ピエルロ/リチェルカール・コンソートによるバッハの教会カンタータ第4、131、182番


J.S.バッハ 教会カンタータ第131番、第182番、第4番
 ピエルロ/リチェルカール・コンソート
 Mirare 2007年 MIR057
MIR057

先月の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009」特設CD販売エリアで購入したディスクで、フィリップ・ピエルロ/リチェルカール・コンソートによるバッハ教会カンタータ集です。これは本年4月にリリースされたばかりの新譜のようです。

ピエルロ/リチェルカール・コンソートは、今回のLFJではCホールの公演345でミサ曲ト短調とマニフィカトBWV243を聴きましたが、それとは別に教会カンタータの公演も組まれていました。そのプログラムはカンタータ第4番とカンタータ第131番の2曲でした。

そもそも今回のLFJでのバッハ教会カンタータ公演は全部で3種類あり、ひとつは鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンのBWV78とBWV30、ひとつはアンタイ/ル・コンセール・フランセのBWV93とBWV33、そして残るひとつが前述のピエルロ/リチェルカール・コンソートのBWV4とBW131です。

私はこのうちの2つの公演を聴きましたが、ピエルロ/リチェルカール・コンソートの公演だけは聴いていません。できれば聴きたかったのですが、チケットが取れませんでした。

しかし本CDにはちょうど、その聴けなかった公演での2曲が収録されています。これ幸いとばかりに聴いてみました。

独唱陣はキャサリン・フュージュ(S)、カルロス・メーナ(C-T)ハンス=イェルク・マンメル(T)、ステファン・マクラウド(B)という布陣で、このうちフュージュを除く3人は、公演345のミサ曲ト短調とマニフィカトBWV243でのソリストと同じ顔ぶれです。

また、その公演345同様、ここでもOVPP(One Voice Per Part)方式が採られています。このOVPPはアンタイ/ル・コンセール・フランセの実演でも採用されていましたが、鈴木雅明/BCJの方は合唱団によるコーラスとなっていて、古楽アンサンブルとしてもスタンスの分かれるところのようですね。

まず最初のカンタータ第131番「深き淵より、我、主よ、汝に呼ばわる」ですが、これは悔い改めの礼拝のためのカンタータで、バッハの全カンタータの中でも特異な作品です。特定の祝日あるいは行事のためのものではなく、一種の災厄祓いのためのカンタータで、全5曲すべてに聖書の詩編130編の歌詞が引用され、全般にしごく重い曲調です。ただ、儀式的性格もそれなりに強くて、重い雰囲気の割に深みはいまひとつ弱い、そんな気もします。

ここでのピエルロ/リチェルカール・コンソートの演奏は、実演時を彷彿とさせる、精緻を極めたような繊細にして透明感あふれるハーモニーの美しさが素晴らしくて傾聴させられます。

さらに実演時に違和感を覚えたOVPP方式においても、カンタータだとむしろハマっているように聴こえるから不思議なところで、確かにボリューム的な押しの強さが削がれる反面として、ソノリティの透明感が絶大です。とくに(2:52)からの「主よ、私の声を聴いて下さい」と呼び掛けるくだりなど、アーノンクール盤(こちらは合唱団方式です)と聴き比べてみると、同じ曲とは思えないほどです。

確かに透明感もすごいですが、それ以上に、OVPPだといかにもひとりひとりが神に語りかけている、という雰囲気がこよなく強調される格好となり、合唱団方式よりも強く、切実に訴えかけてくる感じがします。

またテンポ感にしても、おおむね速めで、時間的にもアーノンクール盤より全体に短縮的です。このテンポ感と歌唱方式との違いにより、アーノンクール盤だとかなり重い雰囲気という感じですが、こちらのピエルロの方はそういうい雰囲気よりも、むしろ澄み切った音楽の美しさの方に自然に意識が向けられる感じがします。

次のカンタータ第182番「天の王よ、汝を迎えまつらん」は、枝の日曜日のためのカンタータで、これはバッハがワイマールの宮廷楽長に就任して初めて作曲した記念碑的なカンタータとして有名なものです。

カンタータの主題はイエス・キリストのエルサレム入りで、前半あたりはそれを祝福するような喜悦的な雰囲気ですが、エルサレム入りから程無く十字架にかけられることを暗示し、後半はかなり重苦しい雰囲気が支配的です。

この曲は中盤でアリアが3曲連続しますが、その2曲めのアルトのアリアがこのカンタータの中枢を為していて、そこでのカウンターテナーのカルロス・メーナの歌唱が見事です。ここはアーノンクール盤のカウンターテナー、ポール・エスウッドもなかなかに美しい歌唱を披歴していますが、こちらのメーナの方が透明感があり、聴いていて儚くデリケートなその音彩感に何ともいえない趣きがあります。

最後のカンタータ第4番「キリストは死の縄目につながれたり」については、今日はちょっと時間切れで、また後日あらためて書きます。

ベレゾフスキーによるリストの超絶技巧練習曲


リスト 超絶技巧練習曲
 ベレゾフスキー(pf)
 テルデック 1995・96年 WPCS12113
WPCS12113

先月の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009」特設CD販売エリアで購入したディスクです。

公演215の終了後に購入したものですが、そこではベレゾフスキーのサイン会が予定されていて、私もサインをもらっておこうと列に並んでいたところ、サイン会はキャンセルするとの告知が、、。なんでも「体力の限界」とのことでした。

というわけでサインはもらい損ねましたが、このリスト、かなりの名演だと思います。

ボリス・ベレゾフスキー、1990年のチャイコフスキーコンクールにおいて若干19歳で優勝を果たした、筋金入りのヴィルトゥオーゾ・ピアニスト。

LFJ2009ではバッハのコンチェルトを聴きましたが、そこではバッハというよりショパンというようなダイナミクスの幅広さが印象的で、ロマン派的な表情に富み、そのあたりの不意打ち感に独特のものがありました。

対してこのリストですが、やはりベレゾフスキーの本領はこのあたりの音楽にあることが明瞭に伺われるものです。

この最難曲に対する揺るぎないテクニックの安定感においても凄いものですが、むしろ聴いていて驚かされるのが、右手と左手のバランスの取り方です。

例えば、6曲めの「幻影」。冒頭のまどろむような音彩が、中盤で力強く高揚していく、その頂点たる(2:39)あたりの左手の充実感たるや、右手の華やかなパッセージが霞むくらいの押しの強さがあり、その強烈にして重厚な最強奏には聴いていて驚愕させられるほどです。

総じてこのベレゾフスキーのリストにおいては、確かにテクニックもすごくて盤石ですが、むしろその盤石のテクニックを土台に、この曲の表面的な華やかさに過分に捉われることなく、自己の目線で作品を描き切っているようなスタンスに聴いていて強く惹かれました。

来年のLFJは、テーマがショパン。おそらく、ベレゾフスキーが活躍し得る公演が少なからず組まれるように思います。チケットさえ取れれば、聴いてみたいですね。

アンタイ/ル・コンセール・フランセによるバッハの管弦楽組曲集


J.S. バッハ 管弦楽組曲第1番・第4番、ヴァイオリンとクラヴィーアためのソナタ第4番
 アンタイ/ル・コンセール・フランセ
 Mirare 2006年 MIR017
MIR017

先月の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009」特設CD販売エリアにて購入したディスクで、アンタイ/ル・コンセール・フランセによるバッハ・アルバムです。

収録曲は管弦楽組曲第1番と第4番、BWV1017のソナタ、それにカンタータBWV21のシンフォニア。BWV1017のソナタはアンタイのチェンバロ、アマンディーヌ・ベイエのバロック・ヴァイオリンで録音されています。

ピエール・アンタイとル・コンセール・フランセは、今回のLFJ2009において都合3公演聴く機会がありましたが、その中でもCホールの公演244で聴いたバッハ教会カンタータ公演は、このアンサンブルならではの、フランス・バロックの極上の味わいというものを肌で感じた、ちょっと忘れ得ぬ公演でした。

しかしながらB7ホールで聴いた公演327(管弦楽組曲第1番、第2番)の方は、ホールに少なからぬ問題があり、演奏自体の素晴らしさに反して、音響的には必ずしも満足するものではありませんでした。

対して本ディスクを聴いてみると、特に公演時の演目であった組曲第1番など、音響的にやはり段違い、というほかなく、公演244において聴かれた、あの各楽器の放つ音色の得も言われぬ艶やかさ、この世のものとも思えないほどのフレージングのエレガンシー、それらのハーモニーの形成する極限的色彩美、それらが上質の音質から聴いていて蘇ってくるような感じがします。組曲第1番メヌエットの(3:32)あたりの木管の艶めかしいフレージングなど、まさにあの時の、という感じです。

併録されているBWV1017のソナタの方も絶品で、特にベイエのバロック・ヴァイオリンの響きが、弦楽器というより管楽器のような精妙を極めた音色を放っていて驚かされます。およそ弦楽器に、こんな響きが可能なのかという点で、聴いていてびっくりするほどです。

以上、このアンタイ/ル・コンセール・フランセのバッハ・アルバムは、そのバッハらしからぬとさえ思えるほどに洗練を極めたフランス・バロック風のアンサンブル展開が織りなす極上の味わいに酔いしれる一枚でしたが、それだけに、これをあのとき実演で耳に出来たらさぞかし、という思いも強まるものでした。

鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンによるバッハの教会カンタータ第78、99、114番


J.S.バッハ 教会カンタータ第78番、第99番、第114番
 鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン
 BIS 2003年 BIS-CD-1361
BIS-CD-1361

先月の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009」特設CD販売エリアにて購入したディスクです。

これは鈴木雅明/BCJのバッハ教会カンタータ全集の第25集にあたり、LFJ2009での演目であった第78番のカンタータが収録されています。

公演終了後には鈴木雅明のサイン会が催されました。それで私も本CDのブックレット裏面にサインを頂きました。
BIS-CD-1361-2

ちなみに鈴木雅明/BCJのバッハ教会カンタータ全集は現在42集まで進行中ですが、LFJ2009でのもうひとつの演目であった第30番カンタータの方は未だ録音されていないようです。

第78番のカンタータですが、こうしてCDであらためて聴くと、実演での感興が蘇ってくるようなところもあり、実演とはいささか趣きが異なるところもあり、というところでしょうか。

4人の独唱陣は全員LFJ2009での実演時とは違っていますし、ロケーションも、神戸松陰女学院大学のチャペルでの録音で、国際フォーラムで聴いた時よりはふっくらとした残響の肌ざわりが心地よく、この音質は教会カンタータの録音としては理想的な感じがします。

カンタータ第99番は三位一体の祝日後第15日曜日のためのカンタータで、冒頭のコラールを始めフラウト・トラヴェルソが大活躍するカンタータです。アーノンクールの録音など、その天国的な色調にうっとりさせられるものですが、この鈴木雅明/BCJの演奏は、その点はかなりストイックな感じがします。

カンタータ第114番は三位一体の祝日後第17日曜日のためのカンタータです。疾風怒涛のような冒頭の合唱曲が強烈ですが、白眉はむしろ第2曲のアリアでしょう。このアリアはレオンハルト盤(レオンハルト・コンソート)の録音が素晴らしく、そこではチェロ(ビスルマ)とフラウト・トラヴェルソ(ブリュッヘン)によって形成される厳しくも美しい諧調が感動的です。ここでの鈴木雅明/BCJの演奏はやはり真摯で、レオンハルト盤とはまた違った、洗練された古楽演奏の様式美というのか、そんな印象を感じさせる名演ですね。

コルボ/ローザンヌ声楽&器楽アンサンブルによるバッハ・ロ短調ミサの96年ライヴ盤


J.S.バッハ ミサ曲ロ短調
 コルボ/ローザンヌ声楽&器楽アンサンブル
 ヴァージン・クラシックス 1996年ライヴ 5623342
5623342

「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009」特設CD販売エリアにて購入したディスクです。

今年の3月にリリースされたコルボ/ローザンヌ声楽&器楽アンサンブルのバッハ・ロ短調ミサ(2008年録音)に関しては先月感想を掲載したところですが、コルボは1996年に既にこのロ短調ミサを、同じく手兵ローザンヌのアンサンブルを指揮してライヴ録音していました。こちらは未入手でしたので、この機に購入して聴いてみました。

声楽独唱はサンドリーヌ・ピオー(ソプラノ)、ベルナルダ・フィンク(メゾ・ソプラノ)、マルクス・シェーファー(テノール)、マルコス・フィンク(バス)の4人で、08年盤と同じように声楽独唱4人の布陣で演奏されています。

聴いてみると、演奏の特徴や演奏から受ける印象などにおいて、新録音に近しい雰囲気を湛えた演奏内容で、あたかも春の陽光の中に身を沈めているような、アンサンブルのまろやかな味わいに、独特かつ得難い魅力が感じられます。

新録音との比較という点では、演奏タイムが新盤の106分に対しこちらは101分と若干短く、ライヴ録りとスタジオ録りの違いもあって、新盤の方が落ち着いた佇まいから緻密に音楽を練り上げているという印象が強いですが、こちらの旧盤は実演特有の臨場感があり、音楽の生々しい肌ざわりという点に特徴を感じさせます。

演奏としての感銘の度合いという点では、演奏が全体にこなれていて、音楽が自然に語りかけるような新盤の方に軍配をあげたい気がしますが、こちらの旧盤も名演で、新盤とはまた一味違う美点を有するコルボならではのロ短調ミサだと思います。

LFJ2009はこれでひと区切り


前回の更新をもってLFJ2009の公演感想をひと通り書き終えましたので、次回更新からは以前のようなCD感想の形に戻したいと思います。

実際、今月2日のカルミナSQのバルトークの新譜以来、丸2週間、CDの感想を書いてないんですね、、、LFJ2009をちょっと引っ張り過ぎてしまいましたか。

そのLFJ2009もこれでひと区切り、と言いたいところですが、実はまだ終わりではなくて、LFJ特設CD売り場で購入したCDがいくつかあり(以下の写真)、その感想も掲載する予定です。
LFJ2009-CD

ですが、これ以上LFJ2009について引っ張ると、他のことができなくなって良くないと思いますので、上記のCDの感想については、おいおい出していく形にします。

とりあえず次回更新からは、新譜の感想をメインとしつつ、「シャンドス30」全盤の感想掲載といった、一時保留となっている件も再開したいと思います。

あと、今年に入って中古盤の感想記を一度も出していませんので、来月あたりちょっとまとめて出してみたいと思います。これまで新譜盤優先で掲載してはいますが、最近購入した中古盤の中にも新譜盤を凌ぐ感銘を受けるディスクが多々あり、また興味深いレア盤も手に入ったりするなど、色々と書きたいことがありますので。

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