マフチン&児玉桃の室内楽コンサート(LFJ2011公演)


5/5 東京国際フォーラムD7ホール
LFJ2011・公演D-35d

シューマン 幻想小曲集op.73
ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第3番
 ドミトリ・マフチン [ヴァイオリン]
 児玉桃 [ピアノ]

この2曲で45分の枠、、、きっとテンポが遅いのかな、と思っていたら、普通のテンポで、普通に30分で終わりました、、(アンコールのシューマン幻想小曲集第2番を含めて35分の公演でした)。

ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番は今年のLFJ初日に、同じく児玉桃さんのピアノ演奏で聴きましたが、この時はオーギュスタン・デュメイのヴァイオリン演奏でした。感情の高まりを比較的ダイレクトに表現していた、デュメイの情熱的なスタンスとは対照的に、こちらはテクニックの切れを前面に押し出した、ヴィルトゥオーゾ・スタイル。デュメイのやったように、終楽章で足を床にガツン、ということはせず、一定の節度を崩さず、ヴァイオリン演奏自体のもつ醍醐味をホールに充溢させる、そんな演奏。

それにしても児玉桃さんは相手がデュメイでもマフチンでも、ピタリと合わせて、それに相応しいピアニズムを展開するあたりの、ピアニストとしての技量は、やはり見事としか言いようがありません。

もっとも、譜めくり係の女性との呼吸は全体にイマイチだったようで、譜面をめくる場所を間違えて止められたり、など。

何回目かの拍手に応えて、二人の演奏者と一緒に譜めくり係の方もアンコール用の譜面を携えて登場したものの、二人が再び袖に引っ込んでしまい、ステージに一人取り残されて慌てるひとコマも、、登場がワンテンポ早かった、ですね。

児玉桃のピアノ・リサイタル(LFJ2011公演)


5/5 東京国際フォーラムG402ホール
LFJ2011・公演G-36f

シェーンベルク 3つのピアノ曲op.11
ブラームス パガニーニの主題による変奏曲
ヴェーベルン ピアノのための変奏曲op.27
ブラームス 4つのピアノ小品op.119
 児玉桃 [ピアノ]

なお曲順は予定ではシェーンベルク→ヴェーベルン→ブラームスの2曲の順でしたが開演直前に上記のように直されました。

これだけの小規模なホール(座席数わずか100)で至近距離からプロのピアニストのピアノ演奏を聴く、というのは初めての体験でしたが、やはりサントリーの大ホールなどで聴くのとは感覚が全然ちがうといいますか、部屋全体がピアノに共鳴しているような印象でした。

児玉桃さんの現代曲の実演といいますと、去年7月にサントリーホールで聴いた、メシアン「鳥たちの目覚め」が思い出されますが、今回のシェーンベルクとヴェーベルンも見事でした。その強い表出力を伴うタッチの凛とした佇まいは、新ウィーン楽派特有の音楽の異界性を汲み、情緒的なものから解放された抽象的な音の世界へ塗り替えてしまうような演奏でしたし、ブラームスも、昨年のLFJでのD7ホールで聴き、その一心不乱なピアニズムの迫力に聴いていて度肝を抜かれたショパンのスケルツォを彷彿とさせる、気持の入った演奏でした。

ただ残念なのは、ホールの空調の音。どじゃぶりの雨が建物に当たっているような感じで、最初は夕立かと思ったほど。とにかくザワザワうるさい。

新ウィーン楽派のピアノ曲の場合、無音に語らせるというのか、音と音との間に静謐さに意義をもたせるという作風なので、そのあたりが相当にスポイルされた感もありましたし、やはり空調は止めるか弱めるべきであったと思われます。

田部京子とライプツィヒ四重奏団の共演によるブラームスのピアノ五重奏曲(LFJ2011公演)


5/5 よみうりホール
LFJ2011・公演Y-382

ブラームス ピアノ五重奏曲
 田部京子 [ピアノ]
 ライプツィヒ弦楽四重奏団

ライプツィヒ弦楽四重奏団は昨年のLFJでメンデルスゾーンとシューマンの室内楽の演奏を聴きましたが、その時はB5ホールで、かなり至近距離から聴いたこともあってかアンサンブルの熱感あふれる演奏に聴いていて惹き込まれたことを覚えています。

しかし今回は千人規模のホールで聴いたこともあってか、印象は少し昨年と異なりました。彼らの録音したドイツもののCDさながらの、正攻法に基づく手堅い運びという感じの演奏であり、張り詰めるような熱気こそ希薄ながら、音楽の隅々までコントロールと目配りが行き届いた、まさに自分たちの国の作曲家の音楽を演奏している、という雰囲気の如実に立ち込める演奏でした。

田部京子さんのピアノも、彼らのアンサンブルに過不足なく寄り添っていましたが、ここぞという時にピアノが鳴り切らない嫌いもあり、やや抑制が効き過ぎではないかと聴いていて思えなくもありませんでした。

いや、途中まではそう思っていたんですが、もしかしてステージの制約のためピアノの鳴りが振るわないのでは、という印象を聴いていて感じ出しました。

というのも、このよみうりホールのステージというのは、奥行きが極端に狭く、実際この時の演奏では、4人のカルテット奏者がステージ前方、その真後ろにピアノという配置でしたが、もうこれだけでステージの奥行きを全て使い切ってしまい、ピアノは反響板にべた付けという有り様でした。

これだと、まず、譜めくりの人を左どなりに配置できない(実際、私が最終日に聴いた4公演のうち、3公演までは、ピアノ奏者に譜めくりの係が配備されていたが、この公演Y-382のみ、配備されていなかった。むろんベレゾフスキーのリストのように暗譜でバリバリ弾くなら譜めくりの係は要らないが、この時の田部京子さんの演奏では、しっかり譜面が置かれていた)。それに、ピアノが反響板にべた付けだと、音がモロに跳ね返ってくるため、大きな音を出しづらいのではないか、という気もします。

よみうりホールのアコースティックは思ったより悪くない(Aホールよりはずっといい)だけに、そのあたりのステージの狭さが演奏家に不要な圧迫感を与えはしないかと、そのあたりが気になりました。

プラジャーク四重奏団のブラームスほか(LFJ2011公演)


# この前、ネット上で「クラシックの固定概念を覆す、型破りな弦楽四十奏団『MozART GROUP』の演奏がスゴい!」というニュースを見かけたんですけど、、

# 固定概念を覆すっていうから、ホントに40人?と思った人って結構いたりして、、

5/3 東京国際フォーラムG409ホール
LFJ2011・公演G-17d

シェーンベルク スケルツォ・ヘ長調
ブラームス 弦楽四重奏曲第1番
 プラジャーク弦楽四重奏団

プラジャーク四重奏団は1972年に結成されたチェコのカルテット団体。昨年に第1ヴァイオリン奏者が交代したとのことですが、その交代の影響があるか否か、聴いていて私には、全体的にチェロ奏者がアンサンブルにおけるリーダーシップを取っていたように思われました。

まずチェロのフレージングが常に太い柱のようにデンと構えていて、そこに他のパートが同調していき、それがアンサンブル全体としての響きに収斂し、深みと訴求力のある、得もいわれぬ音彩が、滔々と紡ぎだされていく、という按配。

G409ホールは150席くらいの小さなホール(というか、本来は会議室)で、今年はじめて入ってみました。やはり、これくらいの大きさだと弦楽四重奏曲には最適なサイズという感じがします。文字通り「室内楽」の醍醐味を満喫しました。

5/4 東京国際フォーラムCホール
LFJ2011・公演C-24e

ブルックナー 交響曲第7番
 金聖響 [指揮]
 兵庫芸術文化センター管弦楽団

兵庫芸術文化センター管弦楽団は2005年に設立された兵庫県立芸術文化センター専属のオーケストラ。実演を聴くのは今回が初めてでしたが、まず全体的にアンサンブルの線が細いなと感じました。少なくとも骨太の演奏という感じではありませんでしたが、そのぶん細部まで緻密かというと、そうでもなく、ヴィオラ部など、はっきりと聴こえてこない内声部が割と多かったし、ホルンやトランペットのソロにしても、難所は楽々とクリアしているので、上手いな、と思っていると、えっ?と思うようなところでミスをする、という按配。

当初のプログラム白紙撤回の後に組まれた公演であることを考えると、あの短い準備期間で、ここまで、という点では確かに敬服に値する演奏であったようにも思えますし、線が細い云々というのも、結局のところ好みの問題にほかなりませんが、聴いていて何か中途半端というのか、もう少しブラッシュアップしうる余地もあるのでは、という歯がゆいような印象を受けました。

ベレゾフスキーのリスト、デュメイのブラームス(LFJ2011公演)


5/3 よみうりホール
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2011

・公演Y-18b
リスト 超絶技巧練習曲集(全曲)
リスト メフィスト・ワルツ第1番
 ボリス・ベレゾフスキー [ピアノ]

もともとの予定では超絶技巧練習曲集の全曲から抜粋して演奏される予定だったところ、ベレゾフスキーの希望で全曲演奏に変わりました。

ベレゾフスキーの実演を初めて聴いたのはLFJ2009で、演目はバッハのピアノ協奏曲でしたが、そこでは強弱の幅を大きめに取り、神秘的な弱音の妙感なり、強音の起伏力を、明確に強調させた音楽造りとなっていて、バッハというよりは、むしろショパンみたいな演奏だなと思いました。

そのとき会場で購入したベレゾフスキーのCDというのが、彼がテルデックに録音したリストの超絶技巧練習曲集でした。このCDを聴いた感想は以前にブログに掲載した通りです。

そのCDを聴いていて驚かされた、右手と左手のバランスの取り方なども、この実演ではしっかりと再現されていましたし、やはり凄いピアニストでした。

・公演Y-18c
ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第2番
ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第3番
 オーギュスタン・デュメイ [ヴァイオリン]
 児玉桃 [ピアノ]

デュメイの実演を聴くのは久しぶり。2008年9月、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。デュメイの持ち味ともいうべき、闊達なフレージングの織り成す鮮やかなパッションと、美麗にして熟した音色とが醸し出す響きの魅惑に酔わされました。

しかし今回のブラームスは、様式的にはベートーヴェンの時と同様、デュメイらしい情熱感あふれるフレージング展開でしたが、演奏に対する熱の入りようといったらなく、なかんずく第3ソナタ終楽章では強奏に係るボウイングのシーンで、必ずと言っていいほど足をステージにガン、ガン、と叩きつけていたほど。そのデュメイの鬼気迫るボウイング展開に、ピタリと合わせ、完璧なデュオを織り上げた児玉桃さんのピアニズムともども、実に熱の入った、いい演奏でした。

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2011雑感


結局、今年のLFJは3日間で9公演を聴きました。去年は2日で8公演でしたし、9公演というのは過去LFJ中最多かなと、、

2011-5-7

しかし今年は何といってもLFJの代名詞ともいうべき5千席を誇るAホールを含む、3つのホールでの公演が無かったし、コルボ、エンゲラーといった、私にとってのLFJ常連のコンサートも、無かった。いろいろな面で、通常のLFJとは音楽祭としての雰囲気が異なっていて、異様とまではいかなくても、ある種の名状しがたい雰囲気が、ホールというホールに充満していたのは、おそらく確かであったろうと思います。おそらく今年のLFJだけの現象であって、来年からは昨年のような、「普通」の雰囲気に戻ることになるのでしょうけど、、、

前売りチケットの売れ行きのことですが、今年は大丈夫なのかと本気で心配しました。

例えば最終日に聴いた公演G-36f(G402ホール)のチケット、これ実はLFJ初日の3日前、4月30日の夕方に購入したものです。

このG402ホールというホールは、実は今年はじめて入ったんですが、なにしろ客席が僅か100席という小規模ホール(というか、会議室なんですが)ゆえ、このホールでの公演チケットは、例年だと発売開始と同時に一瞬で売り切れてしまい、まず普通は手に入らない(ただ私の場合チケット争奪戦に本気で加わっていないこともあるかもしれないが)ところが、今年は開催3日前だというのに、チケットぴあの残券を検索してみると、どの公演も軒並み「残席あり」で、たった100席のG402ホールですら、平気で売れ残っている、、、Aホールを含む3ホールの公演が取りやめになっているのに、、これはとんでもない事態ではないかと、本当に、、

しかし終わってみれば、どうやらチケットは概ね捌けたようでしたが、それでも稼ぎ頭のAホールが使えなかった以上、やはり収益的には、相当苦しいことになるはずで、、、

雑感、、と言っても、一言で言ってしまえば、いかにLFJが、素晴らしい音楽祭であるかを、つくづく思い知らされた、というに尽きるんですが、それは例年のLFJに出向いて公演を聴いて素晴らしかった、というのとは、また全く別の意味の素晴らしさであって、それはちょっと一言では言い尽くせないし、言葉を沢山かけても、やはり言い尽くせないような気がするので、雑感にもならないんですが、3日間、行って良かったです。もう、それだけですね。

各公演の感想は、あらためて出します。来週いっぱいくらいで。どうせCD聴けないし、、、

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