン交響楽団とのセッション1987年のニューヨーク・フィルとのライヴ、および1958年のフランス国立放送管弦楽団とのライヴの4種類なので、今回のWHRA盤は5種めのリリースになるはず。

本セットの録音解説(これはCD-ROMに収録されている)によると、この49年の録音以前にもバーンスタインは1947年にニューヨーク・フィルの演奏会でマーラー2番を取りあげ、1948年にもボストン交響楽団とイスラエル・フィルを指揮して同曲を演奏しているとのこと。また同解説にいわく、以後も大事なコンサート(たとえば1970年のクリーブランド管弦楽団との一期一会の演奏会など)でマーラーの2番を取り上げるなど、この曲にバーンスタインは生涯にわたって強い思い入れを抱き続けたとされている。

トスカニーニ・コンプリートRCAコレクション


「トスカニーニ・コンプリートRCAコレクション」
 トスカニーニ/NBC交響楽団ほか
 RCA 1920年~1954年 88697916312
88697916312

これは米RCAから1992年に発売された「アルトゥーロ・トスカニーニ大全集」の再発売として今年5月にリリースされたもので、20世紀最大級の巨匠指揮者トスカニーニがRCAに残した全ての録音が計84枚のCDに集成されている。

破格の値段もあって大きな話題となっていたボックスセットだが、正直これは入手しようかどうか散々迷った。なにしろ膨大な枚数である上ダブリも相当あるし、なによりトスカニーニの録音に関しては個人的にはRCA以外のレーベルから出ている録音の方に惹かれるものが多い。

NBC交響楽団との録音でまず思い浮かぶのはトスカニーニのラスト・コンサートとなった1954年4月4日カーネギーホールでの演奏会を収録したワーグナー管弦楽作品集1945年のアメリカの対日・対独戦勝記念日の祝賀コンサートでのベートーヴェン「英雄」&「運命」1939年のベートーヴェン交響曲全曲チクルスのライヴ(以上Music&Arts)、あるいは1943年に録音されたカリンニコフの交響曲第1番(RELIEF)あたりになるし、NBC響以外との録音であればフィルハーモニア管弦楽団とのブラームス交響曲全曲チクルスのライヴ(テスタメント)とかコロン劇場管弦楽団とのベートーヴェン交響曲第9番(ギルド・ヒストリカル)あたりが思い浮かぶ。こういった破格の録音群と比べるとRCAの一連の録音群の方は正直トスカニーニとしては総じて今一つ聴き劣りがするという印象がある。

しかし価格が異様に安いし、同一レーベルの全録音の集成というレファレンスとしての意義にもやはり掛け替えのないものがあるということで入手した。

クナッパーツブッシュ/ベルリン・フィルによるブルックナー交響曲第9番の1950年1月28日のライヴ(?)


ブルックナー 交響曲第9番
 クナッパーツブッシュ/ベルリン・フィル
 グリーンヒル 1950年ライブ GH-0022
GH-0022

独auditeから昨年末にリリースされた「クナッパーツブッシュ&ベルリン・フィル RIASレコーディングス(1950-52)」を購入したことと、その収録曲や音質の印象などについて以前ブログに掲載しました

その際に本ボックスセットにはクナッパーツブッシュが1950年から52年にかけてベルリン・フィルと残した多くの録音が含まれているものの、てっきり含まれていると思ったら漏れていた録音というのも幾つかあり、その中の一つにブラームス交響曲第3番の1950年ライヴがあることも書きましたが、その漏れている録音には他にも、かつてグリーンヒルからリリースされていたクナッパーツブッシュ/ベルリン・フィルのブルックナー交響曲第9番の1950年1月28日ライヴというのがありました。これはオーディエンスありの、通常のコンサートのライヴです。

それで気が付いたんですが、その「RIASレコーディングス」収録曲の中に、実は同じコンビによるブル9の、1950年1月28日のライヴが含まれています。これはオーディエンスなしの放送用ライヴとされ、実際オーディエンスノイズは聞かれません。

しかし同じ日のライヴ録音が2種類あるというのは何か不自然な気もします。同じ日でもゲネプロの後に本番というなら分かりますが、この場合どちらも本番ですし、もしかしたら、このグリーンヒル盤の記載データが間違っていて、実は全然ちがう日のライヴなのではないかと思えなくもありません。

このグリーンヒル盤のブル9は改悪版として知られるレーヴェ改訂版による演奏ではあるものの、演奏そのものは素晴らしく、クナッパーツブッシュのブルックナー演奏としても内容的に屈指のレベルと思えるものです。またグリーンヒルによる復刻は年代からすると音質がかなり良好です。

なお「RIASレコーディングス」に収録されているブル9には、前述の1月28日のライヴのほか1月30日のライヴのものもあり、こちらはオーディエンスありのコンサート・ライヴです。であれば、こちらがグリーンヒル盤と同一演奏かもと思って演奏を比べてみると楽章タイムが互いに一致せず、やはり別録音のようでした。

以上、要するにクナッパーツブッシュ指揮ベルリン・フィルのブル9には3種類の録音があることになり、以下がそれらのデータです。

①1950年1月28日ティタニアパラスト(オーディエンス無)
「RIASレコーディングス」収録
楽章タイム 22:20 11:05 21:50

②1950年1月28日ティタニアパラスト(オーディエンス有)
グリーンヒル盤
楽章タイム 21:58 11:04 22:16

③1950年1月30日ティタニアパラスト(オーディエンス有)
「RIASレコーディングス」収録
楽章タイム 22:20 11:15 22:50

クナッパーツブッシュ/ベルリン・フィルによるブラームス交響曲第3番の1950年ライヴ


ブラームス 交響曲第3番
 クナッパーツブッシュ/ベルリン・フィル
 IDIS 1950年ライブ IDIS6362
IDIS6362

昨日の更新で、独auditeから先月リリースされた「クナッパーツブッシュ&ベルリン・フィル RIASレコーディングス(1950-52)」について収録曲や音質面などにつき簡単ながら掲載したところですが、このボックスセットには確かにクナッパーツブッシュが1950年から52年にかけてベルリン・フィルと残した数々の著名な録音がカバーされているものの、てっきり含まれていると思ったら漏れていた録音というのも幾つかあります。

その中のひとつが、このコンビによるブラームス交響曲第3番の1950年ライヴで、これは昨日のエントリーの中でハイドン交響曲第94番「驚愕」の音質比較に用いたIDIS盤において、そのハイドンと組み合わされて収録されています。

このブラームスは、その演奏内容の奇形性において、ほとんど怪演・奇演の領域とも思えるものですが、そのインパクトは一度聴いたら容易に忘れられないほどに強烈です。

第1楽章冒頭の2つの強和音から極限的なテヌートをぶちかましておいて、第1テーマは超スロー、第2テーマも超スロー、展開部以降も超スロー、、、このあたり、まるで激流を無理矢理に堰きとめているかのような異様な緊迫感が立ち込めていて、聴いていて何だか恐ろしくなってくるほどですが、さらに驚かされるのがコーダの(19:48)からのフレーズの、ものすごい引き伸ばしで、これは最強奏の最中であるだけにインパクトがハンパでないですし、造型的にもメチャクチャもいいところですが、あの天下のベルリン・フィルをそのメチャクチャに引きずり込む、この指揮者の往年におけるカリスマの本領をここに聴く思いがします。

中間2楽章は第1楽章ほど奇形的ではないものの、スロー調の濃密感が際立ち、ことに第3楽章主部のチェロのむせかえるような音色の濃さは聴いていて強烈な印象を醸し出しています。

終楽章は第1楽章に拍車をかけたような表現で、スロー・テンポの音楽的密度が極地に達しますが、とりわけ(4:44)からの金管強奏展開においては、これ以上不可能というくらいにテンポを落とし、人間の断末魔をも思わせるもの凄い響きを表出せしめていて空恐ろしくなるくらいですし、ここまでくると単なる怪演・奇演では済まされない、その迫真の表現力に聴いていて唸らされます。

以上、このブラ3はクナッパーツブッシュがベルリン・フィルと残した一連の録音の中でも破格の演奏のひとつと思っていたので、これが今回のauditeのセットから漏れたのはいささか残念に思いました。

ヴェネチアの復刻によるゴロワノフ/モスクワ放送響の名演集


ゴロワノフ&モスクワ放送響の録音集成盤
 ゴロワノフ/モスクワ放送交響楽団
 ヴェネチア 1948~53年ライヴ CDVE00008
CDVE00008

これは今月リリースされた、ニコライ・ゴロワノフの指揮によるモスクワ放送交響楽団のライヴ録音集で、以下の6曲がCD3枚に収録されています。

①チャイコフスキー 「1812年」序曲
②同 交響曲第6番「悲愴」
③スクリャービン 交響曲第1番
④ボロディン 交響曲第2番
⑤ムソルグスキー 交響詩「禿山の一夜」
⑥同 組曲「展覧会の絵」

ニコライ・ゴロワノフは1891年にモスクワに生まれ、主にスターリン時代に活躍した旧ソ連の指揮者で、モスクワ放送交響楽団の首席指揮者を1937年から亡くなる53年まで務めており、今回のライヴ集に収録されている演奏はいずれもその最晩年の時期のライヴになります。

とかく「怪演奇演系」の指揮者として論ぜられることが多いゴロワノフですが、その最晩年のライヴが、高音質な復刻レーベルのヴェネチアからまとまって出るというので期待して購入してみました。

それで先週末から今日にかけて、ひと通り聴いてみたのですが、6曲すべてが音響的に振り切れたような重厚・濃密を極めるアンサンブル展開となっていて、聴いていて圧倒されっぱなしという状態でした。重量感に満ちた弦奏といい、強烈な色彩感を帯びた木管パートといい、濃厚にしてパワフルな響きの金管パートといい、そのアンサンブル・バランスはソ連的というよりむしろロシア的という言葉がピッタリなのですが、とにかくその原色感むきだしのワイルドな音響感においては、聴いていて何か原始的な響きの凄味が迫ってくるようなものすごさがあり、この独特を極めるアンサンブル特性だけで、おそらく十分に興奮させられるのではないか、そんな気がします。

「おそらく」というのは、上記のような特異なアンサンブル特性さえも場合によっては霞ませてしまうほどの、ゴロワノフの常軌を逸したような指揮運用が激烈なインパクトを叩きつけているからです。

それが最も顕著に発現されているのは、やはり②のチャイコフスキー「悲愴」ということになると思います。1948年に録音されたこのライヴは、従来からゴロワノフの代名詞のような演奏であり、かつてBOHEME-MUSICから出ていたものと同一ですが、音質的には今回のヴェネチア盤の方がひとまわり良好な感じがします。

この「悲愴」は、第1楽章の(2:15)からの第1テーマに聴かれる、2小節ごとにアダージョとアレグロが唐突に入れ替わるという突拍子もないテンポ変化からしてあぜんとさせられるものですが、続く(4:55)からの第2テーマでの猛烈なリテヌート(ほとんどルバートに近い)といい、(10:22)からの展開部の冒頭から揺れに揺れるテンポといい、いずれも造型的には珍妙を極めているとしか言いようがなく、したがって、このゴロワノフの「悲愴」が空前絶後の怪演であるということの論拠として、よく指摘されたりもします。

確かに造型的には珍妙で、そういう意味では怪演的な要素も多分に保有する演奏には違いないのですが、ただ、そう言い切ってしまうのはどうも躊躇してしまう、というのがこの演奏に対する私の率直な印象です。例えば(14:17)あたりのクライマックスなどを聴く限り、アンサンブルとしては全身全霊としか聴きようがなく、とても奇を衒うだけの演奏とは思えないからです。つまり、演奏としては迫真に満ちているのに、造型的にはおよそ迫真とはかけ離れている、という不思議さがこの「悲愴」にはあり、そのアンバランスさが私にはどうにも不可解で、どうも、一筋縄ではいかない演奏だと思います。

第2楽章以降においても、聴いていてビックリするようなアゴーギグが随所に顔を出し、面喰らってしまいますし、デュナーミクにおいてもかなり珍妙です。とくに第3楽章のコーダ、第334小節(7:38)で、スコア上はfffのところをいきなりピアニッシモまで落とし、そこから猛烈なクレッシェンドを仕掛けて最強奏で締めくくる大芝居などは、聴いていて呆気にとられる思いです。

終楽章も、スローテンポから切々と奏でられる金管のフォルテ・コラール、中盤での気の狂ったようなアッチェレランドと、とにかく常軌を逸したような音楽の気配が充満しています。やはり一筋縄ではいかない感じなのですが、少なくともここには怪演の二文字で安易に片づけられない深いものが、底流に流れているような印象が聴いていて離れませんでした。

フルトヴェングラーRIASレコーディングス(ブラームスの3番・49年ライヴ)


ブラームス 交響曲第3番
 フルトヴェングラー/ベルリン・フィル
 アウディーテ 1949年ライヴ AU21403
AU21403

アウディーテの「フルトヴェングラー・コンプリートRIASレコーディングス」ですが、昨日に続いて今日は1949年12月18日のブラームス交響曲第3番のライヴ演奏を聴いてみました。

ここでの音質の比較盤ですが、以下のグランドスラム盤になります。

GS2011
ブラームス 交響曲第3番
 フルトヴェングラー/ベルリン・フィル
 グランドスラム 1949年 GS2011

これは2006年リリースのグランドスラムレーベルによる復刻盤です。カップリングとして1952年録音のウィーン・フィルとのスタジオ録音によるベートーヴェンの交響曲第4番が収録されています。

このグランドスラム盤はもちろん板起こし盤で、シャーという針音が一定の音量で続いていますし、スクラッチノイズ、プチプチノイズといった板おこし盤に特有するノイズもかなり混入しています。対してマスターテープからダイレクトに音録りしたアウディーテ盤には当然これらのノイズは無く、テープノイズも非常に低く抑えられています。したがって、昨日とりあげたブラームス4番の48年ライヴにおけるミソスv.s.アウディーテの図式がここでもそのまま当てはまります。

それで聴き比べての印象はというと、少なくとも昨日のような板おこし盤(ミソス)の明確な優位というのでなく、それぞれに一長一短で甲乙付け難い、そんな気がします。

グランドスラム盤ですが、音響のマッシブな実在感が相変わらず抜群で、聴いていて嬉しくなります。重低音の部分が全般に痩せ気味なのが若干気になりますが、高音の響きがかなり良く、とくにヴァイオリン・パートの響きの色合いがすこぶる鮮やかですし、中音域の実在感もかなり秀逸です。ことに第1楽章の展開部の、あの極限的なテンポの揺さぶりを伴う最強奏の凄味など、他盤の演奏との比較を絶する凄さですし、中間2楽章もものすごい密度ですね。終楽章でのすさまじい緩急強弱を伴う悪魔的な音楽の起伏なども、高感度な音質によりその凄さがまざまざと伝わってくる感じです。

対してアウディーテ盤の方は、音響自体はそれほどマッシブな感触は目立たず、すっきりした感じで、迫力的にはグランドスラム盤に一歩引けを取る感じがします。しかし、とにかくノイズレベルがグランドスラム盤より圧倒的に低いため、ノイズに煩わされることなく演奏を堪能できますし、このノイズレベルの低さゆえに、ボリュームレベルをグランドスラム盤より2割増しくらいにすることで、迫力を相当に補完することができます。グランドスラム盤の音質は確かに素晴らしいとはいえ、さすがにミソスのブラ4のような奇跡的な復刻レベルとまではいかない感もあるので、マスターテープから直接復刻したアウディーテ盤の音質がかなり肉薄しています。

以上、この49年12月18日のブラームスの3番に関しては、両盤ともほぼ互角の、高水準の復刻内容を誇っていると思います。あとはもう聴き手の好みの問題ではないでしょうか。

あと音質比較とは関係ないですが、グランドスラム盤にカップリングされているウィーン・フィルとのベートーヴェンの4番は音質が信じがたいほどの良さで、これはフルトヴェングラーのスタジオ録音盤の中でもおそらく最優秀の部類だと思います。

先のブラームスと違ってここでのベートーヴェンは全楽章とも遅めのテンポを維持した客観スタイルの凄みが充溢する演奏ですが、音質の良さもあり、ウィーン・フィルのアンサンブルの響きの美感が聴いていて圧倒的に伝わってきます。それにしても、なんという有機的な響きでしょう、往年のウィーン・フィルというのは、、、

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