ヴァント/バイエルン放送響によるブルックナー交響曲第8番


ブルックナー 交響曲第8番
 ヴァント/バイエルン放送交響楽団
 The Bells of Saint Florian 録音年不詳 AB-6-7

このCDも最近、中古店で入手したものです。おそらくプライベート盤と思われますが、音質は正規盤並みにいいですし、演奏も非常にいいですね。

ギュンター・ヴァント指揮のブル8の録音は、2008年現在で、正規盤だけでもケルン・ギュルツェニヒ管、ケルン放送響、北ドイツ放送響(2種)、ベルリン・フィル、ミュンヘン・フィルとの演奏が残されていますが、このバイエルン放送響との録音は、それらの一連の演奏と比べるとやや毛色が違う感じがします。

全体的にオーケストラの気迫のこもったソノリティの感触により打ち出される、熱演的手応えに満ちた演奏で、ヴァントの晩年から最晩年の時期のブルックナーのような、霊妙にして深い響きの立ち込めるような雰囲気とはかなり違いますが、名器バイエルン放送響のポテンシャルを十全に活かしたような、そのアンサンブル展開の充実感に思わず聞き惚れてしまう演奏です。

第1楽章から音楽の進行に伴い、緩急のメリハリや濃淡の対照の強さが比較的くっきりと打ち出された熱演という印象が強く、ヴァントの他の同曲のディスクにはない、一発勝負的なスリル感が充溢する内容というべきでしょうか。ここではトランペットの絶好調ぶりが印象的で、(14:37)あたりなど、実にいいですね。

第2楽章はヴァントの指揮にしてはちょっと落ち着かない感じもあるものの、内燃的な迫力感が素晴らしい。第3楽章は、最もヴァントの演奏らしさが伺われる名演。例えば(11:31)の強奏展開など、練れ切ったソノリティの充実感が凄いし、(18:10)からの強奏展開は、先ほどとは対照的なまでに絶叫を抑えたソフトな佇まい。このあたりの音響構築の緻密ぶりと多彩ぶりには目を見張らされます。

終楽章はかなり力のこもった熱演。弦パートの充実感が素晴らしい。(6:45)あたりなど、震撼的で、全体にバイエルン放送響の底力がヴァントの並外れた統制力と結託し、アンサンブル展開は充実を極め、得難いまでの感興がコーダまで一貫します。

バーンスタイン/クリーブランド管によるマーラー交響曲第2番「復活」


マーラー 交響曲第2番「復活」
 バーンスタイン/クリーブランド管弦楽団
  ハイウッド(sop)、ルートヴィヒ(ms)
 ファースト・クラシックス 録音年不明 FC-101-2

もちろん海賊盤だが、バーンスタインとクリーブランド管という組み合わせは珍しいし、曲目がバーンスタインの得意としたマーラーという点でも興味をそそられる。録音年は不明だが、1970年代のもののようだ。

バーンスタインによるマーラーの2番といえば、やはり晩年にニューヨーク・フィルと録音したライブ盤(グラモフォン 1987年)の印象が強烈であり、このクリーブランド管との演奏も、そのニューヨーク・フィル盤(F60G 20217/8)の演奏と比べてみることにした。

まず音質だが、やはり海賊盤だけにニューヨーク・フィル盤よりひとまわり落ちる。鮮明感はほぼ同格なのだが、ステレオ感がかなり弱くて音場の広がりに欠けるし、「シャー」というアナログ・ノイズも一貫的に高めだ。前者は強奏時のダイナミクスの迫力を明らかに阻害しているし、後者は弱奏時の繊細な妙感をスポイルしている。

しかし、前述のように響きの鮮明感はほぼ同格だし、それ以上にライブ的な臨場感では、こちらのクリーブランド盤の方が優っていると思う。ニューヨーク・フィル盤はライブ録音と銘打たれているが、必ずしも純然なライブではなく、スタジオ録音なみの編集がなされている。対してこちらは純然なライブであり、音自体のライブ感というか、生々しい臨場感が聴いていてダイレクトに伝わってくる。

肝心の演奏内容としても、ニューヨーク・フィル盤に伍する名演だと思う。もちろん前述の音質的ハンデのためニューヨーク・フィル盤より遜色する場面も多々あり、例えば第1楽章の展開部(14:19)から(15:30)の再現部突入までのくだりなど、ニューヨーク・フィル盤での、まるで世界が終るかというような激烈感から計ると、いまひとつという感じなのも事実。としても、この演奏に聴かれる純然ライブとしての演奏の凄味には掛けがえのないものがある。ここでのバーンスタインのぎらついた表現意欲の発現ぶりはニューヨーク・フィル盤以上とも思えるし、その赤裸々に描かれる感情のうねりが聴いていて極めてリアルに迫ってくるという点では、こちらのクリーブランド盤に軍配を挙げたくなる。楽章がひとつ終るごとに客席から拍手が沸き起こるのも、演奏内容と必ずしも無関係のことではないと思う。

アンタレス四重奏団によるサン=ジョルジュとモーツァルトのカルテット作品集


サン=ジョルジュ 弦楽四重奏曲集
&モーツァルト 弦楽四重奏曲第3番、第4番
 アンタレス四重奏団
 インテグラル・クラシックス 録音年不祥 INT221101

録音年の記載が無いが、リリースされた2008年ごろの録音ではないかと思う。収録曲はモーツァルトの「ミラノ四重奏曲」の2曲と、サン=ジョルジュの作品1に含まれる4曲(作品1の2から5まで)の計6曲。またモーツァルトの第3カルテットの第2楽章に関しては、第1稿と最終稿の2種類が収録されている。

モーツァルトとサン=ジョルジュのカルテット作品を交互に配置するという、斬新なディスク・コンセプトに惹かれて購入してみたのだが、聴いてみると、これが驚くべき美演! 最初のモーツァルト第3カルテット第1楽章冒頭から、アンサンブルの奏でる音色がみずみずしさの限りで、特に第1ヴァイオリンの響きの美彩が非常に立っている。しかも単に響きが美しいというだけに留まらず、その焦点のクッキリとして鮮やかなフレージング・ラインといい、全奏時における厚みの乗ったアンサンブルの立体感といい、いずれも傑出的で、総体的に音楽の色合いが実に濃く、味わい深い。演奏技術的にも完璧だ。

アンタレス四重奏団という名前は初めて聴くし、ライナー・ノートを見てもオール・フランス語なので経歴が良く分からないのだが、とにかく凄いアンサンブルだと思う。第2楽章(最終稿)の濃厚な美しさは、ちょっと忘れがたいほどだ。第4カルテットの方も名演。

サン=ジョルジュはハイドンやモーツァルトと同時代のパリの作曲家で、自分の設立したオーケストラのためにハイドンに交響曲集「パリ・セット」の作曲を依頼したエピソードが有名だ。ここに収録されている4曲はいずれもその初期の作品群で、すべて2楽章制であり、各曲の演奏時間はすべて10分を超えない。モーツァルトと比べると小規模な上に、作品としても深みもさすがに及ばない感じがするが、非常に華やかであり、親しみ易さはバツグンだ。それに、こうしてモーツァルト作品と交互に聴いていくと作品自体が気の利いた抑揚になっていて、相互にひき立て合うという感じがする。その4曲中のベスト演奏はおそらく作品1の4で、モーツァルトをも思わせるパトスの表出感が素晴らしい。

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