デュメイ&児玉桃によるドビュッシーとフランクのヴァイオリン・ソナタ(LFJ2013公演)


5/4 東京国際フォーラムB7ホール
LFJ2013 公演227

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ドビュッシー ヴァイオリン・ソナタ
フランク ヴァイオリン・ソナタ
 オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン)
 児玉桃(ピアノ)

デュメイの実演に接するのは2年前のLFJ以来で、今回と同じく児玉桃とのデュオによるブラームスのヴァイオリン・ソナタが演目だったが、その時はよみうりホールだった。今回はB7で至近距離で聴いたのだが、そのせいもあり今回の方が演奏のインパクトが数段上だった。

演目的にもデュメイの得意中の得意フランク&ドビュッシーのソナタということもあり、揺るぎないフォームと盤石のテクニックから繰り出されるフレージングの魅惑的なこと、熟した音色の鮮やかさ、闊達なボウイングが紡ぐメロディの表出力の強さ。共演経験を重ねている両名手の息の合った掛け合いも素晴らしい。とくにフランクのヴァイオリン・ソナタは、最近デュメイがリリースしたロルティとの録音も素晴らしかったが、それすら今回の実演の前では霞んでしまうほどだった。

今回の実演を聴いていて気がついたのは、デュメイの弾き回しには前日のトリオ・ヴァンダラーの演奏で感じた透明な響きの肌ざわりが随所に潜んでおり、それが演奏の味わいを一層に引き立たせているということだった。それは特にドビュッシーのヴァイオリン・ソナタの方から顕著だったが、フランクでも継承されていたため、それがフランクの室内楽特有のアクの強さを薄め、音楽的にリファインされていたのは、デュメイならではだろう。事実、先刻同じホールで聴いたフランクのピアノ五重奏曲には途中で正直もたれたが、デュメイの弾くフランクは全然もたれない。

あらためて思ったが、今年のLFJのテーマは「パリ、至福の時」ということでフランス系の演目が中心のラインナップだったが、考えてみれば本場ラ・フォル・ジュルネはフランスの音楽祭なわけで、当初からフランス作品を得意とするアーティストやアンサンブルが数多く参画していたのだが、今年はそのあたりの本領がいかんなく発揮された感があり、例年以上に高い水準の公演が目白押しだった。

ラムルー管弦楽団によるオール・ラヴェル・コンサート(LFJ2013公演)


5/4 東京国際フォーラムAホール
LFJ2013 公演215

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ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル ピアノ協奏曲
ラヴェル ラ・ヴァルス
ラヴェル ボレロ
 ラムルー管弦楽団
 フェイサル・カルイ (指揮)
 小山実稚恵 (ピアノ)
 佐渡裕(サプライズ・ゲスト、ボレロを指揮)

フランスの歴史あるオーケストラ、ラムルー管弦楽団がLFJに初登場。オール・ラヴェル・プログラム。

最初は「亡き王女のためのパヴァーヌ」。フランスのオケといっても、その響きにはトゥールーズとかパリ管あたりの洗練を極めたような響きとは異質なものが混ざっており、それが絶妙なスパイスとして作用している。適度に洗練されているが、洗練され過ぎてもいない、どこか鄙びた感触を残す響きに聴いていて惹きこまれた。

続いて小山実稚恵のソロでピアノ協奏曲。この曲は昨日はシャマユで、先月はル・サージュで聴いたが、小山実稚恵が最もオーソドックスなピアニズムという感じがした。最後にラ・ヴァルス。ついさっきフランスの名手ヌーブルジェのピアノ版で聴いたばかりで、今度はラヴェルゆかりのラムルー管による管弦楽版。ラ・フォル・ジュルネならではの贅沢というべきか。フェイサル・カルイの指揮はダンスを踊っているかのように優雅な身のこなし。

そのラ・ヴァルスが終って拍手もひとしきり、さてと腰を上げようとしたら、いきなりオーケストラがチューニングを開始。何事かと思っていると、ルネ・マルタンがステージに登場。

「今回LFJ初登場のラムルー管弦楽団は実は日本と大変に縁の深いオーケストラなのです。このオーケストラは20年近くにわたり日本人の指揮者により率いられていたからです。その指揮者をここに、サプライズ・ゲストとして紹介いたしましょう。ユタカ・サド!!」

われんばかりの大歓声に包まれるAホール。演目はラムルー管が世界初演を果たしたラヴェル「ボレロ」。

ヌーブルジェ&モディリアーニ四重奏団によるフランクのピアノ五重奏曲ほか(LFJ2013公演)


5/4 東京国際フォーラムB7ホール
LFJ2013 公演225

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ラヴェル ラ・ヴァルス
フランク ピアノ五重奏曲
 ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ(ピアノ)
 モディリアーニ弦楽四重奏団

フランスの名手ヌーブルジェの実演を初めて聴いた。ラヴェルのラ・ヴァルス。キメ細やかなタッチから繰り出される響きの絢爛たる色彩感が素晴らしくエレガント。メリハリに富んだ音色の変化を伴うタッチの妙味といい、鮮やかなまでに冴え渡る指さばきといい、なんとも強い訴求力に満ちたラヴェル。昨日のベレゾフスキーを聴いたとき、ラヴェルというよりベレゾフスキーを聴いたと感じたが、ヌーブルジェの方は正真正銘ラヴェルを聴いたという余韻が聴き終えて圧倒的だった。いい演奏だった。

続いてモディリアーニ弦楽四重奏団とのフランクのピアノ五重奏曲。悪くない演奏だが、前日に同じホールで聴いたフォーレのピアノ三重奏曲に比べると、ずいぶん押し付けがましい音楽だなと感じた。無論そういう性格の音楽ではあるが、やはり前日のフォーレの余韻が残っているのか、音楽に素直に浸りきれない自分にもどかしさを覚えた。

村治佳織によるロドリーゴの「ある貴紳のための幻想曲」ほか(LFJ2013公演)


5/4 東京国際フォーラムAホール
LFJ2013 公演214

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ロドリーゴ ある貴紳のための幻想曲
ファリャ 交響的印象「スペインの庭の夜」
 村治佳織 (ギター)
 ルイス・フェルナンド・ペレス (ピアノ)
 ジャン=ジャック・カントロフ (指揮)
 シンフォニア・ヴァルソヴィア
 
ロドリーゴ&ファリャというスペイン・プログラム。正直2曲とも特に思い入れのある作品ではないが、それぞれギタリストとピアニストに人を得て魅力的な演奏を聴けた。村治佳織のギターが奏でるメロディの流れは良い意味で癒し系というのか実に心地よい心持ちに誘わせてくれる。この曲にこれほど魅惑的なメロディが溢れていたのかと今更ながらに思った。スペイン音楽のスペシャリストであるペレスのピアニズムもファリャの音楽の生理にフィットしていて好ましかった。

しかし忘れてはならないのがシンフォニア・ヴァルソヴィア。このオケはLFJ常連中の常連オケであり、個人的にもすっかりお馴染みとなった。2008年のベートーヴェン三重協奏曲(エンゲラー&マフチン&クニャーゼフ)を皮切りに2009年はバッハのピアノ協奏曲(エンゲラー&ベレゾフスキー)、2010年はショパンのピアノ協奏曲第2番(ポゴレリッチ)とモーツァルトのレクイエム(コルボの指揮)、2012年はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番(ベレゾフスキー)で聴いている。

強烈な印象を残すオーケストラではないが、アンサンブルの安定感が抜群で、いつも安心して聴ける。まさにLFJにとって縁の下の力持ち。地味ながら、このオーケストラにLFJは支えられていると言っても過言ではないと思う。

ベレゾフスキーによるラヴェル「夜のガスパール」ほか(LFJ2013公演)


5/3 よみうりホール
LFJ2013 公演175

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ラヴェル 夜のガスパール
デュティユー ピアノ・ソナタより第1楽章
ドビュッシー 前奏曲集第1巻より6曲
アルベニス アストゥリアス
アルベニス ?
 ボリス・ベレゾフスキー (ピアノ)

LFJの常連ベレゾフスキーの実演を聴くのは今回で4度目。昨年のチャイコフスキーも良かったが、個人的なベストは一昨年のリスト超絶技巧練習曲集。対して今回の演目のラヴェルは、ベレゾフスキーのレパートリーからすると異色。これまで多数の録音をリリースしているピアニストだが、フランス系作品のアルバムというのは見たことがない。

そのラヴェル「夜のガスパール」、ベレゾフスキー持ち前の圧倒的なテクニックとパワフルなタッチはここでも健在で、この難曲を正面から堂々とスケール豊かに弾き切った。その響きにはゴツゴツ感が先立ち、ラヴェル特有のアンニュイなフレーズのニュアンスなどは希薄だったりと、いうことはあるにしても、やはりベレゾフスキーの鉄壁のピアニズムを目の当たりにすると否応なしに惹きこまれてしまう。ラヴェルを聴いたというよりはベレゾフスキーを聴いたというべきだが、やはり圧巻だった。

続くデュティユーではラヴェルに輪をかけて豪快なピアニズムを披歴。続いてドビュッシーの前奏曲集第1巻からデルフィの舞姫、野を渡る風、雪の上の足跡、とだえたセレナード、亜麻色の髪の乙女、ミンストレルが続けて演奏されたが、やはりドビュッシーを聴いたというよりはベレゾフスキーを聴いたというべき、画然とした演奏だった。

アンコールは2曲で、まずアルベニスのアストゥリアスを演奏し、続いて日本語で「アルベニス、、、ナマエ、ワスレマシタ」と告げた後、なんとも美しいメロディの曲が弾かれた。この曲のタイトルは何だろうか?

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トリオ・ヴァンダラーによるフォーレのピアノ三重奏曲ほか(LFJ2013公演)


5/3 東京国際フォーラムB7ホール
LFJ2013 公演125

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フォーレ ピアノ三重奏曲
ケクラン ブルターニュの歌
ケクラン 4つの小品 op.32
ケクラン ラメント
 トリオ・ヴァンダラー
 根本雄伯(ホルン)

トリオ・ヴァンダラーの実演を聴くのは今回が初めて。正直、リチェルカール・コンソートとベレゾフスキーの間のつなぎに取った公演だったのだが、ここでのフォーレが実に素晴らしくて惹き込まれた。

3人のアンサンブルが醸し出す響きの高貴な透明感が絶妙であり、それがフォーレの透明なメランコリーを帯びた楽想に無上にフィット。少しも押し付けがましくなく、それでいて音楽がナチュラルに身に浸透していくような感覚が聴いていて何とも言えない深い感銘を喚起したし、なるほどフォーレのピアノ・トリオはフランス本場のアンサンブルで聴くと、これほどの幸福感に満たされる音楽なのかと、改めて思い知らされた。

続いてケクランの作品が3つ続けて演奏された。最初の「ブルターニュの歌」はチェロとピアノの二重奏で、フォーレを更に親しみ易くしたような耳当たりの良い音楽。続く「4つの小品 op.32」はピアノ、ヴァイオリン、ホルンの三重奏曲という珍しい編成。根本雄伯の吹くホルンが実にメロディアス。ホルンとはこんなに美しくメロディを歌えるものかと、ここでも再認識。最後のラメントでは、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、ホルンの四重奏という新鮮なハーモニーを面白く聴いた。

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