SONY「ワーグナー・グレイト・レコーディングズ」CD40の感想

4手のためのピアノ・トランスクリプション集
①ワーグナー/タウジヒ編:
  「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲
②アレヴィ/ワーグナー編: 喜歌劇「ギター弾き」序曲
③エルツ/ワーグナー編: 「ラ・ロマネスカ」による大幻想曲Op.111
④ワーグナー/ビューロー編: 「ファウスト」序曲
⑤ワーグナー/フンパーディンク編:
 「パルジファル」より第1幕への前奏曲
⑥ワーグナー/タウジヒ編: ワルキューレの騎行
⑦ワーグナー/ワーグナー編: 「タンホイザー」序曲
 タール&グロートホイゼン(ピアノ・デュオ)
 録音: 1997年
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ワーグナーの有名曲のピアノ編曲版による録音というのは割りとよくあるが、4手用というのは珍しいし、ワーグナー自身によるピアノ編曲作品の録音というのも珍しい。①と⑥の編曲者であるカール・タウジヒは師のリストの影響からくるのか、ゴツゴツした和音を主体としたタフな耳当たりが支配的で、まさにリスト的なのだが、面白いことにワーグナー編曲の②③⑦はいずれもメロディの流暢な推移と滑らかなフレージング展開を主体とする、明らかにショパン的な音楽の雰囲気を醸し出している。7曲の中では①と⑦が原曲の持ち味をさほどに壊さずに巧くピアノ編曲されている点で作品としても傑出的だと思う。逆に良くないのが⑤で、もともとピアノ編曲には向かない曲なのをアルペジオやトリルをふんだんに取り入れて頑張っているのだが、これが完全に裏目で、原曲の近寄りがたい独特の幻想的な雰囲気を喪失した単なるサロン音楽と化してしまった感がある。

SONY「ワーグナー・グレイト・レコーディングズ」CD39の感想


ワーグナー(マゼール編曲):交響組曲「タンホイザー」
 ロリン・マゼール指揮ピッツバーグ交響楽団
 メンデルスゾーン合唱団
 録音: 1990年
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ワーグナー「タンホイザー」の管弦楽部分が全体で1時間ほどの管弦楽曲に編曲されている。「タンホイザー」自体は3時間を要するオペラなので、圧縮率は3分の1というところか。演奏自体の印象だが、このコンビとしては「ほどほど」というのが率直なところ。マゼール/ピッツバーグが90年代前半に残した録音には結構ムラがあり、シベリウス交響曲全集のような傑出した録音もあれば、サン=サーンスやレスピーギのような冴えに乏しい録音もあるが、このワーグナーは傑出的ではないが悪くもない。弦も管も鳴らすべき音は過不足なく鳴らされているが、マイクが引き気味なこともあり、いまひとつ鮮烈な印象に欠ける。

SONY「ワーグナー・グレイト・レコーディングズ」CD38の感想


ワーグナー:
・歌劇「リエンツィ」序曲
・歌劇「ローエングリン」~第3幕への前奏曲
・序曲「ファウスト」
・楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲
・ジークフリート牧歌
・楽劇「神々の黄昏」より夜明けとジークフリートのラインへの旅
 ロリン・マゼール指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音:1999年
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このワーグナー・アルバムは「ロリン・マゼール グレイト・レコーディングズ」ボックスの方にも含まれており、そちらの感想の方で書いたとおり、おそらくマゼール会心のワーグナーというべきアルバムになっている。ちなみに、このSONYワーグナー・ボックスの中にマゼール指揮のワーグナーのディスクは、ほかにバイエルン放送響を指揮したワルトラウト・マイヤーのアリア集(Disc35)と、ピッツバーグ響を指揮した交響組曲「タンホイザー」(Disc39)が含まれているが、この3枚のなかでオーケストラの表出力を聴き比べると、このベルリン・フィルとのアルバムがやはり一頭地を抜いている印象を受ける。

SONY「ワーグナー・グレイト・レコーディングズ」CD37の感想


ワーグナー: 楽劇「ワルキューレ」第3幕より「ワルキューレの騎行」
ワーグナー: 楽劇「トリスタンとイゾルデ」より第3幕への前奏曲
ワーグナー: 楽劇「ラインの黄金」より「ヴァルハラへの神々の入城」
ワーグナー: 歌劇「タンホイザー」序曲とヴェーヌスベルクの音楽
 レオポルド・ストコフスキー指揮シンフォニー・オブ・ジ・エア
 シャーリー・ヴァーレット(メゾ・ソプラノ)他
ワーグナー: 歌劇「リエンツィ」序曲
ワーグナー: 楽劇「ワルキューレ」第3幕より「魔の炎の音楽」
 レオポルド・ストコフスキー指揮ロイヤル・フィル
 録音: 1960~1961年,1973年
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同じワーグナー・アルバムでもセル/クリーヴランドを本格派の剛速球投手に喩えると、このストコフスキーのワーグナーはさしずめ手練手管を尽くした変化球投手というべきか。この指揮者ならではのコッテリと厚塗りの響きを武器とする絢爛豪華な音響展開を楽しむことのできる一枚だが、少なくともオーケストラの響きの根元的な迫力や凄味という点では、Disc36のセル/クリーヴランドに大きく及ばないというのが率直なところ。かなりオフ気味でボリュームレベルの低い音質も気になるし、ワルキューレの騎行やヴァルハラへの入城などで中途半端に歌手を入れているのも、オケの表出力を削ぐ要因になっていると思う。

SONY「ワーグナー・グレイト・レコーディングズ」CD36の感想


ワーグナー:楽劇「ラインの黄金」より「ワルハラ城への神々の入場」
ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」より「ワルキューレの騎行」
ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」より「魔の炎の音楽」
ワーグナー:楽劇「ジークフリート」より「森のささやき」
ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」より
 「夜明けとジークフリートのラインへの旅」
ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」より
 「ジークフリートの葬送行進曲と終曲」
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より
 第1幕への前奏曲
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」より「前奏曲と愛の死」
 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団
 録音: 1968年
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いまさら言うまでもなく、セル/クリーヴランドの残した代表的名盤のひとつであるが、録音から半世紀も経とうとしている現在においても、このワーグナー・アルバムは色褪せない輝きを放っている。この演奏の特徴としては、しばしばアンサンブルの精密さとか情報量の多さなどが挙げられているが、むしろ純粋にオーケストラの音響的表出力が際立っている点を称賛すべきだと思う。むろん、それにはオンマイクによる鮮明度抜群の音質と、セルの熟達したアンサンブル・ドライブがあればこそだが、いずれにしても正攻法の剛速球的なアプローチで展開されるワーグナー・アルバムとしては最高水準の一枚というべきだろう。

SONY「ワーグナー・グレイト・レコーディングズ」CD35の感想


「ヴァルトラウト・マイヤー ワーグナー・アリア集」
①歌劇「タンホイザー」より「おごそかなこの広間よ」
②楽劇「ワルキューレ」より「一族の男たちが」
③歌劇「さまよえるオランダ人」より「真っ赤な帆に黒いマストの船を」
④楽劇「神々の黄昏」より「私の言うことをきいてください」
⑤歌劇「ローエングリン」より「ひとり寂しく悲しみの日々を」
⑥舞台神聖祝典劇「パルジファル」より
 「ひどい人!もし痛みを感じるならば」
⑦楽劇「トリスタンとイゾルデ」より
 「連中が私を笑いものにして歌ったからには」
⑧楽劇「神々の黄昏」より「ラインの河岸に薪を積み上げよ」
 ワルトラウト・マイヤー(Ms)  
 ロリン・マゼール指揮バイエルン放送交響楽団
 録音: 1996~1997年
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マイヤーは全曲とも持ち前の重厚かつドラマティックなワーグナー・ソプラノとしての実力を十分に示しており聴きごたえ十分だが、表出力という点では多少ムラもあり、やはり①~⑧の中では⑥のクンドリと⑦のイゾルデの卓抜ぶりが際立っている。⑥の中盤や⑦の終盤での鬼気迫る歌いぶりは、まさに自家薬籠中ともいうべき印象がある。反面、マイヤーといえば「タンホイザー」ではヴェーヌス、「ローエングリン」ではオルトルートのイメージが強いから、①のエリーザベトとか⑤のエルザなどは聴いていてどこか違和感があるし、⑧のブリュンヒルデにしても、どちらかというと④のヴァルトラウテの方が本来のマイヤーの本領という気がする。

SONY「ワーグナー・グレイト・レコーディングズ」CD34の感想


ワーグナー:
①歌劇「タンホイザー」序曲
②楽劇「神々の黄昏」より「ブリュンヒルデの自己犠牲」
③「ヴェーゼンドンクの5つの詩」
④楽劇「トリスタンとイゾルデ」より「前奏曲と愛の死」
 アイリーン・ファレル(Sp)
 レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック
 録音: 1967年(①④), 1961年(②③)
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アイリーン・ファレルの歌唱力が素晴らしい。ドラマティック・ソプラノとしての発声強度と艶やかで美しい声自体の魅力が絶妙に共存するタイプの歌手であり、これが②ではワーグナーの楽想特有のうねりに見事に対応しているし、③ではスタティックな奇数曲とドラマティックな偶数曲とで展開される音楽的起伏の魅力をくっきりと浮き上がらせている点に感服する。60年代前半のブリュンヒルデ歌手というと、どうしても完全無欠と言われたビルギッテ・ニルソンの独壇場というイメージがあるが、ファレルはニルソンとは一味違った魅力のあるワーグナーを聴かせている。バーンスタイン/ニューヨーク・フィルも全体的には好調だが、①と④は録音のバランスがいまいちで、弦がオンマイクでくっきりしている反面、このコンビにしては管楽器の鳴りが大人しく聞こえてしまう。

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